本編
「短編小説(一話完結)」
「なんで生きているんだろう?」
「なんで生きなきゃだめなの?」
そんなことを、ぼんやりとした頭のなかで考えていた。
そんな中、アラームの音で目が覚める。
外はもう真っ暗。
時刻は夜の10時過ぎ。
ベッドから体を起こし、床に無造作に散らばった薬のシートをぼんやりと見つめる。
―辛い。
―死にたい
そんな言葉を頭に思い浮かべながら、手元にあった睡眠薬のシートをとる。ゆっくりと何錠か手のひらにのせていく。
それを一気に飲み干した。
*
私は、どこにでもいる普通の女の子。高校生をしているとでも言ったらいいのかな。
勉強もできないし…親も海外にいて…
一人暮らしを強いられているの。
でも…こんな生活、もう嫌。
私…耐えられないよ…
学校でも勉強がわからなくて、寝ちゃっていたら怒られちゃうし…いじめも受けるし…
―私って、何のために生きてるの?
―なんで、この世に生まれてきたの?
…そんなこと、自問自答したって無駄だよね
*
ぼんやりとした頭のなかで…
そんな私の無力な姿を思い浮かべながら、自問自答する…なんてバカなんだろう。
そんなことをしていた私は、気がついたら深夜に家を飛び出していた。最近はいつもこうだ。気がついたらどこかに出かけていることが多い。
辺りを見回すと、駅のホームにいることに気がつく。雪の降る静かな夜の中、電車が何本もホームへ出入りする様子を、ただぼんやりと見つめていた。
(このまま…死んじゃおっかな。)
(私…もう疲れた。)
そうぼそっと心のなかで呟く。駅のホームの端へ、とぼとぼと歩き始める。
そうしてホームの端へついた。
黄色い線から足を踏み出し、今にも落ちそうな場所に立ち尽くす。
―その時だった。
「ねえ、何してるの。」
急な声に驚き、ビクッと体を震わせる。
後ろを振り向くと、なんだか怖いお姉さんが立っていた。
20歳くらいで、派手な化粧をしている。
「こっち来なさい。」
お姉さんに言われるまま、私は腕を引っ張られてホームの内側へと連れて行かれる。
そして駅のホームにあるベンチに連れて行かれた。
私はどうしていいかわからず、一旦ベンチに座ることにした。座った途端、お姉さんはこんな言葉をかけてきた。
「あなた、死にたいの?」
急にかけられた言葉…
それは、私がこれからしようとしていた行為そのものだった。いきなりの言葉にどう返せばいいか分からない。
私は、どうしていいかわからず俯く。
「ま、死にたいなら勝手にしなさい。」
「…人に迷惑はかけないでよね。」
その言葉に驚く。
「ね、ねえ…」
「私を…助けてくれないの…?」
考えるよりも先にそんな言葉を口にしてしまう。するとお姉さんは、
「死にたいんじゃないの?」
と返してきた。
そう言われてしまうと、私は何も言い返せない。事実を言われては困るからだ。
どうしていいかわからず下に俯くことしかできなかった。すると、お姉さんがまた言葉を言ってきた。
「…でも」
「自分で命を絶つってことは、愚かなことよ」
「…それだけ、心に刻んでおきなさい。」
一瞬、私は何を言われたのかを理解するのに時間がかかった。
―愚か…
―死ぬこと…
私には、お姉さんに言われた言葉の意味がよくわからなかった。
混乱した状態のまま、顔をゆっくりと、上に上げる。辺りを見回すとお姉さんはもういなかった。
気がつくと、もうそろそろ電車が来そうな時刻になる。
(やっと楽になれる…)
そんな事を考え、ホームの端へ、再び足を運んだ――――
*
(なんで私って、いつもこうなんだろう…)
離れた場所で、駅のホームの端に立つ女の子を眺める。さっきまで話していた、死にたいと言っていた女の子だ。
「同情しちゃう私って…馬鹿ね」
自嘲しながら、ぼそっと言い放つ。
目の前には、かつて見たような光景が広がろうとしていた――――
*
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