第一章 これは失楽の物語

失楽の物語/存在の証明1

 第一章 これは失楽の物語

 1.存在の証明


 懐かしいような、温かいような、なんだかふしぎな夢を見た。雨に打たれていることしか覚えていないんだけど…夢に出てきた女の人は一体誰だったんだろう。


 寝ぼけ頭がだんだん鮮明になっていき、気付く。

 

 ここ、どこだ。

  

 というか直前の出来事を思い出せない。記憶喪失という言葉が頭を過ぎる。


 どこからどうやってこの場所に辿り着いたのか頭を悩ませていると、どこからか爆発音…のような音が聞こえてくる。結構近い。


 (もしかして、私を何かの実験体に…?!)


 そうっとベットを抜け出し、開け放されている扉から外を覗く。廊下を少し行った先の扉から光が漏れ出している。抜き足差し足で扉に近づき、中を覗くと…。


 「あれえ?あの子が教えてくれたレシピで作ったはずなんだけどな…僕の溢れ出る才能が爆発したかあ?」


 扉の向こうで、白い粉を被った白翼の女の子が一冊のノートを不服そうに眺めていた。


 「う〜ん…やっぱり料理は苦手だ…。でもあの子達に粗末なもの食べさせるわけには…。というか小麦粉が爆発するってどうゆうことさ。兵器か?」


 あの子達がどの子達なのか知らないけど、少なくとも私の知らない人の家にいることは確かだということがわかった。つまりこれは。


 (誘拐…!)


 誘拐されそうな時はさっさと逃げて、どこかしらの大人に助けを求めろとどこかで習ったような気がする。

 そうと決まれば抜き足差し足忍足で今来た道を戻って、窓から外へ逃亡しよう…と思った矢先。


 「こんにちはー!」


 「ア″!」


 思いっきりバアンと開けられた玄関と、あまりに大きなこんにちはに、喉の奥から変な声が出てしまった。


 「エリさん!今日の朝ご飯ですよー!ってあれ?」


 玄関から入ってきた謎の少女と目が合う。


 「あれ、あれあれあれ?」


 少女は私に近づいて背中やほっぺをツンツンしだす。


 「ついにあの人も狂ってしまったか。人間の子どもそっくりの人形さんを作り出すなんて…。」


 「あ〜!いつもいつもありがとう、サンドイッチはいつもの机…に…。」


 キッチンから出てきた女性とも目が合った。ああ、終わった…。


 「人形さんにしてはよくできた…でもその割にはほっぺたの赤みとかぷにぷに感とか…。」


 いや、もしかして…あるかな。


 「ニンギョウダヨ!」


 「だめじゃないですかエリさん!寂しいからって一夜でお人形さんを作って一人遊びしないでください!」


 「いやしてないよ?!人間の女の子だよ人間の!」


 「いや人間なんて私たち以外にこの世界にいるわけないじゃないですか!」


 メイジと呼ばれた少女が私の顔を見る。


 「人間なんて…私たち以外に…。本当に?あなた本当に女の子の人間ちゃん?」


 エリと呼ばれた天使っぽい人と私の顔を交互に見る。


 「あ〜、えっと…メイジちゃん。その子、今朝拾ってきたばかりなんだよ。なんも知らないと思うしさ。とりあえず、お部屋に戻ろうか。」


 「えっ今朝?!そうだったんだ、ごめんね。騒々しくしちゃった。私、メイジ。あなたの名前は?」


名前。私の名前か…。


 「クロエ。クロエ・リシルノート。メイジ…さん?」


 「いやいや、私のことは呼び捨てかメイジちゃんって呼んでよ!今日は多めに作ってきてよかった。いつもエリさん…この天使の人と私が作ってきたお料理を食べてるの!さ、お部屋にいこ!」



 メイジちゃんに引っ張られて、私が寝ていた部屋に連れて行かれていく。

 私はこれからどうなってしまうのか。もしもこの世に神様がいるならば、悪くようにはしないでほしいと心から願う。




続く

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