第6話 告白

 邦夫は、三条時宅を後にした。

玄関先で、三条時議員と玲子に見送られた。

玲子は顔を赤くして、邦夫と目を合わせなかった。

 三条時議員の申し出を邦夫は「すみません!俺は靴屋を継ぐんです!ありがたいお話ですが、玲子さんも素敵ですが、俺には勿体無いお話で遠慮させて頂きます」と断った。

 三条時議員は邦夫の事を大層気に入り、「気が変わったら、またいらっしゃい」と声をかけてくれた。


 数週間後


 邦夫が奥の座敷で勉強していると、店から母の声が響く。

 「邦夫!お客様だよ!あんたにだよ!」と聞こえてきた。

邦夫がおもむろに店を覗き込むと、そこに居たのは、三条時玲子であった。

玲子は、邦夫の顔を見ると真剣な面持ちで、「村松君、お話があります!」と頭を下げた。

 邦夫は、「散らかってますが、どうぞお上りになってください」と座敷に招き入れた。


 玲子は、ちゃぶ台に出されたお茶をいただき、他愛もない話をしばらくしていた。

 邦夫は、「三条時さん?ところでお話って?」と聞くと、玲子は柄にもなくモジモジしている

 ようやく、決心したかのように

「村松君!私と‥私と結婚してください!」と告白した。

 邦夫は、突然の事で、「今何とおっしゃいました?」と聞き返した。

玲子は、「2度も、言わせないでください!だから、私と結婚してください!」そう言うと熱いであろうお茶を一気に飲み干した。

 邦夫は、「お父様の水虫の薬の事ですか?」と聞き返した。

が、玲子は首を横に振る。

邦夫は、「理由をおっしゃってください」と問うと玲子は、ボソボソと小声で何か言った。

「え?」と聞き取れない邦夫を見ると玲子は、

「わ・た・し、私!水虫になりました!」と大声で告白した!

「わたし〜わたし〜水虫に!なりました!うわーん」と堰を切ったように大声で泣き始めた!

「きっと、お父様の水虫が!お風呂場で、移ったんです!うわーん!」と一向に泣き止まない。

 「水虫になりました!」と近所中に玲子の声が響きわたった。


 邦夫は、玲子の背中を摩り慰めた。

ようやく、泣き止んだ玲子に話始める。

「玲子さん、俺が薬をだれにもわたさなかったのは、ほら俺、靴屋になるだろ、靴屋で一人前になって、俺のお客様ができて、その中に水虫で、困っている方がいたら、その時に使おうと、とっておいたんだ、だから、誰にも譲らなかった‥

だけど、玲子さんにあげるよ!そんなに、結婚までして、水虫を治したいなら、玲子さんに差し上げます!」と邦夫を玲子の手をとり伝えた。

玲子は、「本当に‥私、水虫になったなんて、みんなにしられたら、もうお嫁に行けないって‥

村松くんに、話してお嫁にもらってもらおうと決心して来たの‥ありがとう」と涙声で話した。

 邦夫は「ちょっと待ってて」と言って、押し入れを開け、大事に水虫の薬を仕舞ってある。

小箱をだした。

 小箱を玲子の前に置き、中に入っているクリームケースを出した。

 邦夫は、「この薬は効くからもう大丈夫!」と

クリームケースを開け、二人が覗き込むと、

クリームケースの中身が〝空〟である!

「え!そんな馬鹿な!」と邦夫は狼狽るうろた

 邦夫は、店に行き!「母ちゃん!俺の薬!知らない?俺の薬!」と母、とめを問い詰めると、

母は、バツの悪そうに、「悪いね、悪気はなかったんだよ!母ちゃん使っちゃったよ!ほら、母ちゃんもすっかり良くなったよ!だってさ、靴屋の女将が水虫なんて恥ずかしいだろ、ごめん!」

と言った。

側にいた玲子は、「私の水虫の薬〜うわーん!」とまた泣き出してしまった。


 後日


 責任を感じた母、とめは、ツテのツテのツテを頼って、水虫の薬をくれたグラン氏を探し出し、

水虫の薬を譲ってもらい、三条時玲子に差し上げた。

玲子は、「お母様!ありがとうございます」と涙を流して礼をいい、その数週間後には、玲子の水虫はすっかり良くなった。

それから、邦夫と玲子が、将来本当に結婚したかは、定かではない。


   完




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水虫 霞 芯 @shinichi-23

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