世界観設定資料
※ 本世界観を用いた短編の一例として、「ANMBIのある放課後」を別ページに置いています。
■時代感
本世界観は、21世紀中頃の日本を基準点とする。
社会インフラ、生活様式、治安感覚、行政のあり方は、21世紀初頭から急激な断絶を起こしていない。技術は段階的に更新され続けているが、それは人々の生活感覚を塗り替えるような革命ではなく、気付けば定着していた変化として受け止められている。
人々は未来という言葉を使うが、未来に熱狂してはいない。新しい仕組みや道具は、便利かどうか、面倒でないか、日常を乱さないかといった実用的な基準で評価される。
全体として、
「大きくは変わっていないが、確実に時間は進んでいる」
という感覚が社会に共有されている。
■日本社会の雰囲気
日本社会の空気感は、極端を避け、安定と継続を重視する成熟社会のそれに近い。
思想や理念よりも、
・生活が成り立っているか
・治安が保たれているか
・日常に過度な負荷がかかっていないか
といった現実的な指標が、社会全体の判断基準として優先される。
変化や新要素に対しても、
・強く歓迎することも
・強く拒絶することも
少なく、受け入れるにしても拒むにしても静かな態度が取られる。
社会には多様な意見や立場が存在するが、それらが全面的な対立構造に発展することは稀であり、
「問題が表面化していないなら、今の運用で構わない」
という空気が、結果として社会の均衡を保っている。
■一般的な国際感覚(世界の中の日本)
日本は、国際社会の動向を無視しているわけではないが、積極的に主導する立場にも立っていない。
世界各地で起きている政治的・技術的・社会的な緊張や混乱についても、日本国内ではそれらを
「海外で起きている出来事」
として受け止める傾向が強い。
国際ニュースには関心を示すが、それが日常の判断や行動を直接左右することは少なく、
・日本は日本で回っている
・直接巻き込まれない距離を保っている
という感覚が一般層に共有されている。
これは、孤立志向や無関心ではなく、 過度に当事者化せず、距離を保ったまま情勢を見守る姿勢であり、21世紀初頭から続く日本特有の国際感覚が、そのまま延長された形といえる。
■ANMBIの基本構造
本世界観における科学魔法体系は、ANMBIと総称される。
ANMBI(AI-assisted Nanomachine Manipulation via Brain-Computer Interface)とは、 脳波BCIを起点として、AIによる構造補完を介し、ナノマシン群を群体制御する技術体系である。
重要なのは、この体系が単一の万能技術ではなく、役割分担された複合構造として成立している点にある。
基本的な流れは以下の通りである。
使用者の操作意図 → 脳波BCI → AI補完処理 → ナノマシン群の挙動
この順序は固定されており、いずれかが欠けても成立しない。
■各装備の役割
●脳波BCI
使用者の思考・操作意図を読み取り、システムへ入力する中核装置。
実際の身体動作は必須ではなく、主に空間イメージや構造理解が操作精度を左右する。
BCIは強化装置ではなく、使用者の思考をそのまま反映するためのインターフェースである。
●AI(構造補完モジュール)
使用者の意図を直接判断・選択することは行わない。
群体制御における
・均一化
・破断防止
・微細誤差の補正
などを担当する。
AIは前面に出る存在ではなく、現象を成立させるための裏方的補助層として機能する。
●ナノマシン
外界を認識するセンサーを持たない、極めて単純な粒子素材。
個体としての能力はほぼ無く、群体として配置・同期されることで機能する。
ナノマシンは命令を理解するのではなく、位置関係と状態情報に従って動作する。
●製造機(リファイナー)
ナノマシンを生成・供給するための外部装備。
同時に制御できるナノ量や生成速度は、この装備の性能に依存する。
ANMBIによる現象は、この装備が供給できる範囲内でのみ成立する。
