3 二人の普通

────えっ?イタズラ??


「?お〜い。なにすんだよ、何も見えねぇぞ〜?」


笑いながら光輝の手を外そうとしたが、そのままもう一方の手で腰を捕まれ、抱き寄せられてしまい息が詰まる。

更にそのまま強く抱きしめられて、更に息が詰まってしまった。


「────っ??!お、オェッぷ!!何すんだよ!光輝!」


「……ん〜…………?俺も胸、大きいよってアピールしておこうかなって。」


「???は、はぁ??」


突然始まった謎の自慢に一瞬キョトンとしてしまったが、光輝がデカく育ったのは事実だし……。

そのため、腰に回された手をヨシヨシしてやった。


「確かに光輝はデカくなったよな〜!最初はガイコツみたいだったのに、いつのまにかちょっとお肉がついたゾンビになって……やっと人間になったと思ったら、今度はゴリラみたいにデカくなっちゃったもんな……。

進化先に、何か間違いがあったのかもしれない。

今はちょっと顔も良くなったし……次はヴァンパイアになる?」


イケメンの悪役といったらヴァンパイアくらいにしか思い浮かばずそう言うと、光輝は俺の方に頭を乗せてブルブルと震えだす。

どうしたのかと心配したが、口から「クックック……ッ。」と漏れる声が聞こえたため、笑っているだけだと気付いてガックリ肩を落とした。


「……なんだよ、何笑ってんの?」


「……っだ、だって……肉がついたゾンビっ……ゴリラって……wwた、確かに進化先がちょっと可笑しいかもしれないけど……っ。ヴァ、ヴァンパイア……!」


光輝はとうとう隠す事もせずに笑うと、今度はまるで本物のヴァンパイアの様に、突然俺のうなじに齧りつく。


「────っ!??い、痛っ!!」


歯が当たって痛くて思わず悲鳴を上げると、光輝はその直後、慰める様にペロペロとそこを舐め回した。

今度は擽ったかったので、「ヒェッ!」と悲鳴を上げて離れようとしたが、光輝は楽しそうにペロペロと犬の様に舐め回してくる。


「ひょっ……ひょおぉぉぉっwwwや、やめろって!!ヒヒッ!?……へ……へ……ヒャッ〜ッハッハッ!!!」


変な声を出して笑う俺に、光輝はまた吹き出し、肩に頭を乗せて死ぬ程笑っていた。

光輝が動きを止めてくれたお陰で、笑いがやっとおさまった俺は、ムッとして光輝の上から降りようとしたのだが……せっかく大人しくなってくれた事だしと、そのまま雑誌を読み始める。

ゲーム愛好会の活動内容は、基本自由で、ただゲームをした感想を語り合っても良し、ゲームを企画してみるのも良し、そのゲームのキャラクターを題材に漫画や絵を書いても良しだ。

ちなみに俺は、ゲームをクリエイトする事が大好きで、思いついたストーリーを書いたり、キャラクターを作ったりして、楽しんでいる。

だからこうしてゲーム雑誌を読んだりしながら、アイディアを纏めているわけだが、対して光輝はバスケット部に所属していた。


「そういや、光輝、部活は終わったのか?」


「うん。今日は明日の大会のメンバー発表だけだったから。レギュラーメンバーは、このまま家で休息していいって。」


「ほほ〜。もうレギュラー入りしたのか?」


雑誌のページを捲りながら尋ねると、光輝は当たり前と言わんばかりに頷く。


成長と共に運動神経もずば抜けて良くなっていった光輝は、中学生に入るとありとあらゆる部活に勧誘されていた。

しかし、光輝は俺と一緒がいいとゴネにゴネ……結局、毎日ギャーギャー煩い周囲に俺が負けて光輝を説得したのだ。


『なんでもできた方が、カッコいい悪役になれるぞ!』……と。


俺には、憧れの悪役になれる様な突出した才能はない。

だから、努力しても努力してもできない俺としては、光輝が羨ましくてたまらないし、できるならやって見て欲しいという気持ちもあったからだ。


自分じゃできない事で輝く光輝を見ると嬉しい。


そんな悪く言えば、自分の理想を押し付ける様な想いがあったわけだが……光輝はどこまで俺の自分勝手な想いを理解したのかは分からないが、結構すんなりと部活をする事を了承してくれた。

どの部活にしようか迷って相談してきた時は、何でも好きなもので……とは言ったが、当時流行っていたバスケットの漫画を思い出し、「バスケがカッコいいかもな!」と口にすると、次の日にはバスケ部へ。

そして────なんと一週間もしない内にレギュラー入りのエースへとなってしまった光輝に、当時は非常に驚いたモノだ。


「……光輝はホントすげぇな。また一年生なのに、もうレギュラーなんてさ。」


しみじみと言うと、光輝はパァ〜!と嬉しそうに笑い、俺の頭にスリスリと頬を擦り付けてくる。

まるで尻尾を振る犬の様に、無邪気に振る舞う光輝。

俺はそんなレギュラー入りが決まって喜ぶ光輝の頭を撫でてやると、見えないはずの尻尾がブンブンと振られている様な気がした。

光輝が認められると、寂しいと思うが、心から嬉しいとも思う。

周囲からは『あんな凄い友達が隣にいると、辛くねぇの?』なんて言われる事があるけど……。

────全然!寧ろ、俺の親友、すげぇだろ!って自慢して回りたいくらいだ!


「〜♬〜〜♬」


ご機嫌で鼻歌を歌いながら、机の上に置いてあるノートにネタを書いていくと、黙ってことの成り行きを見ていた中野が、目元を抑えて揉み込み始めた。


「……あのさ、お前らって、いつもそんな感じだけど……本当にいつでもどこでもそんな感じ?その……周りの視線を気にしないっていうか……。」


「???」


最初質問された言葉が分からず、思わず部室内をキョロキョロしたが、室内にいる部員仲間達は、不自然に視線を逸らして目を合わせてくれない。

なんだなんだ?と原因を考えていると、さっきの自分の発言を思い出し、ハッ!とした。


「確かに駄目だったな、あんなオッパイの話を堂々としちゃ……。女子部員もいるのに、やっちまったな、俺達!

光輝、お前変な話振ってくるなよ。そういう話は女子がいない所でしよう!」


「うん、分かった。」


猫だったらゴロゴロと喉を鳴らしてそうな光輝に叱咤をすると、一応は了解を口にしてくれてホッとする。


どんなにカッコよくても、エッチな事を堂々と言っては、イメージが壊れる!

光輝はちょっとデリカシーがない所があるから、俺が気をつけなければ……。


俺はさっき見せられたギャルゲーの特集のページを開き、ベリベリッ!と豪快に破くと、そのままゴミ箱へと捨ててやった。

それが楽しかったのか、光輝はまたパァッ!と嬉しそうにしている。


「…………。」


中野は一連の行動を見守った後、持参していたゲーム機を出してゲームをし始めたので、ピコピコと独特のゲーム音をバックミュージックに、俺も作業に没頭していった。

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