虚妄ノ幽霊

@kujira_86

「虚妄ノ幽霊」

 私はあの日の事件をキッカケにカメラマンとしての道を諦めた。

平成30年12月14日16時44分、N市H公園付近の交差点の中央には、血で白線を赤く染め仰向け状態の女性が語りかけてくる。

         

         「お前が死ねばよかったのに」 


「うわぁぁぁー」一瞬でベットから起き上がり布団を自分の手から突き離した。

「またあの夢だ。」周囲を確認しながら首に手をやる。「うわぁ汗ビッショリ」後でシャワー浴びないとっとベットから立ち上がりスマホで現在の時間を確認する。

午前2時14分、まだ深夜じゃん、頭を掻きながらベットに座り込む。昔のトラウマが今でも夢の中に出てくる。小学生の頃の遠い記憶・・・


             「平成30年10月7日」


 この頃の私は、友達が居なかった。作る努力はしたが、どうしても声を掛ける勇気が出ず、気づけば1ヶ月以上経っていた。みんな休み時間になるとボールを持ってグラウンドに向かって走り出す。私は友達を作るのを諦め教室の隅で植物図鑑を開く。別に興味があって読んでいる訳ではない。この孤独な時間を少しでも紛らわす為にやっているだけで、本当はみんなと遊びたいし友達も欲しい!!けど実際に話すと仏像みたいに固まってしまうから、いつも帰り道に心の中で反省会をしている。今日もいつも通り公園のブランコで反省会をしようと視線をずらすとそこには、高校生?くらいの人が居た。

            「平成30年10月7日15時45分」

 私はその人と目が合いとっさに近くにあった草むらに隠れた。女子高校生は、探るような声で「そこに誰か居るの?」と言った瞬間私は「ビクッ!!」と体を震わせ頭を手で押さえる。やっぱりそこに誰か居る。一瞬人影が見えただけで、姿まではよく見えなかったけど、多分小学生?だよね、だってランドセル丸見えだし。「恐がらなくていいよ。出ておいで」また草むらが揺れる。構図がまんま怯えて隠れる動物に優しく声を掛ける人みたいで、内心むなしくなる。相手もどう声を掛けたらいいか分からないみたいだ。

 私は勇気をふり絞りダンゴムシ並みのスピードで姿を見せた。「あっあっあのすみませんでしたー」背中を向け逃げようとすると彼女は、私の腕を掴んだ。あっちで話そうよ。ちょうど話し相手欲しかったんだーとブランコに一差し指を向ける。そのまま私を引きずりながら歩きだす。この時逃げるか死ぬかの選択肢の内一つが封じられ死のみが残り舌を嚙みちぎって死ぬしかないと悟った。お姉さんは覚悟を決めた私に対して名前なんていうの?と言われ優子です。と答える。へーかわいい名前じゃん私真希よろしくね。

            「平成30年10月14日」

 あれから私は学校帰りにこの公園で真希さんと話をするようになった。その中で分かった事は、真希さんは最近このN市に引っ越して来たらしくクラスではあまり馴染めていないらしい。なんだか私と似た境遇を抱えていて心を打ち明けるのにあまり時間は掛らなかった。私と同じ人種だぁと思っていたが、前の学校の友達と会えなくなったから悲しいと聞いて、一瞬にして私と真希さんとの間に大きな壁があると感じた。真希さんは前の学校では写真部だったらしく私はその写真を見るのが好きだった。川の写真、猫が寝てる写真、友達とカラオケに行った写真等どれも目を引き寄せる物ばかりで見ていて楽しかった。そのせいか自然と私も写真を撮ってみたいと思うようになっていた。しかしカメラは、10万~20万いやもっと掛るかもしれない。小6のお小遣いじゃ到底買える金額ではない。そんな時真希さんはある条件付きでカメラを触らせてくれると言った。このカメラは、うちが高校生受験の祝いにパパから買ってもらった大切な宝物なの、だからそうだなーうーん、数秒考えた後何か思いついたように「そうだこのカメラ貸すかわりにさ、優子ちゃんうちと友達になってよ!!」


