重力使いの女子高生、美少女勇者を推して参る!
水乃ろか
第1話
私は名前は、
こないだまでは、女子高生やってました。
今は、冒険者やってます。
なぜって……それは異世界に召喚されたから!
でも地味で変なスキル
異世界は基本的に地味で変な場所ですが、私には異世界が気に入っている点がひとつだけあります。
それは――勇者が美少女だということ!
冒険者ギルドにいる時に、出会ってしまったのです。
勇者、フランチェスカちゃんに!
それは運命とでもいうのでしょうか。
ひと目、見た瞬間に身体に電撃が走るような衝撃!
それ以来、私の異世界生活はフランチェスカちゃん一色になりました……
そう、私はフランチェスカちゃんを推し活しているのです!
フランチェスカちゃんに出会ってからというもの……
かわいいフランチェスカちゃんにストーカーなんかが寄り付かないように、四六時中、フランチェスカちゃんを陰ながら見守る日々。
変な奴や悪そうなモンスターがフランチェスカちゃんに近づこうものなら、私の
そして今日。
フランチェスカちゃんは、荒くれ山のボスモンスター。
エンシェント・ドラゴンに挑戦するのです!
私は
近づくとバレるので、双眼鏡を使って観戦します。
フランチェスカちゃんの活躍を見れる事に、毎回胸がドキドキしてしまいますね。
しかし……エンシェント・ドラゴンは卑怯者でした。
まず身体が大きい。
フランチェスカちゃんの50倍くらいはある。もっとあるかも。
あと、爪とか尻尾とかが卑怯ですね。
フランチェスカちゃんは、そんなに爪が大きくないし尻尾も生えていない。
フランチェスカちゃんは弾き飛ばされ、今にも負けそうな状態。
そしてエンシェント・ドラゴンは、ダメージで動けないフランチェスカちゃんに対して、炎の息をかけようとしているのです!
こんな卑怯な事があっていいのでしょうか?
ドラゴンの長い首に、赤い光が灯る。
まさに今、炎の息を使わんとしていました。
「……
ズドンッ!
私の重力スキルによって、ドラゴンの頭が地面に落ち、重さでギリギリと固定されています。
口が塞がったドラゴンは、自らが吐き出そうとした炎の息の逃げ場が無くなり……
ドガァァァン!
……ドラゴンの身体が爆発してしまいました。
ポカンとしているフランチェスカちゃん。
――フランチェスカちゃん、さすがです!
負けているように見せて、あとで大逆転!
その姿は、まさに勇者です!
それに、その圧倒的な力!
フランチェスカちゃんの本気によって、簡単に倒された弱すぎドラゴンに対して、フランチェスカちゃんが驚いちゃっている。
私は遠くから見物しているからフランチェスカちゃんの声が聞こえないけど、フランチェスカちゃんはたぶん「私、また何かやっちゃいました~?」と余裕の宣言をしているに違いないです!
さすが勇者フランチェスカちゃん!
カッコイイ&カワイイ!
私の推し! 異世界に来て良かったぁ~!
それからというもの。
フランチェスカちゃんはどうやら、伝説の剣を取りに、森の奥深くのダンジョンに行く予定のようです。
そのダンジョンを調べてみたら……ダンジョン内は汚いし、伝説の剣を守っているボスモンスターも2体いるとかいう卑怯ものでした!
だから、フランチェスカちゃんがダンジョンに着く前に、ダンジョン内を一掃し卑怯なボスモンスターを倒しました。
そして、伝説の剣をダンジョンの入り口に置いておきます。
それを、私はいつもどおり遠くから身を隠して観戦しています。
あっ! 来ました! フランチェスカちゃんです!
今、ダンジョンに入りました!
……もう伝説の剣を入手したようです!
攻略が早い! さすがフランチェスカちゃんです! ダンジョンRTA勇者!
フランチェスカちゃんは伝説の剣を手に取り、キョロキョロしたりオロオロしたりしていました。
勇者フランチェスカちゃんの力において、こんなダンジョンは簡単すぎたのでしょう。
さすがフランチェスカちゃん。強すぎる……!
そして、数日後。
ついに大イベントが始まります。
勇者フランチェスカちゃんが、魔王城に赴き、魔王を倒す日が来たのです!
街を出発したフランチェスカちゃんの顔は緊張していました。
そんな表情も麗しい!
