豪遊主夫だった俺、勇者に転生したら元妻が村を支配していた

rhythm

第1話 選ばれなかった死

 離婚してからの日々は、驚くほど何も起きなかった。

 仕事は続け、飯を食い、眠る。ただそれだけだ。

 誰かと揉めることも、何かを決めることもなく、日付だけが進んでいった。


 変わらなかったのではない。

 変えなかったのだと、今なら分かる。


 その日も同じ朝だった。

 満員電車を避けるため、少し早めに家を出る。

 駅のホームに立った瞬間、胸の奥に鈍い違和感が走った。


 痛みというほどではない。

 息が詰まるほどでもない。

 少ししゃがみ込めば、やり過ごせる――そう判断した。


 誰かに声をかけるほどじゃない。

 大げさだと思われるのは面倒だった。


 立ち上がろうとした、その瞬間、

 視界がすっと暗くなった。


 倒れたとき、周囲がざわついた気がした。

 誰かが叫んだような、そんな気もする。

 けれど、それが自分のためだったのかどうかは分からない。


 意識が遠のく中で、ひとつだけ思った。

 ――また、何も選ばなかったな。


 助けを呼ぶことも、

 何かを決断することもないまま、

 俺の人生は、静かに終わった。

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