           「令和5年10月14日午前2時14分」


 棚の上に置いてあるカメラを見つめる。あれから4年経ったのか、真希さんは交通事故で亡くなった。私を庇ってトラックに轢かれて死んだのだ。ずっと後悔している。もしあの日に戻れるのなら戻りたい。だが現実は甘くない。時間は不可逆的に流れるものだ。過去に戻るにしても死んだ人に会うことすらも、少し気分転換に散歩に出よう。家族に気づかれないようにそうっと部屋を出て階段を下りる。音を立てないように静かに扉を開ける。スリルと罪悪感の両方が私の心を覆う。視界に写る景色はまるでプラレタニウムのように綺麗でとても静かだった。なんせ私は、人生で一度も深夜に外に出た事がないのだ、っとちょっとした小話をしつつとりあえずあの公園にでも行こうかな。足を一歩踏み出した時、左手に違和感を感じた。視線を向けると「あれ? いつのまにカメラ持ってきてたんだ?」たしか外出る時は持っていなかったはず。そう考えてる内に公園についてしまったようだ。

 私はあのブランコに向かうとそこには先客が座っているのに気づき近くの草むらに隠れる。「ウソッ!! なんで居んの!? 今深夜だよ」ありえない場面に遭遇し焦る。もしかして不審者?もしそうだったらやばい殺される。勝手な被害妄想をしていると相手から声を掛けられた。「そこに誰か居るの?」そう聞こえた瞬間ビクッっと震えてしまった。「デジャブ?」昔にもこんな事があったような?

「もしかして優子ちゃん?」え!? 突然私の名前を呼ばれて振り返る。そこには、長く黒いロングヘアーで身長が160cmを余裕で超える。女性が居た。真希さん? こんな事ありえないだって真希さんは、あの日交通事故で死ん・・・

「久しぶり優子ちゃん元気にしてた?」

 疲れているのかな私、幻覚でも見てるんだろうか? 「おーい」人差し指で私の額を「つんつん」する。「うわぁぁちょっ・・・」いつの間にか目の前に居た事に気づかず本能的に一歩後ろに下がった。本物? 「どう見たって本物に決まってるじゃん」呆れたように言い返す真希 確かに真希さんだけど、目が、生前は、ブラウンの瞳だったけど、いま目の前に居る真希さんの瞳は「緋色」カラコンでも付けたのかなさすがにそんなわけ・・・真希は、私の左手にあるカメラを見た。「それ私のカメラじゃん。優子ちゃん大事に使っててくれたんだぁ」えっあっうん大切に使わせてもらってます「やばい咄嗟にウソついちゃった。本当は4年くらい触ってないのに。」どうしよう。

ねえあっちでまた話そうよ、私の腕を掴む冷た!!まるで生きていないみたいに、真希さんは、あの事故以来幽霊としてこの公園に居続けているらしい。どうゆう訳かこの公園から出られないんだとか。よくある地縛霊のような感じかな。真希さんは辛くないの?「まあ暇だけど楽しいよ。」それに真希さんって「さん」付けしなくていいよ。今じゃ同い年みたいなもんじゃん真希ちゃんって呼んでよ。うっうんじゃあ真希ちゃん・・・「よし」真希は小さく微笑を作る。それはそうと、優子ちゃんあれからどんな写真撮ってたの?「ギクッ!!」きた!!えーっとその実は写真消しちゃったというかその、まだ人に見せられる写真を撮れていないとゆうか。真希さんはなんとなく察したのか優子にある提案を持ち掛けた。わたしさあこの公園から出られないからさー今度は優子ちゃんが私に写真見せてよ。


            「平成30年12月12日」


 真希さんはどうして写真を撮るの?えーそうだな今この瞬間を忘れたくないからかな。人は楽しい思い出も時間が経つと少しづつ忘れてくけど、カメラはその時の思い出を形にしてくれる。数年後、数十年後友達と見返してさ、あの頃は楽しかったなあとか、後でみんなと思い出話を語るの。どんなに遠くに居ても繋がってる。うち夢なんだ将来写真家になるの。

 真希さんならなれるよ!! 絶対!! ぜーたい。私信じる。だって真希さんの写真すっごくいいもん!! 真希は少し照れ臭く首に手をあて「うん、頑張る」


           「平成30年12月14日16時44分」


N市H公園前交差点ねえちょっとやばくない? 血出てる!! 早く救急車!! 呼んでどうする。ありゃもう手遅れだ!! 顔がグチャグチャに潰れてる。どうしてこんな。

「ちっ違う。俺のせいじゃない。ガキが突然飛び出してくるから。」もう終わりだ俺の人生・・・もう嫌だートラックの運転手は自暴自棄になりながら頭を手で覆う。数分後、救急車が到着し緊急搬送された。嶺岸真希は17時9分に正式に死亡と確定した。

