夜景
口羽龍
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2020年、世界は新型コロナウイルスで停滞ムードになった。前年の暮れに中国で発生した新型コロナウイルスは、瞬く間に世界に蔓延した。日本にも2020年の初めに蔓延し始め、あっという間に全国規模になった。その影響で、イベントは次々と中止、延期になり、経済が停滞した。蔓延を防止するために家にいる事が多くなった。そして、出かける時はマスクが必須になった。それでも新型コロナウイルスは広がり、有名人も感染して、中には死亡する有名人も出た。その中でも、2020年に行われる予定だった東京オリンピックが延期になったのは衝撃的だった。4年ごとに開催されていた夏のオリンピックが1年延期になった。選手たちはさぞかし残念がっただろう。この日のために頑張ってきたのに、1年延期になってしまった。それに、外にあまり出られない。とてもつらい日々だっただろう。
そんな中で、新型コロナウイルスは次から次へと変異株ができた。その度に、それに対応したワクチンができる。だが、また変異株ができ、またそれに対応したワクチンができる。まるで終わらないいたちごっこのようで、きりがない。その状況を見て、誰もが思った。新型コロナウイルスには勝てないんだろうか?
2021年になって、ワクチン接種が始まった。そして、夏には予定通り東京オリンピックが行われた。だが、無観客開催で、盛り上がりに欠けるものだ。だが、日本代表がたくさんメダルを獲得したのを見て、とても喜んだものだ。そして、徐々に新型コロナウイルスの騒ぎは収まってきた。元の日常が戻ってきた。
康太(こうた)は2020年に新型コロナウイルスで亡くなった。そして、幽霊としてキラキラ輝く東京の夜景を見ていた。何度見ても美しいな。だけど、2020年はそんな夜景がほとんど消えてしまった。早めに帰宅して、できる限り家にいようという心構えから、暗くなったのだ。
「きれいだな」
「そうだね」
隣には、老人の幽霊がいる。老人は、新型コロナウイルスを乗り越えて、生き延びた。だが去年、がんに侵されて亡くなった。
「やっと元の夜景が戻ってきたね」
「うん」
2人はようやく戻ってきたキラキラ輝く東京の夜景を見て、懐かしく思っていた。コロナ前の元の夜景が戻ってきた。そして、日本は、世界は復興していくんだろうか? そう思わせる輝きだ。
「できれば、生きてるうちにこれを見たかったな」
「その気持ち、よくわかるわ」
2人は、生きてその夜景を見たかった。そして、今年を、そしてその後も楽しみたかった。
2020年の始め、日本は騒然となっていた。新型コロナウイルスが日本に上陸したのだ。あれだけ気をつけていたのに、ついに上陸してしまった。これで日本はどうなるんだろう。誰もが危機感を感じていた。
「コロナ?」
「うん。いよいよ日本にも上陸したんだ」
康太の妻子は康太同様ニュースを見ていた。ここ最近、新型コロナウイルス関連のニュースで、明るいニュースなんてあまり聞かない。どうしてこんな世の中になったんだろうか? どんなに問いかけても、答えが見つからない。本当につらいな。どうすれば、新型コロナウイルスは収まるんだろう。これからの日本は、どうなるんだろうか? 不安な未来しか見えないよ。
「日本は、どうなるんだろうか?」
「わからない・・・」
康太は思っていた。もしかしたら、イベントが次々と中止や延期になるのでは? つまらない日々になってしまうのでは? この先、世界はどうなってしまうんだろうか?
「イベントが次々と中止になりそうで、怖いな」
「うん」
ふと、康太は思った。今年は東京オリンピックが行われる。2013年に2020年の夏季オリンピックの開催地が東京に決まった時は、みんなで喜んだものだ。そして、去年の5月から新しい元号『令和』になった時は、みんなで喜んだものだ。誰もが来年の2020年は明るい年になると思っていた。だが、新型コロナウイルスのせいでこんな事になってしまった。
「今年は東京オリンピックなのに。中止になりそうだよ」
「楽しみに待っているのに」
誰もが不安な表情になった。このままでは東京オリンピックが中止か延期になりそうだよ。あんなに楽しみにしていたのに。一緒に開会式に行こうと思っていたのに。どうしてこんな事になったんだろう。あまりにもひどいよ。この先、僕たちはどうすればいいんだろうか? 外出は極力控え、家にいなければならないんだろうか? 旅行に行ってはいけないんだろうか? 不安でしかないよ。
「早く収まってほしいよ」
康太はいらだっていた。どうしてこんな暗い日々になった。こんな暗い未来、早く終われ! そして、予定通り東京オリンピックを開催してくれ! 僕は明るい日々を送りたいんだ!
「昨日も今日も新型コロナウイルスのニュースばっかり。中止や延期ばっかり。つまらん!」
康太はいらだって、泣きそうになった。それを見て、妻は慰めた。子供はじっとその様子を見ている。全く状況が理解できていないようだ。
「きっといい未来が来るはずさ。待とうよ!」
「うん・・・」
だが、康太は泣いてしまった。どうしてこんな日々になってしまったんだろう。どんなに問いかけても、答えが見つからない。新型コロナウイルスのせいで、こんな事になってしまった。人間が悪いんじゃない。全部、新型コロナウイルスの精なんだ。新型コロナウイルスができなければ、今頃、明るい未来だったのに。あまりにもひどいよ。時間を戻して、新型コロナウイルスのない2020年にしてよ。
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