前世でハマった育成系エロゲのモブキャラに転生した ~主人公ハーレムを眺めたいので、自分を育てつつ主人公をサポートします~
秋之瀬まこと
第1話 転生したことに気がついた
(あ、ここ……『フォーシーズンズ』の世界だ)
1LDKのアパートで、入学先の高校『
それが今世での名前だ。ちなみに前世も同じ名前だった。
この世界での十六年の記憶もあるし、前世の二十七年間の記憶もある。
(そっか。あの時、俺は足を踏み外して……)
前世ではゲームが大好きな社会人五年目の社畜システムエンジニアだった。
営業部の無茶な受注のせいで五徹する羽目になり、どうにか無茶な納期を乗り越えてアパートまで帰った。
だが過度の寝不足からふらつき、階段を踏み外して階段下まで落下。
頭を強く打って、そのまま死んだようだ。
(それにしても転生先が『フォーシーズンズ』の世界だなんてな……)
『フォーシーズンズ』は育成系エロゲで、陽介は前世の大学生時代にやり込んでいた。
プレイヤーが主人公の行動を選択し、主人公の各種ステータスを上げていく。
そのステータスに応じてヒロインたちの反応が変わっていき、後々はルート解放、好感度によってストーリーが分岐していく。
個別ヒロインルートはもちろん、ハーレムルートも完備。
そんなシンプルなシステムかつ、ある程度は計画的に育成していかないといけない丁度いいバランスの難易度設定に、当時の陽介はドハマリしていた。
途中からはどれだけステータスをカンストに近づけられるのか、という挑戦をしたりもしていたのはいい思い出だ。
(う~ん……とりあえず、状況の整理をしよう)
今世の家族は、世界的フォトグラファーの父と、そのマネージャーの母と陽介の三人家族。
陽介の高校進学を機に、父は本格的に海外を回る仕事を受けたのだ。
(中学生の
二人を空港で見送ったあと、昨日から高校入学のために叔父が所有する1LDKのアパートで一人暮らしを始めた。
そして――
(前世の記憶を取り戻した……いや、今世と前世の記憶が入り混じった感じなのか?)
特に違和感はない。
むしろ、前世の記憶を手に入れて頭がクリアになったようにも感じていた。
(う~ん……せっかくだし、街の散策でもしてみるか)
これから少なくとも高校三年間はこのアパートに住んで、この街で暮らすのだ。
近所のスーパーやコンビニなどの利用頻度が高そうな店の場所を把握しておこう。
サッと身支度を整えて、陽介はアパートを出た。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(……髪の毛の色、すげぇな。さすがエロゲ世界だ)
人通りの多い大通りを歩いた陽介が最初に思い浮かんだ感想だった。
もちろん黒髪や茶髪の人たちもいる。
ただ、それだけじゃなく金、銀、赤、青、緑、紫、ピンク……色とりどりだ。
瞳の色も同様で、多種多様。
この光景だけで、ここが前世の世界とは違うことがわかる。
街行く人々の多彩な髪色に驚きつつ歩いていると、シックなレンガ造りの大きな建物が目についた。
その建物の前を通ってみると市営の図書館のようだ。
(おお~、立派だな……せっかくだし入ってみるか)
前世も今世も陽介は読書が趣味だったので図書館に興味が惹かれたのだ。
比較的新しく立派な館内を見て回っていると、小説が収められている一角を見つけた。
その書架で銀髪ロングの小柄な女性が背伸びをして上の方に収められた本を取ろうとしている。
陽介が女性の邪魔にならないように後ろを通り過ぎようとした時――
「きゃっ……!?」
小さな悲鳴を漏らして、女性が後ろの転びそうになる。
「危ないっ!」
陽介は咄嗟にその女性の肩を両手で支えて、転倒を防いだ。
女性の体勢が整ったのを確認して、そっと華奢な肩から手を離し、三歩ほど距離を取る。
「大丈夫ですか?」
「は、はい……助けていただき、ありがとうございます」
陽介は、思わず息を飲む。
正面から見たその女性は、目が覚めるような美少女だった。
見るからにサラサラとしている長い銀髪。クリクリとした大きな目に、深いアメジスト色の瞳。
スッーと通った鼻筋に、桜色の薄い唇。
顔の全てのパーツが神に愛されているかの如く、完璧なバランスで配置されている。
その美貌はやや幼さが残っていて、陽介と同じくらいの年齢のように感じられた。
そんな絶世の美少女との突然の
陽介は胸の高鳴りを感じつつ、できる限り紳士的な対応を心がける。
「どの本を取ろうとしていたんです?」
書架を見ながら、美少女に訊ねる。
「えっと、あれです……水色の背表紙の」
「これですかね? よっ、と……はい、どうぞ」
「あ、ありがとうござます……」
少女が指さした本を取って、少女に差し出す。
おずおずと手を伸ばし、銀髪の少女は陽介から本を受け取った。
「あ、うん。それじゃあ……今度からは職員さんにお願いした方が安全ですよ」
そう言い残して、陽介はその場をサッと離れる。
(やべぇ……さすがはエロゲ世界! メインヒロイン級か、それ以上にビジュアルつよつよだったよ、あの子っ……!)
図書館を出てからは予定通り、スーパーやコンビニ、ドラッグストア、郵便局と銀行の場所を確認する。
スーパーで昼食と夕食の惣菜弁当を買って、陽介はアパートに戻ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
前世の記憶が蘇った翌日。
アパートのオーナーで、喫茶店のマスターもしている叔父の星崎謙吾に会いに行く。
高校生活に慣れたら、喫茶店でバイトをさせてもらう約束になっているのだ。
菓子折りを持って喫茶店に行き、揃っていた叔父一家――叔父の妻と、叔父の娘――にも挨拶をしてメッセージアプリのIDを交換する。
そのまま喫茶店で昼食をご馳走になった。
(いやぁ……叔父さんとこの喫茶店、軽食がマジで美味かった。バイト始めればあのクオリティの賄いが食べれるとか嬉しすぎるぞ)
叔父たちに会った後、陽介は再び図書館に寄る。
(この間は美少女とエンカウントしちゃったから、立ち去ったついでについ図書館からも出ちゃったんだよな……)
なので図書館の館内をあまりちゃんと見れていない。
先日は見られなかった小説のコーナーをプラプラと眺める。
(最近の図書館はラノベとかライト文芸も置いてあるんだな。知ってるタイトルもあるけど、知らないタイトルの本もある。……現代風なだけでやっぱりゲーム内世界なんだろうか? それともゲームに酷似した世界なんだろうか?)
この世界が『フォーシーズンズ』のゲームシステムに準拠しているのだとしたら、読書は学力(文系)のステータスを上げる効果があると陽介は考察する。
(入学式までまだ日数があるし、色々と実験してみるのも手だよな)
空いている席でミステリー小説を開く。
そしてすぐに物語世界に没頭していくのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日から陽介はジョギングや筋トレを始めた。
それ以外にもゲームではなかった家事系の行動も積極的にやってみる。
(家事は『魅力』か『精神力』辺りがあがりそうかな? 結構、体力も使うし……何かのステータスが上がるののおまけで『体力』のステータスが微増ってパターンもありそうだな)
ゲームとは違いステータス画面がない。
なのでステータスを正確に数値化するのは無理だ。
(とりあえずはジョギングのタイムと筋トレの回数、疲労感をメモしとこう)
学園が始まれば体育の授業や小テスト、試験等でさらに検証ができるはずだ。
そんなことを考えながら、陽介は入学式までの日々を過ごしていくのだった。
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