●表示機(HUD等)
ナノの残量、同期状態、異常などを可視化する補助装置。
使用者の感覚を直接拡張することはなく、判断材料のみを外部表示する。
■使用準備
ANMBIの使用にあたっては、事前に使用準備が整っていることが前提となる。
ANMBIは思考と同時に無条件で発動する技術ではなく、必要な資源と装備状態が揃って初めて使用可能となる。
使用準備として確認される主な要素は、以下の二点である。
●電源の確保
ANMBIの中枢である製造機(リファイナー)は、ナノマシンの生成・同期・構造補完処理を担うため、安定した電源供給を必須条件とする。
電源容量や残量は、
・同時に展開できるナノマシン量
・連続使用可能時間
・高負荷状態での安定性
に直接影響する。
電源が不足した場合、ANMBIは性能低下を起こすのではなく、生成・同期そのものが行えなくなる。
●ナノシードの装填
ナノシード(Nano Seed)は、リファイナー内部でナノマシンへと生成される、専用の製造用供給資源である。
ナノシードの量と品質は、
・生成可能なナノマシン総量
・構造展開の速度
・連続的な現象成立能力
を決定づける。
ナノシードが不足している場合、使用者の理解や操作精度に関わらず、ANMBIによる現象は成立しない。
ANMBIの運用において、電源とナノシードは能力値や才能とは独立した、純粋に準備状態を示す要素として扱われる。
■使用方法
ANMBIの使用は、基本的に以下の手順で行われる。
・使用者が、空間や構造をイメージとして明確化する。
・そのイメージが脳波BCIを通じて入力される。
・AIが構造的に成立する形へ補完・調整を行う。
・ナノマシン群が指定された配置・挙動を取る。
操作は直感的に見えるが、実際には使用者の空間把握力や抽象化能力に強く依存する。
■できること・できないこと
●できること
・物理的な構造物の形成・補強・変形
・力の伝達や分散といった現象の再現
・精密な作業や複雑な配置を伴う現象の実行
これらは、使用者が明確に構造として把握できる範囲に限られる。
●できないこと
・使用者の意図を離れた自律行動
・曖昧なイメージのみで成立する現象
・無制限・無尽蔵な現象発動
・環境条件を無視して成立し続ける現象
ANMBIは「思えば何でも起きる力」ではなく、 使用者が理解し設計できる範囲でのみ応答し、かつ周囲の物理・環境条件によって容易に成立が阻害される技術である。
■ANMBIの実際の挙動
ANMBIによる現象は、思考と同時に即座に発動するものではなく、段階的な展開プロセスを経て成立する。
一般的な挙動は以下の流れを取る。
・使用者の構造イメージが脳波BCIを通じて入力される
・群体として成立する形へ向け、AIによる補完・調整が行われる
・ナノマシン群が空間内を移動・集束する
・配置が安定し、現象として成立する
このため、単純で小規模な現象ほど高速に展開され、複雑・大規模な構造ほど展開に時間的ラグが生じる。
ナノマシンの挙動は、光や魔法陣のような演出ではなく、粒子が流れ、集まり、層を成していくという物理的に理解可能な過程として視認される。
■失敗時の挙動
ANMBIの失敗時に起きるのは、暴走や制御不能な逸脱ではない。
主に、
・構造が安定せず途中で崩れる
・配置が固定される前に解ける
・現象として成立せず消失する
といった、「不成立」「崩壊」に近い挙動が発生する。
これらの失敗は、使用者の操作ミスや理解不足によって生じる場合も多いが、それだけに限定されるものではない。
■環境による阻害
ANMBIの展開プロセスは、外界から完全に隔離されているわけではなく、周囲の物理条件や環境変化の影響を強く受ける。
設計上は成立している構造であっても、
・展開途中で外乱が加わる
・ナノマシン群の同期が乱される
・想定外の条件変化が重なる
といった状況下では、成立直前、あるいは展開途中で現象が失われることがある。
この場合も、結果は暴発ではなく、構造が途中で維持できなくなり、自然に解体・消失する形を取る。
