ハルポン! 褐色ハーフ美少女のオリビアさんはポンコツ過ぎるので俺のサポートが必須です! ……やっぱ帰っていい? だーめ♡

なつの夕凪

ハルポン1、 オリビアさん、カラオケが地獄なんですけど!


 ……おかしい。

 何かが、決定的におかしい。


 休日にクラスの女子と二人きりでカラオケ。

 しかも相手は、学年屈指の美少女オリビア・ハルカ・パーカー。


 普通なら、青春の勝ち組イベントだ。

 なのに、俺の胃はキリキリと悲鳴を上げている。


 なぜかって?


「♪あい・どりーむ・おぶ・ゆー・うぉーきんぐ・いん・ざ・らいと

 あい・りーちど・ふぉー・ゆー・ばっど・ゆー・ふえど・ふろむ・まい・さいと……」


 カラオケルームに響く、たどたどしい英語。

 メロディラインにしがみつくような歌声。

 画面のルビを追うのに必死で、リズムは迷子、音程も遭難中。


「♪そう・あい・たいあーど・とぅ・ほーるど・ゆー、たいあーど・とぅ・めいく・ゆー・すてぃ……いぶん・いふ・いっと・めんと・とぅ・ぶれいく・ゆあ・うぃんぐす・あうぇい!」


 力まなくていいところで力み、外さなくていい音を外す。

 修正しようとして、さらにブレる。


 ……これはもう、歌というより、英語との果てしない消耗戦だ。


「ど、どうかな?  市川君がバラードの方が合いそうって言うから、歌ってみたけど」


 ヘーゼル色の瞳が、期待と不安でゆらゆら揺れている。


「正直に言っていい?」

「うん、率直な意見をお願い」


「すっげー下手。わりと伝説級で」

「……やっぱりそっかぁ」


「うん」


 頭を抱える彼女を見ながら、俺は頷いた。

 いや、頷くしかなかった。フォローの余地がなかった。


「で、でも少しくらい良いところもあったでしょ?」

「そうだね……最後まで歌い切ったところとか」


「えっ?  そこ?」

「だって、音外れるし、リズムガタガタだし、声裏返ったし……それから」


「もういい、それ以上言わないで!  でも、どうしよう……」


「とりあえず洋楽は諦めよう。せめて流行りのJ-POPだけでも抑えておけば」


「ダメだよ、梨花りかたちにいつも余裕で歌ってるって言っちゃったし」

「なんでそんなフラグ立てたの……」


「し、仕方ないじゃん。皆が歓迎会はカラオケにしようって盛り上がってて、本場の洋楽聞きたい! って言われて……つい、まかせといてって」


 つまり、見栄を張った結果がこれだ。

 陽キャの世界も、なかなかにサバイバルらしい。


「皆、私の見た目だけで勝手に英語ペラペラとかヒップホップ得意とか思い込むんだよ」


「……まぁ、なんか得意そうに見えるし」


「日本人だって全員が柔道できるわけじゃないし、忍術使えないでしょ?  アメリカ人だって、英語苦手な人も、ヒップホップ歌えない人もいるの」


 ……俺の知る限り、忍術を使える日本人は一人もいない。


「どうしよう……入学早々、もう詰んだ……はははっ……はぁ」


 目の前の褐色の少女は、特大のため息を吐いてうなだれた。

 どうやら陽キャには、陰キャとは別の苦労があるらしい。


「……なんか喉乾いた」

「飲み物取ってくるよ。何がいい?」


「じゃあ、伊右衛門茶で」

「渋いな」


「だって落ち着くでしょ。あと、枝豆特盛で」

「居酒屋か!  てか特盛って何!?  ないから!」


「えっ、そうなの?  ……なんて、それくらい知ってますぅ」


 ちろっと舌を出して、あかんべー。

 ……やばい、かわいい。

 

 でも、伊右衛門茶に枝豆って、どこの国の組み合わせだよ。


 俺はリモコンで枝豆(普通盛りしかない)を注文し、ドリンクバーへ向かった。


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