霊衣神話グリムリーパー

月見団子

本編

第1話「死・神・遭・遇」

10年前この世界では日本のとある街である事件があった、いや災害と言った方がいいのか、そのときに起こったことは初めに空に大きい眼が出てきて街にいた殆どの人間はそいつに睨まれた、すると次の瞬間には睨まれた全員とは言わないがたしかそのとき生存者の証言で確実と言える数で約13万5000人のうち2割くらいが化け物になったらしい、その災害は避難所で必死に祈りながら待っていたらいつの間にか去っていたらしいが世界全体から見た問題はこの後にあった。なんと空想のものだと思っていた怪異や精霊たちが人前に姿を現しだして害も得も本当にたくさんのものを人々に与えてきた、海外だと吸血鬼が来た田舎町が1人残らず血を吸い尽くされて殺されたとか妖精が女児向けアニメとはほど遠い血の気も引くようなイタズラをして大量に死人を出したとかのニュースをよく聞くようになった。

日本に住むわたし、普通よりの女子中学2年生

白兎はくと有栖ありす」は今日の校外学習で聞いた昔話の内容を反芻しながら肌寒い帰り道を友達と一緒に歩いていた。


「ねえ、明日の部活有栖はどうするの?」

「休むかなー私もさすがに」


明日の休日に行う陸上の練習、私はサボろうと考えて隣を歩く同級生の友達「豊州とよしま春奈はるな」に向けてそう告げる。


「えー警報とかは出てないのにみんな休んじゃうんだもんなぁ、ちょっと寂しいな…」


そんなことを言いながら、ちょっと子供のように気分を落ち込ませる春奈。これでこの子は陸上部の現部長で世界的大企業の社長令嬢というのだから不思議である。そんな彼女とわたしが出会えたのは少し特別な学園に通う者同士だからである、

わたしたちが通う学園は世界中の天才や偉い人の子供が数多く在籍する「コンステレーション総合学園」であり、いわゆるVIPご用達の学園である。このわたしがここに入れたのは警察関係者である保護者からここが最も安全な場所だと勧められて渋々一般枠の試験を受けたからだ。

当然そんな学園だから試験の難易度は高く、成績としてはギリギリ平均に入るくらいで、おそらく作文と面接が高く評価されて10人しかいない一般枠の生徒の席に運よく入れたという訳だ。


「さすがに記録的な寒さと年始が重なってるからね。大事を取る人と家族の予定を取る人がたくさんいるよ。」

「そうだけどさぁ…あれ?あそこにいるのは…」


会話の最中に春奈は道の先にいる人に注目する。わたしもそれに釣られて同じ方向を向くと少しだけ見知った顔が1人いた。


「おーい!鏡矢ー!」

「ん?春奈?」


そう春奈が声を向けた先に居た少年が反応する。彼の名は「八鳥やとり鏡矢きょうや」わたしたちと同じ2年生で生徒会長、そのうえ剣道部の副部長をやりながらいくつか学論を提出するという文武両道を地で行くのもあって、いつ休んでるかわからないほどいろいろしている人だ、正直あまり話したことが少ないので妄想全開の小説の主人公かと思うくらいハイスペックな人間で、本当に同じ一般枠の生徒とは思えないくらいわたしとは天と地ほどの差がある人だ。


「春奈帰り途中か?いつものドライバーさんはどうした?」

「今日は途中までは有栖と一緒に帰るからそのあとに乗るって伝えておいたからね」

「そうか、なら隣にいるのは白兎さんか。」

「はい、こんにちは会長さん。」


当たり障りのないように挨拶で返答する。

わたしは正直この人が苦手だ、側から見れば目の前にいられると謙遜するからだと思うが、実際の理由は彼が生徒会長になる前の1年前の選挙前に由来する、彼はよく他の学校の生徒と揉め事になることが多く、いわゆる成績は良い問題児の類であり、何故生徒会長になれたのかがわからずそのときの会長有力候補の1人が行方不明になっているのもあり、3年生たちの間では尊敬している人も多いけれど黒い噂が絶えない…そんな人だ。

春奈は1年生の頃から彼とは親交があるようでその様子を何度か見れば悪意とかは無いことが分かるが何か隠し事をしている気がして、苦手である。


「君の話はよく春奈から聞いているよ。

いくつかの大会でも素晴らしい成績を納めている優秀な部員としてね。」

「はい、ありがとうございます。」


生徒会長から褒めてもらえた。

自慢ではないが実際、わたしは部活動ではいくつか賞状をもらえるくらいの成績をいくつかだしていて、この事実は社会的地位や才能を多く持つ者のいる学園において、わたしが胸を張って自慢できる数少ない長所だ。


「ところで春奈、一体何の用だ?」

「うん、見かけたから呼びかけただけなんだけど…そうだ!明日、剣道部の方の練習にお邪魔できないかな?陸上部はみんな休みになっちゃって」

「その誘いは嬉しいが、あいにくこっちも部長と顧問の判断で練習は休みになる。残念なことになるがな。」

「そんな〜…」


交渉は簡単に決裂した。

まぁ当然のような判断だった、それでも春奈は他の部の練習に混じってでも体を動かしたいのだろう。


「まあ皆、寒い日には体を労りたいってことだ、そんなに体を動かしたいのなら家のトレーニングルームでも使えばどうだ?」

「うん、そうするよ、大会近いからアドバイス貰いながら練習したかったのになぁ…」

「そうか、それじゃあ俺は買い出しも頼まれているから先に失礼するよ、春奈、白兎さんさようなら。」

「うん、じゃあまた今度ね!」

「さようなら、会長さん。」


会長さんに別れを切り出し、元の帰路に戻る。

だがわたしたちはこのとき気づかなかった、

後ろから近づいてくる悪意を持った存在に…


しばらく歩いていると後ろの方から音楽が聞こえてくる、その音楽はとても昔ながらの寒い時期になると食べたくなる秋の定番石焼き芋の屋台から流れてくるものだった。


「石焼き芋か…流石にこの時間だしお腹が空いたな…そうだ春奈、石焼き芋食べて帰らない?」

「うん!食べて行こう!わたし、こういう屋台のもの買って食べるの初めてだよ!」


こうしてわたしたちは購入の意思を固めて屋台の主に声をかけた。


「すみません、石焼き芋の小を2つください、

すぐに食べるので袋はいりません。」

「はい、小が2つで800円ね、後ろのほうに置いてあるから好きなの持っていきな。」

「ありがとうございます。」


代金の支払いが終わり、屋台の後ろの小と書かれた板の刺してある箱の中からなるべく大きいよりのものを探して手に取る、少し小狡くもあるが自由に選ばさせてもらえるのだ、せっかくなら大きいものがいい。


「よしそれじゃあ、いただきます!」

「いただきます」


食材への感謝の言葉を挙げ、アルミの包装を破こうとする、だがわたしは少し違和感を抱く、

包装に少しだけ空いた穴から黒いものが見えた、普通であれば暗いからそう見えるのだろうとか

百歩譲っても焦げていて少し損をした気分になったとかそういうものである。

だがこの違和感は限りなくそうではない、焦げているような臭いはしないし、極めつけに視覚が告げる情報が不味いものであると言っている。

動いているのだ、蠢いているのだ、その黒は、

虫が入っているのだろうと思い、今すぐに返金してもらおうと春奈に声をかけようとする。


「春ッッ…菜ァ…!?」


春奈の方を向いた瞬間、声を失った、

春奈がいたはず場所にあったのは人間1人分くらいの巨大な繭。わたしは直感的にそれが春奈が入っているものだと理解する。いや、状況的にそうでないとおかしいというところだろう。

ただでさえおかしい状況にわたしは恐怖する。

そんな心理に追い討ちをかけるように背後からあの屋台の男の声が聞こえてくる。


「はぁ…久しぶりに恐怖もない新鮮で活きが良い人間の魂が2匹分も食えると思ったのに…」


わたしはこの言葉で背後のこいつが怪異の類で

あると理解する。


「まぁ恐怖で歪んだ魂も苦味がクセになるしな!それではいただきま〜す!」


そう言いながら男の姿は蜘蛛のような人形の怪物へと姿を変えていく。いただきますという言葉からわたしたちはもうこいつに捕らえられた哀れな獲物であると理解し、死を覚悟する。


そのときだった。

蜘蛛男はどこからか飛んできたカラスの群れが狙ったいたかのように激突し怯む。

その状況に理解を追いつかせる暇もなくわたしと巨大な眉は跳んできた光に掴まれてヤツと距離を離される。ようやく状況を確認できるようになった直後、目の前には仮面をつけた謎の人物が1人立っていた。その姿は和装に身を包み、魔法使いと言われれば納得のいくサイドスカートと小さめのポンチョのようなものを羽織り腰には刀を帯刀している。

平時だったら近寄りたくはないものだったが状況が状況だわたしはその人物に問いかける。


「あなたは…」

「誰だお前は!」


わたしが質問するよりも早く怪人が質問する。

獲物を横取りされたのだ、当然、怒り心頭なのだろう、強く当たるような問いかけに目の前の人物は特定は難しく感じる声でこう答える。


「死神だ。」


なんなのかわからない回答、彼は続ける。


「蜘蛛の怪よ、貴様の存在は一向に無しだ。」




第1話完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

霊衣神話グリムリーパー 月見団子 @tukimidango_kuraratatu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