吸血鬼令嬢は紅茶を嗜みながら処刑を行う

濃紅

Prologue──共存という名の線引き──

第1話 処刑人の家に生まれて

 俺は、ルフナ=ガーネット=ディンブラ。


 吸血鬼で、貴族で、

 そして――処理を任される家の人間だ。


 この国は、多種族が共存している。

 そう呼ばれている。


 実際には、

 排除できないから一緒にいるだけで、

 理解など最初から求められていない。


 貴族社会が形を成す過程で、

 種族に対する偏見は、

 丁寧に、制度の中へ組み込まれた。


 表向きは平等。

 実際には役割分担。


 そして、

「話の通じない者」を

 誰が始末するのかという問題だけが、

 最後まで残った。


 吸血鬼は、都合がいい。


 夜に動ける。

 血に耐えられる。

 恐れられてもいる。


 だから、

 処刑人の役回りを下されるのが、

 俺の家だ。


 納得は、している。


 あまりにも話の通じない者がいることも、

 理性を失った存在が、

 社会に残れないことも。


 知性のないものが淘汰されていくのは、

 秩序という観点では、

 理にかなっている。


 必要なことだ。


 それは、理解している。


 ——だからといって。


 自分の手を汚さずに、

 それを他人に押し付けるのは、

 どうなんだ。


「吸血鬼だからできるだろう」

「慣れているだろう」

「必要な役目だ」


 そう言いながら、

 自分たちは紅茶を飲む。


 それは、

 あまりにも、品が無い。


 怒りはある。

 苛立ちもある。

 形にならない憤懣が、

 常に胸の奥で沈殿している。


 それでも。


 俺は、投げ出さない。


 下品なやり方で、

 この役目をこなすつもりはない。


 どうせ引き受けるのなら、

 お嬢様らしく。


 姿勢を崩さず、

 声を荒げず、

 血を撒き散らさず。


 品性を以て、

 すべてを終わらせる。


 それは、

 誰かのためではない。


 ——俺自身のためだ。


 汚れ役を引き受けても、

 自分まで汚れ切ってしまったら、

 何も残らない。


 だから、


 わたくしは微笑み、

 紅茶を嗜み、

 形式を守る。


 そして内側で、

 俺が、決める。


 この歪な社会で、

 どこまでを許し、

 どこからを終わらせるのかを。

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