スティーブン先生の最低な授業
イミハ
第1話 最低には最低を…倍返しだ!!
この物語は、
全校生徒の99.9%がヤンキーで構成された
奇跡の教育施設――通称「ヤンキー高校」で起きた
ほぼ実話ではない話である。
なお、本作は某国民的学園漫画とは
一切関係ありません。
関係ないと言ったら関係ない。
ヤンキー高校の校門前。
立っているのは、胃に穴が空きかけている教頭と、
アメリカ帰りの新任教師だった。
「ここがヤンキー高校の肛門か……」
「校門(こうもん)な。漢字が違う」
「なるほど。どうりで糞の匂いがする」
「それはお前の感想だ」
教頭はすでに後悔していた。
この男を日本に呼んだことを。
「行くぞ、助さん」
「俺は教頭だし、水戸黄門要素もない」
1年G組は、今日も元気だった。
主に犯罪方面で。
「新しいセンコー来るらしいぞ」
「前のセンコーみたいに潰す?」
「出会って2秒で殺す」
治安が悪い。
教育より先に警察が必要だった。
その会話を聞きながら、
教頭は静かに震え、
スティーブン先生は静かにキレていた。
「何が出会って2秒で合体だ」
「違う違う違う!!殺すだ!!」
――次の瞬間。
教室の扉が開き、
黒板消しが落ち、
教頭が犠牲になった。
「授業開始だ、クソガキども」
この学校に、
史上最低の教師が降臨した瞬間だった。
教頭は黒板消しの粉を払いながら、床に膝をついていた。
粉というより、人生だった。
「……初日からこれか」
「安心しろ、助さん。今日で慣れる」
「だから助さんじゃねえ」
スティーブン先生は教壇に立ち、教室を見渡した。
笑っている生徒、スマホを弄る生徒、
そして――さっき殴られて床に転がっている田中。
「さて、自己紹介の続きだ」
スティーブン先生はチョークを持ち直し、
さっき書いた文字をぐしゃっと消した。
そして、改めて書く。
最低には最低を
「これが俺の授業方針だ」
生徒たちは一瞬だけ静かになり、
次の瞬間、爆笑した。
「は?なにそれ」
「ヤンキーに道徳語ってんじゃねえぞ」
「もう一発殴られたいのかよ」
スティーブン先生は、ため息をついた。
「誤解するな。俺は更生させる気はない」
教頭が顔を上げる。
「え?」
「反省も、友情も、青春も、クソくらえだ」
生徒たちがざわつく。
「俺がやるのは一つだけ」
スティーブン先生は、倒れている田中を指さした。
「やったことを、同じだけ返す」
「……は?」
田中がゆっくり立ち上がる。
口の端から血が垂れていた。
「テメェ……教師だろ……」
「だからだ」
スティーブン先生は、田中の胸倉を掴む。
「お前はさっき言ったな。
『出会って2秒で殺す』と」
「言っただけだろ!」
「じゃあ俺も言う」
スティーブン先生は、田中の目を真っ直ぐ見た。
「出会って2秒で殴る」
そして、もう一発。
今度は腹だった。
田中は崩れ落ち、
教室は完全に静まり返った。
誰も笑わない。
誰もスマホを触らない。
「安心しろ。殺さねえ」
スティーブン先生は、教卓に腰掛ける。
「だが、脅した分だけ殴る。
これがこのクラスの法だ」
教頭が恐る恐る口を開く。
「……それ、問題になりません?」
「なる」
即答だった。
「だから最初に言っておく」
スティーブン先生は、再び黒板に書いた。
ハムラビ法典
目には目を
歯には歯を
最低には最低を
「ルールは簡単だ」
スティーブン先生は指を一本立てる。
「誰かを傷つけたら、
同じだけ傷つく覚悟をしろ」
指を二本立てる。
「やった証拠は、
俺が全部見ている」
「はったりだろ……」
誰かが呟いた。
スティーブン先生は笑った。
「はったりでもいい。
だが――」
教室のドアが、ガラリと開いた。
そこには、
先ほど黒板消しを仕掛けた生徒が立っていた。
顔面蒼白で、手には黒板消し。
「せ、先生……」
「名前」
「……山本です」
「山本。さっき何をした」
「……黒板消しを……」
「誰に」
「……教頭に」
スティーブン先生は、ゆっくり立ち上がった。
「教頭。山本に黒板消しを落とせ」
「え、俺が!?」
「同じ高さ、同じタイミングで」
教頭は震えながら、
黒板消しを持ち、
山本の頭上に立った。
「い、いくぞ……」
――ゴン。
教室に、鈍い音が響いた。
山本は涙目でしゃがみ込んだ。
「これでチャラだ」
スティーブン先生は、淡々と言う。
「恨むな。
自分がやったことだ」
誰も何も言えなかった。
スティーブン先生は、教壇に戻る。
「これが俺の授業だ」
チャイムが鳴った。
「次の時間までに考えろ」
スティーブン先生は、教室を出ながら言った。
「この学校で、
最低になる覚悟があるかどうかを」
廊下に出た瞬間、
教頭が叫んだ。
「初日からやりすぎだろ!!」
「大丈夫だ」
スティーブン先生は、ニヤリと笑った。
「この学校は、最低しか理解しない」
教頭は頭を抱えた。
「……打ち切りにならねえよな?」
教室の中では、
誰もふざけていなかった。
GTS――
グレート・ティーチャー・スティーブンの授業は、
確かに始まってしまったのだった。
つづく?
次の更新予定
スティーブン先生の最低な授業 イミハ @imia3341
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。スティーブン先生の最低な授業の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます