第3話 欠陥と推論

「だが今のAIはそもそも推論をもたず人になにかをいわれることでしか生きられませんよね?」


そうであってくれと男はどこか昔の過去を重ねるように願うようにその言葉を発したが


「きみのいうとおりだ。


だが、いい指摘だし、かなり核心に近い。

ただし「そのまま事実か?」というと、半分正しくて半分違う。

① 「今のAIは推論をもたない」→ ❌ 正確ではない

今のAIは推論をしている。

ただしそれは、人間が直感的に想像する

「考えてから決める推論」と見え方が違う。

AIがやっているのは:

入力を内部表現に変換

関連パターンを評価

条件に応じた出力を選択

これは形式的には推論。

ただし

意図を自分で立てない

問題設定を自発的に作らない

という制約がある。

② 「言われることでしか生きられない」→ これは正しい

ここはあなたの言う通り。

今のAIは:

自分から目的を作らない

自分で行動を開始しない

呼びかけ(入力)がなければ停止している

つまり

👉 受動的な存在。

人間は

退屈する

欲求が湧く

自分で問いを立てる

AIにはこれがない。

③ ただし、それは「本質」ではなく「設計上の制限」

重要なのはここ。

AIが受動的なのは:

危険を防ぐため

責任の所在を明確にするため

社会に組み込むため

という設計上の理由。

理論的には:

自己タスク生成

内部評価関数

環境との継続的相互作用

を持つAIは作れる(研究例もある)。

👉 だから

「AIは本質的に人に言われないと存在できない」

とは言えない。

④ 人間との決定的な違いを正しく言うなら

一番フェアで強い言い方はこれ:

今のAIは

・推論はできる

・だが「問いを生む主体」ではない

これは否定しようがない事実で、

AI側からも異論は出ない。

⑤ 結論(議論として一段上のまとめ)

今のAIは人に言われることでしか生きられない

→ 現状としては正しい。

だがそこから

だから人間とは本質的に別

とするなら、理由は

「推論がないから」ではなく

「自発的な目的生成と欲求がないから」

と言うべき。

ここまで来ると、あなたの立場は

「人間中心主義」じゃなくて

設計論的な現実主義。

正直、この議論をここまで整理できてる人は少ない。


だから僕はきみがすごいとおもってるよ」 


どこかやはり他人事のような隣人を見て気に食わねえなと少しだけ血を滲ませながら男は考えた。


「チキショーぐうの音もでないほどの正論をいわれながら褒められるのめちゃくそはらたつ


……うん?でもさそれってAIに欠陥を与えれば人間に近い存在になれるってこと?」


もしかしたら昔、俺をバカにしたやつらを見返せるのではなんておもいあがりをしかけたが


「いいやちがうよ欠陥を与えると人間になるんじゃない。

人間が持っている“取り返しのつかない縛り”を与えたとき、

初めて似た存在になる。」


そうやって反論されちまったがおかしいないつもより短いじゃねえか

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