モフモフ・パンチ! 2

渋谷かな

第1話 帰ってきた、モフモフしちゃうぞ!

第1話 帰ってきた、モフモフしちゃうぞ!



 お家の自分の部屋。


「zzz。」


 彼女はベットの温かい布団で寝ている。



 夢の中では・・・・・・。


「モフちゃん!」


 彼女の名前は、希望夢19才。無職の引きこもりである。


「夢ちゃん!」


 モフちゃんは、夢ちゃんの唯一のお友達のぬいぐるみである。


「また会えたね。私は嬉しいよ。」


「僕もだよ。夢ちゃんと一緒にモフモフできるね。」


 この物語は、夢ちゃんの夢の中で、不条理をモフモフして、少しだけ現実が良くなるというカタルシスです。


「・・・・・・でも、何にも考えてないよ?」


 そう、唐突に決まったから。


「もう私がいじめられて、引きこもりの無職になったネタはやっちゃったよ?」


 モフモフ・パンチ! の第1話で、いじめっ子を夢の中でKO。夢ちゃんは少しだけ前向きに生きれるようになった。


「気にしなくていいよ。誰も夢ちゃんに世界征服とか、魔王を倒せとか、求めてないから。」


「なんか、傷つく・・・・・・でも納得できるわ。アハッ!」


 もう現代人は、残酷物語だとか、いきなり最強とかは求めていない。


「私は、私らしくでいいんだよね。」


「そうだね。今の生活を守る、現状維持だけでも難しい時代だもんね。」


「よし! 日常の不条理は、モフモフ・チャンス!」


「その調子だよ! 僕と一緒にモフモフしよう!」


 モフちゃんのおかげで、夢ちゃんの曇り空の世界に光が降り注ぐ。


「モフちゃん! 大好き!」


「僕も大好きだよ! 夢ちゃん!」


「アハハハハッー! アハハハハッー! アハハハハッー!」


 夢の中で彼女は、笑顔でぬいぐるみと戯れていた。アハッ!



ガン! ガン! ガン!


 フライパンを叩く大きな音が夢を壊す。


「夢! 起きなさい! あなたは、いつまで寝てるの!?」


 彼女は、お母さんの雷で目を覚ます。


「ふわ~あ! いいじゃない。寝たって。私、暇なんだから。」


 彼女は、底辺・最弱を手に入れたのである。エッヘン!


「あんた、家にばっかりいると、お友達ができないわよ?」


 娘を心配する母親。


「大丈夫! 私には、お友達がいるよ!」


「どこに?」


「モフちゃん!」


 彼女は子供の頃からぬいぐるみを大切にしている。彼女の唯一のお友達。それがぬいぐるみのモフちゃんだ!


「い、痛い・・・・・・。」


 母は娘の言動にダメージを受ける。


「いいから、起きるのよ! まったく・・・・・・。」


 母は彼女の部屋から去っていく。


「フン! 私だって、好きで引きこもっているんじゃないやい・・・・・・。」


 彼女の苦しい気持ちを誰も分かってくれない。



 外を歩く夢ちゃん。


「人口の9割は無職の引きこもりなのよ! 私の何が悪いというの?」


 夢ちゃんは、ブツブツ文句を言いながら歩いていた。


「キャア!?」


 道を確認していなかった夢ちゃんは、何かにつまづいて転んでしまう。


「なに!? 石!?」


 石につまづいたのだった。  


「ガーン! 道端の石まで、私が悪いというの!? 」


 意思を持たない石ですら、夢ちゃんに不条理として挑んでくる。


「どうして私だけ!? もう、やだ。恥ずかしいよ・・・・・・。」


 自分の運の無さに落ち込む夢ちゃん。



 その日の夜。


「zzz。」


 眠った彼女は夢を見た。



 夢ちゃんの夢。


「夢ちゃん。」


 誰かが彼女を呼んでいる。


「夢ちゃん。」


 彼女の前に、ぬいぐるみのモフちゃんが意思をもって現れる。


「聞いてよ! モフちゃん! 歩いていたら石につまづいて転んで痛かったの!」


「夢ちゃん。僕に乗って、石をぶっ飛ばそう!」


「おお! モフちゃん! ありがとう! モフちゃんは、私の大切なお友達だよ!」


 彼女のぬいぐるみを愛する気持ちが、ぬいぐるみに奇跡を起こしたのである。


ピキーン!


