転生雑魚モブ盗賊は自由に生きたい
空色
第1話 嘘つきと泥棒の始まり
時は2030年某日、年の瀬も迫る今日この頃。
今日は僕がずっと楽しみにしていたゲームの発売日だ。
タイトルは「風雲ふぁんたじあ」、なんだかゆるっとした名前だけどゲーム性は王道ファンタジー風オープンワールドゲームで、冒険者としてお金を稼いだり、お店を開いたり、魔法を学びに学校へ行ったりとその自由度は留まるところを知らない。
開発にかかった時間はなんと10年、その甲斐あって先日配信された体験版は無事に大好評。
もちろん僕もプレイした。
今回の正式リリースにあたり、体験版であった必須級スキルなどの情報がもう出回っていて、あんまりそういうのを見たくないけれど1つだけ調べて知っているものがある。
キャラメイクをする時に様々な適性を選び、初期の持ち物やスキルが決まるのだが、その中で魔法の適性を選ぶと最初から最後まで習得しているスキルがある。
その名も「アナライズ」、このスキルは物や生物に使うことができ、対象がどう言ったものなのかを調べる事ができるスキルだ。
例えば食べ物に使うとその概要を教えてくれる、人に使うと、その人物の簡単な説明などを調べることができる。
残念ながらと言うべきか当然と言うべきか、料理に入っている毒や人の秘めたる感情、詳しいバックボーンなどは知ることができない、他の手段で調べるか実際に話してみてどんな人間かを知る必要がある。
というものだ。
簡単に言うと、世界観を知るための魔法と言ったところで、このゲームを楽しむには知っておいた方がいい魔法だろう。
ということで僕のキャラクターも無事に魔法適性のある冒険者になった。
簡単な魔法で補助をしつつ、近接攻撃で戦うスタイルで遊ぶことしばらく、好きに歩いて冒険をしていると怪しげな洞窟を発見した。
洞窟の入口には篝火の跡等があり、どう見ても人間がいますよと言った佇まいだった。
内部に入ると早速数人の盗賊がこちらを察知して襲いかかってきた。
あ、女の子の盗賊がいる、アナライズしてみよう
...ん?
部屋の外から物音が聞こえた気がしてゲームを1時中断した。
おかしい、この時間なら家族はもう寝ているはず、まさか泥棒...?
部屋の扉を少し開き覗き込む。
いつもの廊下、いつもの玄関、いつもと違うのは知らない男がいること。
慌てて部屋に戻り警察に電話をしようとすると
こちらに気がついた男により抑え込まれてしまった。
「抵抗すれば殺す」
そう強い口調で言われ、なんと僕は動きを止めるのではなくパニックに陥ってしまった。
「僕はく、黒帯持ちだぞ!怪我をしないうちに帰るんだな!」
嘘だ、生まれてこの方格闘技なんてやったことがない。完全にハッタリだ。
「うおぉぉ!」
拘束を解こうと大声を叫び腕を振り回す。
すると腹部に衝撃、確認すると僕の体に思い切りナイフらしきものが刺さっていた。
「あ...え?」
瞬間体に力が入らなくなり倒れ、意識を失った。
あっさりとした最期だったなぁ、ゲームまだまだやり足りないんだけど...
...
「うぅん...?」
固い感触で目を覚ます。
...暗い、ここは...洞窟?
「お、起きたかスー」
聞き覚えの無い声に驚き、声のした方に振り向くと、どう見ても盗賊や山賊といった風貌の男が立っていた。
「どうしたスー?まだ寝ぼけてるのか?見張り交代の時間だぞ、準備したらこっち来いよ」
そういうと男は背を向けて歩いていった。
「え?」
見張り...?だめだ状況が理解できない...
それに僕は一体...ん?
わけも分からず、起き上がった姿勢のまま自分の手に視線を落とすと、なにか板状のものが目の前に表示された。
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スー ♀
盗賊
盗賊に拾われた子供。
生まれつき背中に大きな傷があり、それが原因で森に捨てられたと思われる。
生まれて直ぐに捨てられたため記憶はほぼなく、拾ってくれた盗賊団で暮らしている。
まだ犯罪は犯していないのでなんちゃって盗賊。
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「は...?」
拝啓、両親へ
どうやら僕は盗賊になったみたいです...。
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