Section2 - プログラム!!

 かちこーん。


 再び開錠を知らせるベルサウンドが響き、今度は若干しけった丸太が出てきた。いったい『ボックス』はどこの海底からこんなものを持ってくるのだろうか……見渡す限り、木が育てそうな場所はないのだが。


「木だ! えーっとねあれでしょ、木の種類で建築に向いてるかどうか違うんでしょ」


 ノックするように軽く丸太を叩いてみるニコラス。どうやらかなり硬い種類の材木らしく、音はほとんどしない。


 この多少の湿気さえ取り除いてしまえば、かなり幅広い用途に使うことが出来そうだ。木造の家でもいいし、家具でも道具でもいい。


「らっきゃん、何つくる~?」


「……じゃあキャンプ」


「焚き火とか? にしし、じゃあ頑張るよ!」


 ひとまず簡易的な……休める場所が必要だ!


 ということで、大雑把にフラットキャンバスが区画割りを考え、それに従ってニコラスがサクサクと丸太を削っていく。


 整備の要と言える『ボックス』を中心として、そのそばには屋根付きの休憩所を小さく建てることになった。……とはいえこのままでは資源が足りないことなど目に見えているので、屋根はひとまず後回し。


 背もたれはないが長いベンチを二つ切り出し、それぞれ向かい合うように設置した。その間に小さく窪みを作り、余った比較的小さな枝などを入れてキャンプファイアのベースが完成だ。


「ところで、魔法で火はつくの?」


「さあ?」


「……『火球ファイアボール』」


 試しに小さな火を、薪の近くに持っていってみる。


 一瞬だけ指先に灯った赤い火は、すぐさま薪へと燃え広がるが……


「……あちゃー」


 少し薪を焦がしただけで、蝋燭が風に吹かれたように消えてしまった。残念、どうやら火を起こすには道具がいるらしい。


「まーまー、紐あればこう、キリキリして火を起こせるしね! まだかな~♪」


「よくそんなお気楽でいられる……はあ、もう――」


 そう言ってフラットキャンバスが新品のベンチに座った、その時だった。


 ――バキキッ、と鈍い音が聞こえたかと思うと……足場のプレートが大きく割れ、片割れがフラットキャンバス、そしてベンチごと海へ投げだされた!


「ちょっ……」


「あぁあー!」


 咄嗟にニコラスが魔法の発動を試みるも、世界にジャミングされ失敗してしまう。


 それならば、仕方がない! ニコラスはすぐさま助けんと海へと大きく飛び込み――


「わうぇっ」


「セーフ~!!」


 ベンチを救出した。


 当然、フラットキャンバスとニコラスはずぶ濡れである。なんと勇敢なことだろう、ニコラスは作ったばかりのベンチが海水でダメになるのを身を挺して防いだのだ。海面から顔と腕だけを出し、身長より長そうなベンチを片手に一本ずつ載せてはしゃいでいる。


 元から湿気をそこそこ含んではいたが、さすがに水浸しになれば悪化間違いなしだっただろう。物質の可逆性、不可逆性の観点から言えば、乾いて元に戻るフラットキャンバスを見捨てるのは合理的な判断だ。


 合理的な判断ではあるが。


「……薄情もの」


「えー、お互い濡れちゃったからおあいこだよぉ」


 物質ではなく、信頼の不可逆性は……まあ、楽団内ではいつものことか。当面はそちらも大丈夫そうである。


 服が水を吸って重くなるのを気にも留めず、バシャバシャと泳いで生き残りの陸地へ戻るニコラス。後を追うようにジト目のフラットキャンバスも陸へ上がった。


「はあ……」


 こうなればもう、空気が湿っていて不快どころの話ではなさそうである。


「さて、困ったなぁ……どうしようかな~」


 今回の失敗の要因はざっとこう。


 浮力だけでは岩の重みを支えるので精いっぱいだったのに、そこにフラットキャンバスなどが乗ったせいで重さに耐えきれなくなってしまったようだった。面積拡張のためにそこそこ薄く作ってあったのも一因だろうか。


 つまり、海面の浮力以外にも重力とは逆方向に働く力があれば再発は防げるはず。応急処置としては何かしらの材料で、海底にまで届く柱を打ち込めばいいだろう。


 うーんと首を捻るニコラスの耳に、不意に朗報が届いた。


 ――かちこーん。


「……おおお! 石材の補充だ~!」

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