第27話 りおの笑顔



りおが、笑っている。


ケラケラと。


楽しそうに。


まるで、子供のように。


でも、その笑顔は。


私には、悪魔にしか見えなかった。


「あはは、のぞみちゃんの顔!」


りおが、私の顔を覗き込む。


「すごく怯えてる」


「り、りおさん…」


「可愛い」


りおが、私の頬をつつく。


「真っ青になってる」


笑い声が、部屋に響く。


私は、ソファに座ったまま、震えていた。


罰ゲーム。


何をされるんだろう。


下剤の時みたいに、また屈辱的なことを。


それとも、もっとひどいことを。


「ねえ、のぞみちゃん」


りおが、笑いを収めて、私の目を見る。


「何が嫌?」


「え…」


「何が、したくない?」


その質問が、怖い。


何を答えても、それをやられる気がする。


「教えて」


りおが、私の手を取る。


柔らかい手。


でも、冷たく感じる。


「言ってくれないと、わからないよ」


「わから…ない…」


「うん。だから、教えて」


りおが、にっこりと笑う。


「何が、一番嫌?」


一番嫌なこと。


考えたくない。


でも、頭の中に浮かんでくる。


さっきの、トイレ。


見られながら、用を足すこと。


あれは、屈辱的だった。


でも、それより嫌なことは。


「ねえ、早く教えて」


りおが、催促する。


「じゃないと、全部やっちゃうよ?」


全部。


全部って、何。


どれだけのことを、考えているんだろう。


「痛いこと…ですか…」


私は、震える声で答えた。


「痛いこと?」


「はい…」


「ああ、なるほど」


りおが、頷く。


「じゃあ、痛いことは、しない」


「本当…ですか…」


「うん、約束する」


りおが、私の頭を撫でる。


「私、約束は守るよ」


少しだけ、ホッとする。


でも、すぐに。


「じゃあ、痛くないこと、するね」


りおの笑顔が、戻る。


痛くないこと。


それは、何。


「他には?他に嫌なことは?」


りおが、楽しそうに聞く。


「教えて、のぞみちゃん」


私は、何を答えればいいんだろう。


何を言っても、それをやられる。


いや、言わなくても、何かをやられる。


どっちにしても、逃げられない。


「辱め…られること…」


「辱められること?」


りおが、首を傾げる。


「例えば?」


「さっきの、トイレみたいな…」


「ああ」


りおが、にっこりと笑う。


「あれ、嫌だった?」


「はい…」


「でも、可愛かったよ」


りおが、私の耳元で囁く。


「すごく、可愛かった」


「やめて…ください…」


「でも、事実だよ」


りおが、私を抱きしめる。


「のぞみちゃん、女の子になって、恥ずかしいこと、いっぱい経験してる」


「もう…嫌です…」


「でも、これが女の子なんだよ」


りおの声が、優しい。


でも、言葉は、残酷だ。


「女の子は、恥ずかしいこと、いっぱいあるの」


「でも…」


「大丈夫。慣れるよ」


りおが、私の背中を撫でる。


「3日間で、たくさん経験して、女の子のこと、わかるようになる」


「わかりたく…ないです…」


「でも、もう女の子なんだから」


りおが、私を離す。


そして、にっこりと笑う。


「さあ、罰ゲーム、始めよう」


「何を…するんですか…」


「それはね」


りおが、私の唇に指を当てる。


「やってみてからのお楽しみ」


そう言って、りおは立ち上がった。


バスルームに向かう。


何かを持ってくる。


私は、ソファで待つしかなかった。


震えながら。


恐怖に怯えながら。


りおが、何を持ってくるのか。


何をされるのか。


考えたくない。


でも、考えてしまう。


りおが、戻ってきた。


手に、何かを持っている。


それを見た瞬間。


私の顔から、血の気が引いた。


りおの笑顔が、さらに深まった。


「さあ、始めよう」


罰ゲームが、今、始まる。

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