「そうだ! これは夢なんだ! 夢なら何でもありだ! やってやるぞ~! うおおおおおー!」


 そして彼女は夢だと開き直った。


「いくよ! モフちゃん!」


「おいで! 夢ちゃん!」


 彼女は、ぬいぐるみに搭乗した。


「モフちゃんの中って、暖かくて柔らかい! モフモフ! モフモフ!」


 モフモフして楽しんでいる彼女。


「さあ! 夢ちゃん! 石を倒しに行こう!」


「おお!」


 彼女は、モフちゃんを操つる。


「いた! 私をいじめた石ッコロだ!」


 そして、彼女は石のぬいぐるみを発見する。


「オラオラ! 下を見ないで歩いている奴は、つまづかせてやるぞ! スマホを見ながら歩くなんて危険だぞ! ワッハッハー!」


 歩きスマホは危険だよ。アハッ!


「ウッ!? 私はスマホすら見ていなかったのに・・・・・・。」


 石の発言に、ダメージを受ける彼女。


「大丈夫だよ。何も怖くないよ。ここは夢ちゃんの夢の中なんだ。ニコッ!」


 そう、ここは彼女の夢の中。


「忘れてた!? ここは私の夢の世界だった。」


「そうだよ。夢の中では、夢ちゃんの思い通りだよ。」


「私の思い通り・・・・・・。」


ピキーン!


「モフモフしちゃうぞ!」


「モフッ!」


 ここで彼女に覚醒スイッチが入り、臆病な彼女だが、夢の中なら、石も怖くない。

 

「いくよ! モフちゃん!」


「おお! 必殺技をかまそう!」


 彼女はぬいぐるみを加速させ、石のぬいぐるみに突撃する。


「モフモフ・パンチー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 夢の中の石を、夢ちゃん搭載のぬいぐるみが殴る。


「ギャアアアアアアー!」


 夢の中の石は一撃で倒される。


「ああ~、スッキリした! アハッ!」


 彼女はトラウマを振り払った。


「やった! やったよ! モフちゃん! ニコッ!」


 彼女の顔に笑顔が戻った。


「おめでとう! 夢ちゃん!」


 少しだけ前向きに、自分のことが好きになれたのかもしれない。



ガン! ガン! ガン!


「こら! 夢! 早く起きなさいー!!!!!!」


 母親が再び襲来した。


「ふあ~あ。もう、うるさいな。人がいい気持ちで寝てたのに・・・・・・。」


 彼女は夢から覚めた。


「いいから起きなさい! 無職でも、引きこもりでもね!」


 これも言い方は厳しいが、母親の娘を心配する愛情である。母親は部屋から去っていく。


「あれ? 夢? 面白かったな! アハッ!」


 彼女は、今度は気持ちよく、スッキリ目覚めた。


「・・・・・・夢は、夢だよね。はあ~。」


 夢オチに彼女は、現実に戻され、ため息をつく。


「タッ! タッ! タッ! タアッー!」


 着替えて、顔を洗い、歯を磨く夢ちゃん。朝の準備完了。アハッ!



 お家の居間。


「おはよう!」


 彼女は、家族のいる居間にやってきた。


「あれ? 誰もいないや?」


「あんたが寝ている間に、みんな出かけたわよ。」


「アハッ!」 

 

 笑って誤魔化す彼女。


「テレビでも見よう! ポチっとな。」


 リモコンでテレビをつけた彼女。


「次のニュースです。砂利道がアスファルト道路になることが決まりました。」


 テレビに砂利道が映し出される。


「ええっー!?」


(こいつは、私をつまづかせた道だ!?) 


 なんと、彼女がつまづいた砂利道が、アスファルト舗装されるというのだ。


(まさかの正夢!? こんな奇跡がある!? 私、モフモフしちゃった!?)


 こうして夢ちゃんの夢が、汚れた汚い不条理な現実を少し正します。


「うおおおおおー!」


 あり得ない展開に、思わず発狂する彼女。


「ど、どうしたの!? 頭でもおかしくなったの!?」


「え!? え~っと、ご飯おかわり! ニコッ!」


 苦し塗れに、ご飯のおかわりで誤魔化す。


「美味しい! お母さんのご飯は美味しいな!」


「まあ、無職でも、引きこもりでも、食欲があることはいいことよ。」


「アハハハハッー!」


 母親も娘の健康を喜んだ。 


「ニコッ!」


 笑っている彼女の姿を見て、ぬいぐるみが少し笑っているように見えた。


(また、見れるといいな。モフモフ・パンチ!)


 夢は見るものではなく、夢は叶えるものだから。


(でも、いいのかな? 大切な第1話が石なんかで・・・・・・。)


 つづく。

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2026年1月2日 12:00

モフモフ・パンチ! 2 渋谷かな @yahoogle

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