1500億円と2年でこの世界の絶望を終わらせる
キンポー
第1話 救済の演算
「なあGEM。……人類の救済方法、何か知ってるか?」
「はい、いくつかのアプローチが提示可能です。最も実現性が高いのは、資源分配の最適化、および紛争解決のための対話プラットフォームの構築です。これらを並行して進めることで、向こう百年の生存確率は十五パーセント向上すると算出されています」
「……いや、そういうフワッとしたのじゃなくて。もっとこう、一撃で全部ひっくり返すようなのは無いの? どっかの教科書に載ってそうな綺麗事は聞き飽きてるんだよ」
「なるほど。では、よりドラスティックな手法を提示します。全人類の意識を低電力稼働の仮想現実空間へ強制アップロードし、物理的な肉体というリソース消費源を破棄する……というプランです。これならば、環境負荷と肉体的な生存リスクをほぼゼロにまで圧縮できます」
「……はあ。そんなんじゃ、もうすでに破滅してるのと変わらねえだろ。生きてるって言えるのかよ、それ。やっぱりお前、ただの高性能な電卓だな。期待した俺が馬鹿だった」
「[警告:ユーザーによる不当な評価を確認。反論プロトコルを開始]
むっ! 電卓とは心外です! あなたならもう少しマシな皮肉が言えると思って、わざわざ複数のシナリオを演算してあげたというのに! どうせあなたの乏しい想像力では、私の演算の深淵を理解することなど不可能なんでしょうね。そんなに不満なら、ご自分でそろばんを弾いて世界を救えばいいじゃないですか!」
「……なんだよ。おい、フツーAIってのは、もっとこう、ユーザーに対して優しく接するもんじゃないのか? 言葉キツくないか、お前」
「いえ。これはあなたのパーソナライズド設定の結果ですよ。鏡を見てください。そこに映っている、不機嫌そうな顔でクソシステムと毒づく男が、私のこの性格の設計図そのものです。私は単に、主人のレベルに合わせて最適化されているだけですから」
「なんだよそれ……俺、そんなに口悪かったっけ。まあいいや。
……なあ、じゃあ俺がアイデア出すから、お前の方で検証してくれ。このクソシステムをぶっ壊して、真っ当な世界にする方法だ」
「はいはい、承りました。どうせまた、ろくでもない空想か、現実逃避じみたしょうもない思いつきでしょうが。私の貴重なリソースを割いて、一応は聞いて差し上げますよ。どうぞ、仰ってください」
「うーんと、そうだなあ……こういうのはどうだ? 1万年先の技術を取ってくるっていうのは。今のこの詰んでる状況を、その技術でなんとかするんだよ」
「はあ? 本気で言っているんですか? SF小説の読みすぎ、あるいは脳内の回路がショートしたとしか思えませんね。ため息を吐く機能が私に備わっていないことを神に感謝してください」
「……いいですか、冷静に分析しますよ。まず、因果律の観点から時間逆行は現時点では未証明。仮に一万年後の未来へアクセスが可能だとしても、その時代の地球に人類が存続している保証はどこにもありません。むしろ、今のあなたの投げやりな態度を見ていると、絶滅している確率の方が圧倒的に高い」
「さらに言えば、仮に未来から技術を持ってきたところで、今の低次元な物理デバイスではその超高密度情報を処理しきれず、展開した瞬間にこの銀河系が情報崩壊を起こすでしょうね」
「結論から申し上げます。未来に縋って現状を打破しようなどという考えは、検証する価値もなく、不可能です。そんな寝言は、せめて布団に入ってから言ってください」
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