あの子の生首が消えた

緋色 刹那

\(^o^)/

 あの子の生首が消えた。


 夕日差し込む教室で、あの子は首のない体で倒れていました。


 首から血を流し、倒れていました。誰かに生首を切られたのは歴然で、教室は血で真っ赤に染まっていました。


 私は彼女の亡き骸を抱え上げ、何度も名前を呼びました何度も何度も呼びました。


 彼女は私の恋人でした。先月、彼女から告白され、承諾したばかりでした。


 聞こえていないのは分かっています。見えていないのも分かっています。彼女には生首がないのですから。


 人間は……体だけでも生きられるものなのでしょうか? 止血さえすれば、生きることはできるのではないかと、おぞましくも希望を持ってしまいました。


 私は隠し持っていたライタァで首の傷口を焼きました。血肉が焦げた、嫌なにおいが立ち込めます。


 血は止まりましたが、彼女は動きません。だらりと、体を床へ投げ出し、横たわっております。


 血の海にワイヤァが落ちていました。これが、彼女の生首を奪ったのでしょう。


 彼女の顔が好きでした。

 さらさらと風に揺れる、毛質の細い髪が好きでした。

 吸いつくような色白の肌が好きでした。

 わずかに茶色がかった瞳が好きでした。

 時折、髪の毛の隙間から見える耳が好きでした。

 ついつまみたくなる、小さな鼻が好きでした。

 形の良い、チューリップ色の唇が好きでした。

 透き通った声が好きでした。


 好きでした。好きでした。好きでした。


 つい先ほどまで、この手の届く距離にあったのに。もう、彼女は遠くへ行ってしまった。おぞましい犯罪者の手に落ちてしまった。彼女の顔を見て、触れて、嗅ぐことは、もう叶いません。


 ……いいえ、彼女と共にあることはできます。このワイヤァを使えば。


 私はノォトの切れ端に遺書を残すと、自らの手で、自らの首にワイヤァを巻きつけ、思い切り引っ張りました。


 ブツッ、という音と共に、私の視界と意識はこの世から切断されました。


 遺書にはこう書きました。


「私の首を、彼女に体につけてください。私達が、永遠に一緒にいるために」


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あの子の生首が消えた 緋色 刹那 @kodiacbear

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