お題ショート集

@gurin-rurin

君の翼からは舞い落ちる羽の代わりに銃弾が、君の美しい瞳からは零れる涙の代わりに光が迸り、愛した世界を抱き締めようとしたその四肢は世界を引き裂き触れるもの全てを破壊していた。

かつて君は僕に言っていた。

「私、みんなが大好き。みんながいるこの世界も大好き。そーれーで、何よりも君が好き」

人差し指で僕の鼻を小突きながら照れ笑いをする彼女は何よりも美しかった。

あの瞬間の永遠は今でも僕の心に深く残っている。

と同時にもう一つの記憶も浮かび上がる。

世界が暗雲に染まったあの日、君の眼は悲しみより先に決意を宿していた。

君は僕の手をすり抜け僕の鼻を小突く、違ったのは笑顔。

決意、諦観、そして僕に何かを伝えるように真っ直ぐ貫く瞳。

「私に何かあっても、君だけは世界を好きでいてね。」

いつも僕を茶化してからかっていた彼女はそこにはいなかった。

僕は何も言えず彼女は一雫の涙をその場に残し走り去った。

彼女は適合者になり世界の闇を晴らした。

はずだったのに。

この光景はなんだ。こんなことのために彼女はあんな姿になってしまったのか。それすら救えないこの世界は何なんだ。

今更世界などどうでもいい。僕にとっては彼女といる時間が全てだった。

だから、君に会いに行こう。たとえ世界が、僕がどうなろうと。

君が愛した世界が、僕が愛した君が、どんな終わりを迎えようと。

僕は君に愛を送りに行こう。君との約束を守るために。

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