団子が好きだったあの子

第1章:甘味コーナーの記憶

コンビニの甘味コーナーに、スイーツが並んでいる。

君は迷うことなく、三色団子を選んだ。


あれは小学生の夏休みだった。補習があって、昼間の学校はやけに暑かった。

帰り道、決まってコンビニに寄った。

お菓子でも、飲み物でもなく、君は甘味コーナーに行き、三色団子を手に取った。


一度だけ、聞いたことがある。

「なぜ三色団子なの。他にも美味しそうなスイーツがあるじゃん」


君は嬉しそうに答えた。

「この団子ってさ、他のスイーツよりも、すごく綺麗じゃん」


そのときは、よく分からなかった。

綺麗という言葉だけが残った。

今になって思う。

たしかにあの団子は綺麗だ。



第2章:今も迷う甘味コーナー


甘味コーナーで迷う時間は、昔のままだ。

三色団子を買うたびに蘇る。

君が綺麗だと言った、あの顔が。

団子は今日も、同じ三色をしていた。


第3章:三色団子の意味


三色団子。


それは私たちにとって、かけがえのない存在の一部だ。

たいして美味しいと感じたことはない。

しかし、君と一緒に食べる団子は、本当に美味しかった。


私は、ある墓場に向かう。

名前を確かめ、前に立つ。

墓は丁寧に掃除されていた。

そこに、いつも食べた三色団子を置く。


君が好きだった三色団子。

君と一緒に食べた三色団子。


それは、私の数少ない記憶のひとつだ。



第4章:願い


私は君の誕生日に必ず置き、君がいなくなってからの日々を、楽しげに話す。

今日も、コンビニに寄って三色団子を買う。

今はこう思う。


あなたに会いたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

団子が好きだったあの子 @jupqej-2qyfsu-Vurnaz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