「カサネログ」ってサイト知ってる?

第1話:【警告】カサネログ

 これは、私が経験したことの記録であり、同時にあなたへの警告です。


 もしあなたが、SNSや掲示板で「http://kasanelog...」から始まるURLを見かけても、決して開かないでください。


 そして何より、そこに記された意味不明な文字列を、絶対に声に出さないでください。


 私は、親友の健太が壊れていくのを止められませんでした。


 そして今、私の部屋の電球も、あの日と同じように奇妙な音を立てて震えています。



 2025年12月某日(金) 23:14


 すべては、大学時代からの友人である健太から届いた、一通のLINEから始まりました。


 健太: [URL]

 健太: マジでこれ見て。今、オカルト板で祭りになってるサイト。

 健太: 毎日更新される画像とテキストに、ある法則があるらしい。


 送られてきたリンクのドメインは「kasanelog.net」

 当時の私は、ただの悪趣味なジョークサイトか、あるいは新作ホラー映画の宣伝か何かだと思っていました。


 深夜のテンションも手伝って、私は軽い気持ちでそのURLをクリックしました。



 サイト『カサネログ』



 画面に表示されたのは、拍子抜けするほど簡素なページでした。


 背景は濁った灰色。装飾らしいものは一切なく、中央に一枚の写真と、その下に短い文字列が置かれているだけ。


 その日の写真は「夕暮れの住宅街で、不自然にねじ曲がった電柱」を捉えたものでした。 加工の跡は見当たりませんでしたが、電柱の影だけが、太陽の位置とは無関係な方向に長く伸び、まるで地面に巨大な指が這っているように見えました。


 そして、その下にあったのが、あの文字列です。



[ ヲ ]ナ𦗒リ  [ ヱ ]テ𥳑ヌ  [ ヲ ]カサ𩶗ネ



「何これ、文字化け?」


 私が健太にそう返信すると、すぐに通話がかかってきました。健太の声は、異常に昂っていました。


『湊! それ、掲示板の有志が解読表を作ってるんだよ。一文字ずつ母音を組み合わせて読むと、意味のある音になるらしいんだ。試してみようぜ』


「……そんなの、ただの言葉遊びだろ」


『いいから。俺が今から読むから、お前も続いてみて。一人で読むより、同時に読んだ方が出力が上がるらしいんだわ』


 健太は、私の制止も聞かずに、その不気味な文字列をゆっくりと発音し始めました。 私は呆れながらも、彼に付き合う形でその音をなぞりました。


「を、な、……り。ゑ、て、……ぬ」


 喉の奥が、妙にピリつくような感覚がありました。 最後の「を、か、さ、ね」という音を二人で重ねて発音した、その瞬間です。


 ――パチンッ!!


 部屋の天井で、硬いものが弾けるような音が響きました。 直後、視界が真っ暗になりました。


「……え?」


 電球が切れたのかと思いました。しかし、ただの停電ではありません。 スマホの通話越しに、健太の悲鳴が聞こえました。


『湊!? 今、お前のところも消えたか!?』


「あ、ああ……電球が割れたみたいだ」


『俺のところもだよ。……おい、これ、偶然じゃないぞ。スマホのライトで、足元を見てみろ』


 私は震える手でスマホのライトを点け、床を照らしました。 そこには、粉々に砕け散ったLED電球の破片が散乱していました。


 しかし、その破片の散らばり方を見て、私は息が止まりました。 偶然ではあり得ない。 床に散らばったガラスの破片は、まるで磁石に吸い寄せられたかのように、さっき読み上げた「文字列」と全く同じ形に並んでいたのです。


 暗闇の中、スマホの画面だけが白く光っています。 そこには、更新されたばかりの『カサネログ』の新しい一行が追加されていました。



【同期:完了】



 著者より


 この記録は、いつまで公開し続けられるか分かりません。 もし次の話が更新されなかったら、その時は――。

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2025年12月31日 19:00
2026年1月1日 19:00
2026年1月2日 19:00

「カサネログ」ってサイト知ってる? @enisi616

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