時計のない町
@a_fay
時計のない街
私は時間が止まっている町に迷い込んでしまった。誰も歳を取らない、誰も外を知らない、そんな町だった。
私は町に入った瞬間、何かが違う感じがした。時間が止まっているように......
不安になってスマホを確認してみたら、時間が止まっていた。私は恐怖でつい声を出してしまった。
「えっ......時計が、止まっている?」
少しの間、固まった状態から動かせなかった。
スマホが急におかしくなっただけかもしれないと町中の時計を探してみた。
「そんな......時計が...一つも...ない」
驚きを隠せなかった。
探しきれていない可能性もあるので勇気を振り絞り、時計があるかどうか住民に聞いてみた。
「時計?そんなものはこの町にはないよ」
言葉があまりにも棒読みだった。まるでロボットのような......
そして何よりも不気味なのが、私をずっと見ていて、表情一つ変えなかった。瞬きすらも。
この町に長居するのは危険だと直感して駆け出した。振り返るとさっきの住民が私をじっと見ていた。
この町から出たと思った瞬間、足音が消えた。
気づいたときには、さっきの住民の目の前に戻っていた。
なぜか少し体が重い。
私はこの町から一生出られないという不安に、ただ駆られて泣き出しそうになった。
少し落ち着いた頃、さっきの住民に今起きたことを聞いてみた。
「何のことだ?」と呆れている。
棒読みなのはさっきと変わらないが、少し声にノイズが入っている気がする。
私は別の場所からなら出れるかもと思って駆け出してみた。
案の定、さっきの住民の前に戻ってしまった。
「うっそ」別人のような声が私の口から出た。自分が老化したときの声みたいな......
町の雰囲気も変わっていた。建物に、さっきまでなかったヒビがある。住民のみんなはヒビが入ったのには気付いていないみたい。
私はさっきの声が気になり、今度は私が何歳に見えるか聞いてみた。
「大体七十歳くらいかな」
さっきより声が低くなりノイズも大きくなっている。
私は二十二歳なのに......
私は無意識に住人の瞳に映る私を見ていた。
「本当に、七十歳くらいだ」衝撃的な事実を訴えられ数分間動けずにいた。
どうすればと思いながら周りを見たら、建物にはさらなるヒビが入っていて、住人の顔全員が、私の顔になっていた。――正確には、私だった顔。
私はこの町からもう出ようとしては、だめだとわかっていた。けれど、恐怖に負けて駆け出してしまった。
次に気づいたとき、私は町の入り口に立っていた。
初めてこの町に来たときと、まったく同じ場所だ。
遠くで、若い女性がスマホを見て立ち尽くしている。
私は無表情のまま、彼女に声をかけた。
「時計? そんなものはこの町にはないよ」
私は瞬きをしていなかった。
時計のない町 @a_fay
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