私はフランチェスカちゃんという英雄の出立を見届けると、私は先に魔王城に到着しました。
今日も
そこで、私は気が付いてしまったのです……
魔王城には、数千のモンスターがフランチェスカちゃんを待ち構えていました!
私は早く、フランチェスカちゃんが魔王を倒すところが見たいだけなのに!
数千のモンスターは蛇足すぎます!
「
ズドドドドドドドドンッ!!
……よし! これでフランチェスカちゃんの邪魔をするモンスターはいません!
あっ! フランチェスカちゃんが魔王城に到着したようです!
緊張した表情で、魔王城に入ってきました!
私は魔王城の天井から、魔王とフランチェスカちゃんの対峙を見守っています。
「くくく、勇者よ。まさか数千のモンスターを一瞬で倒すとは、噂通りの強さだな」
魔王の声が響き渡ります。
しかしフランチェスカちゃん、いつの間にモンスターを倒したのでしょうか?
さすが勇者。その底知れない強さに、いつも驚くばかりです!
そして、ついにフランチェスカちゃんと魔王の戦いが始まりました。
私もつい、両手を力強く握ってしまいます。
だけど……フランチェスカちゃんの様子がおかしいのです。
魔王との力の強さの差が激しいのです。
例えるなら、フランチェスカちゃんがレベル1くらいの強さといいますか……
ドラゴンを軽々と倒したフランチェスカちゃん。
伝説の剣のダンジョンを、誰よりも早く攻略したフランチェスカちゃん。
そんなフランチェスカちゃんが、レベル1のはずがありません!
これは、何かある……
その時、私の頭脳の中に閃きが起こりました!
そうです!
フランチェスカちゃんが実力を出せないのは……魔王のせいなのですね!
卑怯な魔王が、最強の勇者であるフランチェスカちゃんに、レベル1まで下がる魔法でもかけたのでしょう!
なんて卑怯な魔王っ!
汚いな。さすが魔王。きたない!
今、魔王の剣が、フランチェスカちゃんに向かって振り払われようとしています!
「
ズドン!
私のスキルが、魔王の動きを拘束しました!
身動きの出来ない魔王。
フランチェスカちゃん、今です!
そして、剣を取ったフランチェスカちゃんが魔王に切りかかりました!
ドカ……
しかし、その剣は魔王の肩に当ったものの、まったくダメージは通っていませんでした。
剣の重さが足りていないようです!
「
「ぐわあああああああ!!」
ついに勇者の剣が、魔王の身体を一刀両断しました!
さすがフランチェスカちゃん!
「ククク、さすが勇者よ。……我の本当の姿を見よ!」
突然、魔王が巨大なモンスターに変身してしまいました。
せっかく勇者が魔王を倒したところを喜ぼうと思ったのに!
私は勇者フランチェスカちゃんの活躍を見たいだけで、バトルが見たいわけではないのです!
「
「ぐわあああああああ!!」
巨大なモンスターを、重力でビー玉サイズまで圧縮しておきました。
こんな蛇足に付き合っている暇は無いのです!
……そうです! ついに勇者フランチェスカちゃんが魔王を倒したのです!
街に戻ると、魔王を倒したフランチェスカちゃんの凱旋パレードが始まりました。
感慨深いです。
今までフランチェスカちゃんを応援してきて良かった……
これからも、私はフランチェスカちゃんを推して参ります!
街中がパレードで浮かれる中、私は冒険者ギルドで食事を取りながら、そんな決意をしていました。
「ここの席、空いてますか?」
今日はパレードが人が多いのです。
冒険者ギルドも、たくさん人が居ました。
こんな時は、相席になることがしょっちゅうです。
「ええ、どうぞ……」
声を掛けられて事でフランチェスカちゃんへの想いを、途中でそがれてしまいました。
ふと、相席になった人の姿をチラリと見ました。
私の二人掛けのテーブルの正面に座ったのは……フランチェスカちゃんでした。
幻? 幻覚?
呆然とフランチェスカちゃんを見ていると、私なんかに声をかけてくれました。
「私はフランチェスカといいます。今、パーティをさがしていて……よければ、一緒にパーティを組んでもらえませんか?」
「へ……?」
七魔王の一人を倒した勇者フランチェスカ。
銅級ランクの冒険者、
そんな二人の旅が……今、
重力使いの女子高生、美少女勇者を推して参る! 水乃ろか @mizuroka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます