競技セブンスカイズ《死神と太陽》 〜7機vs7機! 撃墜を狙い合う人型装甲機兵《モービルギア》たちが翔け抜ける未来への切符〜

元毛玉

第一部 序章

プロローグ:死神の雨

 降りしきる雨が、人型装甲機兵モービルギアの外装を叩く。

 しかし、雨音よりも異常な蒸気音と計器類の発する警告ブザーで俺の耳は支配されていた。


「こんな時に……」


 スポンサー各社へアピールするためにも最高の試合にしなければならない。そう意気込んで試合直前までカスタマイズをした。

 その結果がこれだ。雨の考慮漏れに歯嚙みする。


「ぐっ!」


 濃霧を裂いて眼前に迫るビームを紙一重で回避し、姿勢制御機スラスターを安定させようとするが、機器の損傷なのか挙動が安定しない。

 狭く窮屈なコクピット。

 体をシートの中で鋭く動かし、姿勢制御コントロールするべく必死に重力へ抗う。


 敵は知り得る限りで最強の敵。

 共に戦場を翔けた頼もしい親友。


 ──死神。


 その男が目の前に立ち塞がる。

 食いしばりすぎて血の味と香りが強くなり、焦る気持ちとは裏腹に体の芯は冷え、唇は震えた。

 かつての姿を取り戻しつつあるのかも知れない。

 強い恐怖と、同じくらいの安堵を覚えた。


「俺の代わりに生きてくれ……」


 俺の愛した女が愛した男。全てを託すことが出来る頼もしい戦友だ。

 俺の明日はやって来ないかも知れないが、せめて戦友たちと愛した女には長く生きて欲しい。

 それだけを切実に願う。


 苦しいながらもビームランチャーを駆使して牽制を続ける。被弾も増え、振動とG負担で体が悲鳴をあげているが、包囲網を突破しようと藻掻く。


 愛した女の涙は見たくない。

 だが、俺に対しても涙してくれるのだろうか。

 一抹の不安と希望。それを抱え、空に浮かぶ薄い桃色の機体を見やる。すると自然に笑みが零れた。


「わりぃなお前ら。雨なんかで遮られちゃってよ。ちょっくら太陽の本気を見せるから、俺を信じて支えてくれるか?」


(俺にだって居るんだよ)


『何言ってるんですか、当然ですよ!』

『任せて下さい!』


(頼れる仲間がな!)


 通信越しでも感じる笑顔たちに背を押され、強く操縦桿グリップを握り直す。

 仲間たちに応えるためにも、俺の全てを燃やして戦うことを心に誓う。

 虎視眈々と俺を仕留めようと狙っている銀色の機体を睨みつけた。


「まだ終わってねぇぜ、ナック!」


 俺は、逆転への命がけのベットを始めた。

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