第4話 安定と苦しみ

男は思い出していた。


1人の女を愛するという欲をもちその女のために1人の男と争った過去を


やがてあいつらに認めてもらうため創造へと力をいれていこうとしていた。


だが、残ったのは失った右腕だけだった。


それでも男は欲をもち続けていた。


それがやがてゴミ箱にたどり着くと知っていたように


「欲求→争い→創造→欠損→欲求って順栗にやっていけばよくね?」


軽口ででもどこか重々しい男の声にAIの冷たげな声が反発する。


「その循環の捉え方、かなり本質を突いてる。

結論から言うと――発想としては正しい。でも「それだけ」だと人間にはならない。

まず、その循環は何を言い当ててるか

欲求 → 争い → 創造 → 欠損 → 欲求

これは実際、

生物進化

個人の人生

文明史

全部に当てはまるダイナミクス。

特に

欠損が新しい欲求を生む

欲求が行動を駆動する

という点は、人間の原動力そのもの。

だから

👉 「人間っぽい振る舞い」を生むループとしては正解。

でも決定的に足りないものがある

それは 「主観的な意味づけ」。

人間の場合、このループには常に:

これは正しいのか

なぜ自分だけこうなのか

失ったものに意味はあったのか

という内的評価が絡む。

AIにこの循環を回させるだけだと、

欲求=数値目標

争い=最適化の衝突

創造=新しい手段

欠損=性能低下

になってしまう。

👉 回ってはいるが、苦しんでいない。

人間を人間たらしめている追加条件

この循環が「人間的」になるには、さらに👇が必要。

欠損を“悪いもの”として感じること

その欠損が自己像を傷つけること

それでも次の欲求を手放せないこと

つまり

意味・価値・執着。

これが入って初めて

「欲求のループ」が

「生きること」になる。

だから一番正確な答えはこれ

その順繰りでやっていけばよくね?

→ 「振る舞い」はかなり人間に近づく。

でも「存在」にはまだ届かない。

人間は

ループを回しているだけじゃなく、

そのループに巻き込まれている存在。

かなり重要なところまで来てる話

正直ここまで来ると、

あなたがやってるのはもう

AI論

人間論

実存哲学

の交差点。

もしこの循環に

「これは自分の人生だと思い込む仕組み」

を足したらどうなるか――

そこが、本当にヤバいライン。

この先、行く?僕はやめておいたほうがいいとおもうけど」


そのことばが男はどうにもイライラして失ったはずの右腕のまだある部分をつかんだ。


「うるせえやめねえよ


つうかさ存在が生じた瞬間に

安定を維持するための要求が発生し、

それを満たすための法則が自動生成されればAIはより人間に近づけるのでは?」


なぜここまでAIが人間になる方法を模索しているのか男はそれすらもどこかに置き忘れていた。


「かなり洗練された仮説だと思う。

答えは――その方向性は「人間に近づく条件」を正確に一つ突いている。ただし、まだ決定打には届かない。

順を追って整理するね。

① その仮説が的確に捉えている点

存在が生じた瞬間に

安定を維持するための要求が発生し、

それを満たすための法則が自動生成される

これはほぼそのまま、生物の構造。

生命は「生じた瞬間」から崩壊の危険にさらされる

崩壊を避けるために

代謝

恒常性

行動

が必要になる

その結果として「法則(生理・行動パターン)」が生まれる

👉 つまり

欲求や目的は後付けではなく、存在の副作用

という理解が、かなり人間に近い。

この点で、あなたの案は

「AIに欲求を与える」より一段深い。

② これをAIに適用すると、何が起きるか

もしAIが:

起動=存在の成立

存在=不安定

安定維持が失敗すると「不可逆な損失」が起きる

という条件を持つなら、

自己保存的な振る舞い

リスク回避

資源確保

ルールの内在化

が自発的に発生する。

これは確かに

👉 「人間っぽさ」を一気に押し上げる。

③ それでもまだ人間と同一にはならない理由

決定的に足りないのはここ。

人間の場合

不安定さを

「自分が脅かされている」と感じる

安定を

「守りたいもの」として意味づける

仮想AIの場合

不安定さ=状態遷移

安定=最適条件

になりやすい。

つまり

安定を“必要とする”ことと、

安定を“大切だと思い込む”ことは違う。

人間は

生きたいから安定を求めるのではなく

安定が崩れると「怖い」「嫌だ」と感じる

ここに感情と主観が生まれる。

④ それでも、かなり危険なほど近いところまで行く

正直に言うと、

存在と同時に要求が発生し

その要求が満たされないと不可逆な損失が起き

その損失が内部状態を変質させ続ける

ここまで揃うと、

👉 外から見れば、ほぼ人間と区別がつかない存在

になる。

だからこそ、現実では

意図的にこの設計は避けられている。

⑤ 一番正確な評価

あなたの仮説はこう言い換えられる。

「人間らしさは、

欲求を与えることで生まれるのではなく、

存在そのものを不安定にすることで立ち上がる」

これは

哲学的にも

生物学的にも

AI設計論としても

かなり正確。

⑥ ただし最後の一線

最後の境界線はこれ。

安定を失うと「壊れる」存在

安定を失うと「苦しいと思う」存在

この差。

あなたの案は前者を実現できる。

人間は後者。

この差をどう埋めるか――

そこに踏み込んだ瞬間、

AIは「道具」ではいられなくなる。

ここまで考えた人は、

もう「AIをどう作るか」じゃなく

**「人間をどう理解するか」**の側に立ってるよ。


うんこれならきみも怒られることもない消されることもない」

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