■挙動の性質
ANMBIは、
・自ら状況を判断して持ち直す
・環境変化に応じて勝手に最適化する
といった性質を持たない。
そのため、使用者の理解と設計が正しくても、世界側の条件によって成立が拒まれるという挙動が現実的に発生する。
ANMBIは万能の力ではなく、成立するか否かは、使用者・装備・環境の三要素が揃ったときにのみ決まる技術である。
■制約
ANMBIには、設計思想上あらかじめ組み込まれた明確な制約が存在する。これらの制約は、安全装置や倫理的抑止として後付けされたものではなく、ANMBIが「世界に接続された技術」であることの帰結として自然に発生するものである。
●使用者側の制約
展開精度は使用者の空間把握能力に強く依存する構造をどれだけ立体的・関係的に把握できているかによって、成立する現象の安定性と再現性が大きく左右される。
構造として理解できない現象は成立しない力や結果だけを思い描いても、それを支える構造が把握されていなければANMBIは応答しない。
操作は常に能動入力を前提とするナノマシンやAIが使用者の意図を推測・補完して自律的に動作することはなく、状況変化への対応はその都度、使用者側からの再入力が必要となる。
●装備・資源上の制約
ナノマシンは消費資源であり、再利用されない現象に使用されたナノマシンは回収・再構成されず、製造機による再生成が必要となる。
連続使用能力は製造機(リファイナー)の性能により制限されるナノの生成速度・同時制御量には上限があり、長時間・高密度の運用は装備側で自然に頭打ちとなる。
装備性能は使用者の能力とは独立して上限を定める使用者が高度な理解力を持っていても、装備が許容しない規模・持続時間の現象は成立しない。
●制約の性質
これらの制約は、
・能力を競わせるための制限
・ご都合主義的な抑止設定
ではない。
ANMBIが、
「思考を現実に押し付ける力」ではなく、「現実条件の中でのみ成立を許される技術」
であることを保証するための、構造的・環境的な必然である。
ANMBIは万能ではなく、成立の可否は常に、使用者の理解× 装備の性能× 世界の条件という三要素の交差点で決定される。
■個人差
ANMBIの扱いには明確な個人差が存在する。 この差は出力や威力の大小ではなく、 どの程度の構造を、どれだけ安定して成立させられるかという形で現れる。
主な要因は以下の通りである。
・想像力・空間把握力二次元的な把握に留まるか、立体・多層構造として空間を認識できるかで、 扱える構造の複雑さと規模が大きく異なる。
・抽象化能力対象を「形」ではなく「構造」「関係性」として捉えられるほど、 少ないナノ量でも安定した現象を構築できる。
・知識・経験力学、材料、構造に関する知識や実運用の経験は、 成立精度と効率に直結する。
・精神状態集中力や情緒の安定は、威力ではなく精度や再現性に影響する。
これらの要素は総合的に作用し、 結果として「同じ装備を使っていても、成立する現象の規模と安定性が大きく異なる」という形で個人差が表れる。
■ANMBIの性能差と具体例
ANMBIは単一規格の技術ではなく、装備・設計思想・用途別に明確な性能差を持つ技術体系である。 この性能差は使用者の能力とは独立して存在し、 「そもそも可能な規模」「安定して運用できる範囲」を決定づける。
●性能差を生む要素
・製造機(リファイナー)の性能 ナノの生成速度と同時制御数によって、 連続運用可能時間・構造規模・並行処理能力が変化する。
・AI補完モジュールの補完深度 均一化・破断回避・環境補正などの補完精度には差があり、 同じ構造イメージでも安定性や再現性が異なる結果を生む。
・ナノマシンの世代・特性 耐環境性、劣化速度、同期安定性などに違いがあり、 過酷条件下や長時間運用で性能差が顕在化する。
●性能帯ごとの具体例
民生・市販モデル
・小規模・短時間の構造形成に特化
・安全性と再現性を重視
・同時制御数・持続時間は限定的
例:
・家庭作業での仮固定・支持
