第2話、腐女子 x 近衛騎士
『ガマぐちポシェットくん』の一通りの検証も終わってホッとしたら喉の乾きに気がついた。
ふと思い付き、マリーにも日本の物を知って貰おうと考えてポシェットに手を突っ込む。
ジャジャーン! ペットボトル飲料!
私の好きな、ロイヤルミルクティー! 折角だからお茶受けにお菓子も……。
「あれ?」
ポシェットに手を入れて欲しい物を考えても何も浮かんでこない。
「どうされたのですか?」
ポシェットに何度も手を出し入れしている私に、不思議そうにマリーが聞いてきた。
「うん、マジックバッグから何も出なくなった」
私が、バッグから手を出してヒラヒラさせていると。
マジックバッグに使用回数の制限があるのでは無いかと言う。
「制限?」
詳しい話しを聞くと、魔道具や魔法武器など超大な威力や性能を持った道具には一日の使用回数に制限が付いている物もあるらしい。
私の『ガマぐちポシェットくん』の場合は、この世界とは違う日本からの物が取り出せる特殊な性能を持っているのでそうでは無いかと。
「今日出したのはBLの文庫が三冊とスマホ、今出したペットボトル飲料が最後で、一日五個って事?」
「そうかも知れませんね。もう一度、明日試されたら分かるのでは無いですか?」
そっか……けどそうなるとその日に何を出すか考えて使わないといけないな。
毎日五個までなら、五個出さないと勿体無いし。
何かトラブルとかで咄嗟に出したい物がある時に五回出した後だと困るし、んー悩む!
無意識にペットボトルの蓋を開けて、クビっと飲んでしまう。
あっ! マリーに飲ませるんだった!
マリーにティーカップを二つ出してもらってミルクティーを注ぐ、ちょっと口つけちゃったけどごめんね。
マリーは日本産ペットボトル飲料ロイヤルミルクティーを一口飲むと、目を見開いて固まってしまった。
両手でティーカップを持ち、コクコクと飲んでいる姿は小動物を見ているようでとても可愛いかった。
さて、一息付いた所で本日二度目のお着替え。
これから王家の晩餐に招待されていると言う事で、別のドレスに着替えるのだそうです。
王家と聞いてメチャクチャ緊張したけれど、本当に家族だけのお食事なのでそんなに人は多く無いとの事。
王様に王妃様、第二王子と第一王女と第二王女の五人だけ。因みに第一王子は王立学園貴族院の寄宿舎に入っているので不在……。
ちょっとマリー! その第一王子の話しもっと詳しく!
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まってまって! その第一王子ってさっきの『婚約破棄された転生侯爵令嬢が、腐女子拗らせて王子と王子を全力でカップリングします』で名前が同じと言う王子?!
その物語では、王子が王立学園にいる間に知り合った隣国の王子と親密な仲になり、婚約者だった侯爵令嬢との婚約を破棄、それでも侯爵令嬢は二人の最大理解者となって周りの反対や引き離そうとする勢力に立ち向かい、見事二人を結びつける事に成功するBLをリアル実現させる腐女子の憧れの物語。
――しかも、あの本はガチガチのオメガバース設定だった。
王子の一人は生まれながらのアルファ、もう一人は希少なオメガで、運命の番(フェロモンで結ばれる禁断のペアリング)だと判明した瞬間から、周囲の政治的圧力と本能の衝動に翻弄されながらも、互いの傷を癒し合う切ない絆を描いてた……。
ねえマリー! 王立学園って何処にあるの!? 私も今すぐそこに行って王子と王子の姿を見届けたい!!
全力で抜け出そうとする私を、コルセットをギューッと締めることで食い止めようとするマリーさん。
ごめんなさいマリーさん。もう逃げないからコルセット緩めて……また何か出ちゃう。
多大なる心残りを部屋に残して、晩餐が行われる食堂へと移動。部屋は、先ほどと広さは変わらないものの豪華さが一段とアップしていました。
「お待たせいたしました」
待たせてしまった事をお詫びして、カーテシーで挨拶すると王様がビックリしていた。
この位は小説の知識で知っているのですよホホホ。
さて、晩餐会の内容ですが。
晩餐会に参加されていたのは、先に聞いていた通り王様と王妃様、第二王子と第一王女と第二王女。
それと護衛の近衛騎士の二人、この二人さっきの人だよね。
私がチラッと右の(カイル、仮称)に目線を送ると、サッと左の(アルバラード、仮称)が手で遮ってきた。
えっ?! 今口パクで(見るな)って言った?
(アルバラードから鋭い目線が飛んでくる「俺のにちょっかい出すな」、そしてグッと顔を寄せ「カイルは俺だけを見てろ」と見つめ合う二人。
固まってしまうカイル「お前も少しは抵抗しろ」
「ごめんアルバラード」スッとアルバラードの手がカイルの熱い部分に触れる「……あっ……ちょっと……今はダメだよ」)
――妄想が暴走する。
この世界にもオメガバース的な体質があるとしたら? アルバラードは抑圧されたアルファで、カイルは運命のオメガ……。
公の場では決して表に出せないフェロモンの匂い、ヒートの苦しみ、互いを求め合う本能と騎士としての忠誠の間で揺れる心理……。
ああ、こんな禁断の関係が目の前でリアルに起きてたらどうしよう。
王様の前でしたね……自制します。
ここから先は、私の自我が保たれている間に説明しますね。
出された食事は見た目はとても洗練されていてキレイな盛り付けだったり、ソースでカラフルに演出されていたりで豪華だったのだけど。
正直その味付けはシンプルと言うか、肉や魚は香辛料たっぷりで辛すぎ、野菜スープは野菜の出汁が無くて味気なく、デザートは砂糖入れ過ぎで正直一口で胸焼けするレベル。
これを毎日食べさせられると思うと、ちょっと憂鬱になっちゃった。だって『健全な腐女子活動は健康な体から』をモットーに、推し活してても食事にだけは気を遣ってきたから。
よくよく見ると、王妃様や王女様は痩せすぎな感じでお肌もくすみが見える。これは絶対に栄養とビタミンが不足してるよ。
マジックバッグから取り出すのは、この辺の物も考えてると良いかな。
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さて、ここからがいよいよ本題です!
食事中、気になって気になって正直味なんてどうでも良くなる程に気になっていたのが。
第二王子の顔付きが例の本の中に出でくる(白の王子ことエルヴェシア・アルバス)に雰囲気が似ていると言う事、もしコレが成長したらと思うと十六歳だと言う第一王子のお姿は?!
やっぱり今すぐ第一王子の元に飛んで行きたいと思ったのだけど。
どうやら第一王子は半年後には卒業してこの国へ帰って来ると言う事。
更には学園で懇意になった隣国の王子が友好大使と言う事で王子と一緒にやって来ると言うのです。
ギャーーーー!!
もう私の脳内にはあの本のあんな出来事やこんな出来事がリフレインされて、鼻血出ちゃいました。
――ヒートの夜、運命の番の匂いに抗えず求め合う二人、政略結婚の圧力に晒されながらも「俺はお前だけだ」と囁くシーン……この世界で本当に起きてたら、私はどうなっちゃうんだろう。
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