           「平成30年12月17日19時20分」


 どうしてこんな、子供を庇ったそうよ。ほらあそこ、カメラを首からぶら下げた女の子。気の毒よねえあの子いつも公園で二人で写真撮ってたのよ。実の姉のように慕われてた子がまさかこんな事に。葬式に来た近所の人たちは中央にある写真を見た。中学の証明写真。あの子自分の写真だけは撮らなかったそうよ・・・・・


           「令和5年10月14日午前2時34分」


 一度だけ真希ちゃんのことを撮ったことがある。恥ずかしいからと、カメラを取り上げられちゃったけど、私は知っている。事故の後ご両親から渡されたカメラ。その中のお気に入りファイルの中には、一枚だけ私が撮った写真が入ってた事を。「ねえ真希ちゃん」真希の左手を私は両手で掴む。 ん?どうした?「今から真希ちゃんのこと撮らせて欲しい。」え?いいけど、カメラ映る? 分からないけど今この瞬間を写真に収めたいの!! 優子の熱意に負け、受け入れた。気のせいか真希ちゃん嬉しそうな顔をしている。「じゃじゃあ撮るよ」優子はカメラを真希に向けて構える。「どうせなら可愛く撮ってね!」指でピースして笑顔を作る。「パシャッ!!」シャッター音が鳴り二人は、確認する。どれどれってやっぱり映んないかあ。よく霊が写真に映るってテレビで言ったけど、あれは、ウソって事かよー。二人は目を合わせる。「ぷっぷはははぁ」こんなに笑ったのいつぶりだろう。まるであの頃に戻ったみたいに、夜空の下で二人の笑い声が星のように輝いている。

「おいィ!! さっきからうるせえぞ、一人でぶつぶつ喋りながら笑いやがって!!」突然の事にビックリし反射的に謝罪した。すみません気をつけます。ボロボロの服に酒を飲んでいるせいか酒臭い。「オレェはよう昔この公園でガキを轢き殺したせいで人生メチャクチャになったんだよ~」飛び出したガキのせいでオレの人生棒に振られたんだ~ 

 えっそのあの、あきらかにやばい話が通じない。「恐くて足が」男は私に向かって近づいてくる。優子逃げて早く!! けど足がすくんじゃって・・・男が私の上にのしかかった。「オレはオレはぁぁぁー」男の拳には殺意が込められてるのが、直観的に理解した。「痛いやめて」鈍い音が鳴り響く。こんなもので済まさねえぞ。オレは嫁と子供に逃げられたんだ。あの時〈お前が死ねばよかったんだぁぁぁぁー〉拳と月が重なり死が脳裏に浮かび上がった。 

「写真はね自然体で撮るのが一番いいの」優子ちゃんも写真を撮る時は、何気ない時に取るといいよ。「へえーそうなんだぁ。 私もなれるかなカメラマンに。」きっとなれるよ。うちが保証する。

 真希ちゃんもうすぐそっちへ行くよ。。。 お巡りさんこっちです。お前そこで何してる!! 「チックソがぁー」やめろ離せ。オレはただ話を聞いてほしかっただけだぁー。「君大丈夫?」怯える私に警察官がやさしく声を差し伸べる。

 あの後いくら探しても真希ちゃんは居なかった。どうしても謝りたかった。あの日私が飛び出したせいで。


             「令和6年12月4日」

 御免くださーい。インターホンを押す。〈嶺岸〉の表札。はーいどちら様? あっ優子ちゃん久しぶり大きくなったわね。お久しぶりですオバさん。。。「突然どうしたの?」その渡したい物があって優子は手元から一枚の写真を渡す。これって? その写真を見た瞬間その場で立ち崩れた。涙が写真にポトポトと降りかかる。あの子が笑ってる。その後母は優子を抱きしめた。「ありがとう本当にありがとう」

 

 真希ちゃん私なるよ。真希ちゃんの分まで、だから見てて。そしてまたいつか会えたら、真希ちゃんにいーぱい写真見せてあげるから、またあの頃みたいに。

            

             「虚妄ノ幽霊・完」

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