本編

「短編小説(一話完結)」

「なんで生きているんだろう?」

「なんで生きなきゃだめなの?」


そんなことを、ぼんやりとした頭のなかで考えていた。


そんな中、アラームの音で目が覚める。


外はもう真っ暗。

時刻は夜の10時過ぎ。


ベッドから体を起こし、床に無造作に散らばった薬のシートをぼんやりと見つめる。



―辛い。

―死にたい



そんな言葉を頭に思い浮かべながら、手元にあった睡眠薬のシートをとる。ゆっくりと何錠か手のひらにのせていく。


それを一気に飲み干した。





私は、どこにでもいる普通の女の子。高校生をしているとでも言ったらいいのかな。



勉強もできないし…親も海外にいて…


一人暮らしを強いられているの。



でも…こんな生活、もう嫌。


私…耐えられないよ…



学校でも勉強がわからなくて、寝ちゃっていたら怒られちゃうし…いじめも受けるし…




―私って、何のために生きてるの?

―なんで、この世に生まれてきたの?




…そんなこと、自問自答したって無駄だよね





ぼんやりとした頭のなかで…

そんな私の無力な姿を思い浮かべながら、自問自答する…なんてバカなんだろう。



そんなことをしていた私は、気がついたら深夜に家を飛び出していた。最近はいつもこうだ。気がついたらどこかに出かけていることが多い。



辺りを見回すと、駅のホームにいることに気がつく。雪の降る静かな夜の中、電車が何本もホームへ出入りする様子を、ただぼんやりと見つめていた。



(このまま…死んじゃおっかな。)

(私…もう疲れた。)



そうぼそっと心のなかで呟く。駅のホームの端へ、とぼとぼと歩き始める。




そうしてホームの端へついた。




黄色い線から足を踏み出し、今にも落ちそうな場所に立ち尽くす。





―その時だった。





「ねえ、何してるの。」

急な声に驚き、ビクッと体を震わせる。


後ろを振り向くと、なんだか怖いお姉さんが立っていた。


20歳くらいで、派手な化粧をしている。



「こっち来なさい。」

お姉さんに言われるまま、私は腕を引っ張られてホームの内側へと連れて行かれる。


そして駅のホームにあるベンチに連れて行かれた。



私はどうしていいかわからず、一旦ベンチに座ることにした。座った途端、お姉さんはこんな言葉をかけてきた。


「あなた、死にたいの?」


急にかけられた言葉…

それは、私がこれからしようとしていた行為そのものだった。いきなりの言葉にどう返せばいいか分からない。


私は、どうしていいかわからず俯く。



「ま、死にたいなら勝手にしなさい。」

「…人に迷惑はかけないでよね。」



その言葉に驚く。


「ね、ねえ…」

「私を…助けてくれないの…?」


考えるよりも先にそんな言葉を口にしてしまう。するとお姉さんは、



「死にたいんじゃないの?」



と返してきた。

そう言われてしまうと、私は何も言い返せない。事実を言われては困るからだ。

どうしていいかわからず下に俯くことしかできなかった。すると、お姉さんがまた言葉を言ってきた。



「…でも」

「自分で命を絶つってことは、愚かなことよ」

「…それだけ、心に刻んでおきなさい。」




一瞬、私は何を言われたのかを理解するのに時間がかかった。



―愚か…

―死ぬこと…


私には、お姉さんに言われた言葉の意味がよくわからなかった。

混乱した状態のまま、顔をゆっくりと、上に上げる。辺りを見回すとお姉さんはもういなかった。




気がつくと、もうそろそろ電車が来そうな時刻になる。


(やっと楽になれる…)


そんな事を考え、ホームの端へ、再び足を運んだ――――



(なんで私って、いつもこうなんだろう…)


離れた場所で、駅のホームの端に立つ女の子を眺める。さっきまで話していた、死にたいと言っていた女の子だ。


「同情しちゃう私って…馬鹿ね」


自嘲しながら、ぼそっと言い放つ。

目の前には、かつて見たような光景が広がろうとしていた――――

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