第2話 証明写真で横目で俺をガン見する元魔王
アリスティアと区役所へ向かう道中、交番の前を通ったら若いお巡りさんに止められた。
「あのー、すみません。そちらの女の子と、どういうご関係ですか?」
警官が俺とアリスティアを交互に見る。
アリスティアは俺の腕にしがみついてオドオドしている。
「えっと、一応、パートナーで」
「年齢が……かなり離れてるように見えるんですが」
「そうですね。こいつ、今年で2000歳らしいんで、俺とは1974歳差ですね」
お巡りさんが固まった。
「……は?」
「魔物のパートナーなんです」
「ま、魔物? ほんとですか……少女にしか見えませんが」
結局、身分証とスマホで仮登録画面を見せてやっと解放された。
「ごめんね、理太郎。私のせいでまた迷惑かけて……」
アリスティアが俺のことを上目遣いで見つめながら言ってくる。
「大丈夫だよ、気にすんな」
と格好つけて言いながら、心の中で俺は、かわいいのも大概にしろよと思ったり、なんかこいつといるといちいち感情が忙しいわ、でも生きてるって感じがするなとか思ったりしていた。
区役所の魔物パートナー課は、平日の昼間なのに大混雑。
しかも、俺以外はみんないかにも魔物って感じのを連れてやがる。
筋肉ムキムキのオークや、石のゴーレムがドスドス歩いて、その度、床が揺れる。
ミニドラゴンを肩に乗っけてるサラリーマンや、スライムを猫を入れるようなカゴに入れてる主婦なんかもいる。
……んで、俺の隣にいるの140cmちょっとの紫髪美少女(見た目14歳くらい)。
当然、全員の視線が一斉に俺たちにつき刺さる。
「「「………………………………」」」
すると、そのタイミングで受付で名前を呼ばれる。
「次、川越様ー! パートナーのお名前をどうぞー!」
俺が受付の窓口で小声で答える。
「……アリスティアです」
その瞬間、待合室が静まり返った。
石のゴーレムがおもくそ振り向く。オークが目を見開く。ミニドラゴンがサラリーマンの肩からボトリと落ちる。
「ア、アリスティア……?」
「まさか、あの……前時代の伝説の魔王の……?」
「……ありえない! 名前が一緒なだけだろ?」
そんな中、筋骨隆々のオークが震える声でこう呟いた。
「でも……違うとわかってても、アリスティアって名前を聞いただけで自然と体が震えちまうな……」
すると、隣の石のゴーレムが小声でこう返す。
「小さい頃、学校の先生がアリスティアが歴代で最も恐ろしい魔王だったんだって、いつも見てきたみたいに話してたもんな……」
アリスティアは俺の背後に隠れて、耳まで真っ赤。
「……恥ずかしい……」
受付のお姉さんが、目をキラキラさせて、
「わあ~! すっごい美少女さんですね~! 本当に魔物なんですか~?」
「たぶん」と俺は答える。
最初の簡易な手続きが終わると、アリスティアが俺の腕にぎゅっとしがみついてきた。
「……みんな、私のこと怖がってた……」
「昔の話だろ」
「でも……今は弱すぎて……役立たずで……ごめんね、理太郎……」
金色の瞳がうるうる。
俺はため息をついて、頭を撫でてやる。
「いいよ。そんなことより帰ったらチョコの試作品残ってるから一緒に食おうな」
「……! ほんと!?」
顔がぱっと輝く。くそ! ほんとに最恐の魔王だったのかよって言いたくなるくらいかわいいな。
しばらく待っていると、「魔物パートナー証明証」の写真撮影の順番が回ってくる。
運転免許証みたいな写真つきのプラスチックカードらしい。
「写真……撮られるの……?」
アリスティアが俺の袖をぎゅっと掴む。どうやら写真のことは知っているらしい。
「別に怖いもんじゃねぇよ」
「でも……魂を抜かれるって聞いた……」
「……誰に聞いたんだよ」
二人で撮影室へ。
「では、パートナーお二方、こちらに並んで座ってください~。同時に写真をお撮りしますので~」
アリスティアが俺の腕にしがみついて離れない。
「いや……怖い……理太郎と手、繋いでないと……無理……」
仕方ないので、右手を差し出す。アリスティアがぎゅうううっと掴んでくる。指が細くて小さくて冷たい。
「はい、笑って~! 3、2、1……」
カシャッ!
後で写真を確認すると、撮られる瞬間、アリスティアは横目で俺をガン見しながら、怯えた子猫みたいな顔になっていた。金色の瞳がうるうる、口は半開き、頬は真っ赤。完全に「助けて理太郎……」って顔。
俺は普通に無感情で前を向いてる。
つまり、証明証の写真は、 俺(無表情)+アリスティア(俺を横目でガン見しながら怯え顔)
その場で写真つきのカードを受け取る。
【魔物パートナー証明証】
契約者:川越理太郎(26)
パートナー:アリスティア(推定200)
種族:不明
写真:俺+俺を横目でガン見する怯え顔の紫髪美少女。
取り直ししなきゃいけないレベルじゃないのか、これ?
金色の瞳だけが俺をガン見してるけど、顔はちゃんと正面を向いてるからギリセーフなのか?
その証明証を見て職員のお姉さんが吹き出した。
「うわ~、めっちゃ可愛い写真ですね~! これで200歳とか信じられませんね~」
聞けば、アリスティアの言った通り、魔物管理局の技術では200歳以上は正確な年齢の測定ができないらしい。
それに種族も不明になってるし、どうやらアリスティアが前時代の最恐の魔王だってことはバレてないみたいだな。これはいいことなのか?
俺がそんなことを考えていると、アリスティアは真っ赤になって俯いたまま、
「……恥ずかしい……消えたいよぅ……」
って、今にも泣き出しそうな声で言っていた。
帰りの電車の中で、俺は証明証を何度も見返して何度も笑った。
なんて顔してんだよ!
完全に俺にすがってる子猫じゃねえか!
金色の瞳がうるうるで、俺しか見てない。……ヤバいな、これ。
すると、隣でアリスティアが小声で、
「……私の顔、そんなに変……?」
「いや、かなりかわいかったぞ、いろんな意味で」
俺がそう答えた瞬間、彼女の耳が真っ赤になって黙り込んでしまった。
俺は慌てて咳払い。
それからはずっとお互い無言で電車に揺られていた。
家に着くと、アリスティアは玄関でぺたんと座り込んだ。
「もう……疲れた……寝る……」
「おい、せめて着替えてからだろ」
結局、そのまま寝落ち。その寝顔を見ながら、証明証の写真をもう一度眺めた。
……もし、これ見られたら会社でめちゃくちゃイジられるかもな。
でも、まあいいか。
俺はひとりでニヤニヤしながらアリスティアを部屋に残して、会社に向かうために玄関へと向かっていった。
あれ? 俺、パートナー契約を解消したいとか思ってたのにどうなってんだ?
電車でやっと我に返ってそう思ったけど、証明証のアリスティアの写真を見返すとすぐに、まあ、いっかって気分になってしまっていた。
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第2話を最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
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作者の何よりのモチベーションになりますので、何卒よろしくお願いいたします
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