勇者として召喚された俺だけど、三年前から行方不明だった親友が魔王になっていたから和解の道を選ぼうと思うんだ。
葉月 陸公
第1話
俺には、三年前に行方不明となってしまった親友がいた。彼の名は雄大。小学校で孤立していた俺と唯一遊んでくれた男。少しやんちゃなところもあったけれど、誰よりも優しくて良い男だった。
そんな彼が、何故、突如、姿を消したのか。それを知るのは、今日……あれから三年後の、俺の誕生日となる。
***
「う……うぅ……んぅ…………、ん?」
ふと俺が目を覚ますと、見知らぬ天井がそこにあった。おかしい。俺は、自室で寝ていたはず。だが、ここはどこだ。病院……、ではなさそうだが……。
「お目覚めですか? 勇者様」
面の良い男に声をかけられ、ゆっくりと重い体を起こす。
「……あなたは?」
「私の名はラザール。大賢者・ルード様の助手でございます」
寝ぼけながら問えば、ラザールと名乗った男は丁寧に答える。
「まだ困惑されていることでしょう。……簡潔に言いますと、あなた様を勇者としてこちらの世界に召喚させていただきました。ルード様の命と、引き換えに……」
そう話す彼の顔は、酷く青くて。その顔を見てしまえば、心の奥底に芽生えていた文句の一つさえ出すことはできなかった。
「俺は……、どうすれば良いんですか……?」
なんとか絞り出した声は、言葉を紡ぐ。するとラザールは、青い鞘の刀を俺に渡すと
「我々のため、魔王を倒してください。これはあなた様にしかできないことです。魔力の高い、あなた様にしか」
「お願いします」と、俺に頭を下げた。
「あ、あの……、俺、実は、剣の振り方一つもわからないんです。身体が弱くて……」
俺が言うと、ラザールは顔を上げて言う。
「その点は安心してください。ルード様の命と引き換えに、あなたの身体は丈夫になりましたから。……試しに、剣を大きく振ってみてください」
ぐいぐいと剣を押し付けられ、俺は立ち上がると、試しに、大きく剣を振ってみた。すると、
__ザシュッ
「わ、わぁ……。すごい……」
まるでゲームの世界のように、斬撃は波打ち、周りの木箱を破壊した。
「お見事です、勇者様。……その調子で、どうか魔王をお倒しください」
ラザールは再び頭を深々と下げる。俺は初めて頼られるのが少し嬉しくて、こそばゆくて……
「……わかりました。やってみます」
「YES」を口にするのだった。
……これが、俺の人生を大きく左右することになるとは露知らず。
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