水の音が止まるまで

@ninicoi

第1話 発見

最初の異変は、数値の揺れだった。


地表から数百メートル下。

通常なら岩盤しか存在しない深度で、

反射と吸収が、どちらも説明できない挙動を示した。


「空洞、ではないですね」


誰かが言った。


掘削は一時中断され、

追加の測定が行われた。

空間は、確かにそこにある。

だが、形が定まらない。


後に《深層庭》と呼ばれることになるその場所は、

初めから“庭”のような整然さを持っていたわけではない。


ただ、自然物にしては、均質すぎた。


「G-CR反応が出ています」


端末を見ていた技術者が言う。

略称の意味を、その場で正確に理解している者はいなかった。

だが、

無視できない種類の反応であることだけは、共有された。


掘削再開の判断は、即座に下された。



地中は、静かだった。


振動も、音も、

掘削が生むはずの抵抗が、

その深度でだけ弱まっていく。


壁面が露出する。


岩ではない。

金属でもない。


緑が、そこにあった。


光ってはいない。

だが、暗くもない。

視線を向けると、

焦点が合わなくなる。


誰かが、無意識に一歩下がった。


「……染色体みたいだな」


訂正はされなかった。


緑の構造は、

触れられていないにもかかわらず、

わずかに形を変えた。


G-CRは、

発見されたのではなく、応じた。

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