ペーパー・カップ・ソサエティ

弘瀬海

プロローグ

♪ピコピコ!シャーン!パァン!

(音量、大。テンポ、速すぎ)


ナレーション(異様に明るい)

「は〜〜い!!

 今日も元気に〜〜!!

 存在、してますかーー!?


\ジャーン!!/


【画面:原色の文字が弾け飛ぶ】


《人!!》

《モノ!!》

《気分!!》

《後悔!!》

《昨日の失敗!!》

《よく分からないやつ!!》


全部がぐるぐる回る


ナレーション(間を与えない)

「この世界ではね!!

 ぜ〜〜んぶまとめて!!」


\ドーン!!/


【画面中央】


《存在(EXISTENCE)》


♪ポン!ポン!ポン!


【画面:ハンコ連打】

【枠からはみ出す/斜め/逆さ】


ナレーション

「存在は!

 な・ん・と!!

 自己申請制〜〜!!」


♪キュルル……(一瞬ノイズ)


【画面が一瞬だけ乱れる】


《意味が多すぎる!》

《一人だけ浮いてる!》

《直しても直らない!》


ナレーション(即・明るく)

「で・も・だ・い・じょ〜〜ぶ!!」


\ジャジャーン!!/


【ロゴ表示】


《存在管理局》


【笑顔の職員たち】

【瞬き、全員同時】


♪前向きすぎるファンファーレ


ナレーション

「存在管理局は!!

 あなたの存在を!!

 正し〜〜く!!

 やさし〜〜く!!

 管理します!!」


【画面下・極小文字・一瞬】


※是正できない場合があります

※責任は負いかねます

※世界の継続を最優先します


ナレーション(気にしない)

「困ったら!!

 迷ったら!!」


♪キラッ!


「まずは管理局へ!!」


♪決めのジングル!!


ナレーション(満面の笑み)

「存在管理局は!!

 あなたの“存在”を!!」


\ジャン!!/


「応援してまーーす!!」


【画面いっぱい】


《存在してて、ありがとう!》


♪ピロピロp



ドナテロは、ソファに腰掛けていた。


部屋は暗い。

テレビの光だけが消えて、

窓の外のネオンが静かに瞬いている。


彼は煙草に火をつけた。

深く吸って、ゆっくり吐く。


煙は、天井まで届かず、

途中で形を崩して消えた。


ドナテロは、

特に意味もなく、ぽつりと言う。


「……アボカド、切らしてた」


煙が、

その言葉を包むように広がって、

やがて消える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る