最強と最高
戦場では常に最新最強の兵器が求められるといっても過言ではないだろう。
最前線にソレが届くことがなかったとしても開発の手が止まることは平和の世であっても許されない。
技術更新をし続けることが平和のための互いの抑止力になるからだ。
俺がいるここでも強さは特に求められ続ける項目だ。
なぜか、うちの部隊には"最強"の道具を使うやつは一人もいないが。
そう考えながら俺も自前の銃の手入れを続ける、
今となっては旧式となってしまった小銃二丁と拳銃一丁、こいつらに命を預け続けてきた。
俺が新兵だったころは間違いなくこいつが"最強"だった。しかし、"最強"を手にしていた俺は当時任せられた分隊を誰一人護ることができず全滅させてしまった。
原因は弾詰まり、そのあっさりした一瞬で俺の隊は一瞬で瓦解した。
それ以来一度も手入れを欠かさないようになったこいつらはいつでも俺の期待通りの活躍をしてくれる"最高"の相棒になった。
俺の下に来る連中はいつも必ず聞いてくる。
「なぜそんな旧い銃を使っているんですか?そろそろ骨董品ですよ」
だとさ、それでも俺と戦場に行った後は大体俺に頭を下げて横に並んで銃をいじり始めるんだ。
どいつもこいつも変わらないよな。戦場で命を預けるのはいつだって横の仲間より手の中の相棒さ。
なんなら支給された"最強"を使わなくなる奴もいる。信用ってのがこの世で一番大事ってことだな。
今や古株となってまった俺だが分隊壊滅のあと再び新しい部隊を持った時心に誓ったことがある。
二度と無理な勝負を部隊に強いないことだ。
俺はかつて"最強"の部隊に憧れ、様々な無茶なミッションもこなそうとした。結果がアレだ。
その因果が含まれてるのかいまや最前線専門の部隊長にされちまったが今日まで死んでない。
部隊のガキどもにもしっかり伝えてある。
「ここは世間じゃ生き残りの掃きだめだの呼ばれてるがな。常に勝てればそりゃ"最強"だ。でもな、生き残るのが"最高"の結果だ。忘れんなよ」
そんなことを口癖にしてたからなのかな。全員生き残ることを最善に考えしっかり動く。
逃げることもだまし討ちをすることも端とも思わない立派な斥候部隊の完成だ。
タバコ?そんなもん最前線じゃ支給すら届かないこともあるんだ。とっくにやめようかと思ったさ。
でもな、部下たちが渡してくるんだよ。これがなきゃアンタじゃないってな。
そんなことを繰り返してたら戦後じゃ死亡率最低を誇る部隊長って祭り上げられてな。
そういう祭り上げられ方してりゃ次の戦争が起きれば、まぁまたここにいるわな。
俺は今でも最強じゃなくて最高のアガリを目指してるよ。
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