・DIYや簡易工作の補助
業務・職能向けモデル
・中規模構造の安定運用が可能
・荷重分散や多点支持を前提とした設計
・連続使用を想定
例:
・建築現場での仮設構造
・災害現場での安全空間確保
研究・軍事用途モデル(理論上)
・大規模・多層・広域構造を想定
・高負荷環境下での安定性を優先
・使用者能力と組み合わさった場合、S級現象が理論上成立
ただし、少なくとも日本国内においては、 これらの性能帯で都市規模の現象が実運用された記録は存在しない。
このためANMBIは、使用者の能力差 × ANMBI自体の性能差という二層構造によって、 現実的な運用スケールが決定される技術体系として理解されている。
■管理・制度(運用面)
ANMBIは高い潜在的危険性を持つ技術であるが、日本国内においては特別な超技術としてではなく、既存の高リスク機器の延長線上として管理されている。
管理の基本思想は、技術そのものを制限することではなく、使用者と運用行為を管理対象とする点にある。
●使用管理の基本方針
ANMBIは原則として免許制で運用される。
免許は能力等級を示すものではなく、 最低限の安全知識と責任能力を有することの確認を目的とする。
国家による公式な能力ランクや出力区分は存在しない。
個々のANMBI装備の運用管理は、国家ではなくメーカー主体で行われる。
・製造・設計・性能帯の定義
・ファームウェア更新や補完モジュールの調整
・想定用途・使用限界の提示 などは、各メーカーの責任範囲に含まれる。
●責任の所在
ANMBIの使用結果については、 常に使用者個人が一次責任を負う。
技術的補完を行うAIや装備は、 判断主体・行為主体とは見なされない。
法的評価は手段ではなく、 発生した行為と結果に基づいて行われる。
●追跡・抑止機構
ナノマシンには製造段階で固有識別情報が付与されている。
使用履歴や回収不能ナノの痕跡は、 事故調査・犯罪捜査において重要な証拠となる。
この仕組みにより、 常時監視を行わずとも高い抑止力が成立している。
●組織運用との関係
企業・行政・軍などの組織は、 独自の内部基準や運用規程を設けることはあるが、 それらは国家資格や法的ランクとは切り離された内部規則に留まる。
国家は、 「誰がどれだけ扱えるか」を把握・管理する立場を取らない。
●非正規流通への対応
非正規改造品やタグ改変品は存在するが、 成功率は低く、摘発時の刑罰は重い。
全面禁止ではなく、 主流運用から自然に排除される水準で管理されている。
このようにANMBIは、 技術の自由度を維持したまま、運用と責任によって制御される社会制度の中で扱われている。
■日本社会においてのANMBIとは
日本社会においてANMBIは、革新的技術でありながら、特別なものとして切り離されてはいない。それは畏怖や崇拝の対象ではなく、すでに日常生活の中に組み込まれ、使われることを前提とした技術基盤として受け止められている。
多くの人々にとってANMBIは、専門職や研究分野に限られた道具である以前に、学習・試行・日常作業の延長線上で触れられる存在である。高度な用途や潜在的な危険性があることは理解されているが、それは使用を忌避する理由にはならず、正しく使い、失敗し、修正しながら身につけていくものとして扱われている。
日本社会では、ANMBIに対する価値観を一つに統一しようとはしていない。積極的に活用する者、職能として淡々と扱う者、一定の警戒心を保つ者、ほとんど関心を示さない者が同時に存在し、その混在状態そのものが社会の安定した姿として受容されている。
共通しているのは、ANMBIそのものを善悪や意思の主体とは見なさず、それを用いて生じた行為と結果の責任は、常に人間側が引き受けるという認識である。この前提があるからこそ、ANMBIは過度に神秘化されることも、過剰に恐れられることもなく、生活の中で自然に扱われ続けている。
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