これは逆転の物語
くるくるりん
序章 神の園、最後の世界
雨の降る夜、街灯が怪しく照らす公園のベンチに少女は座る。
「貴方は私をどうしたいの」
少女は語る。
「私に優しくしたって私は貴方を救えない。この世界の運命は…破滅。」
少し、ほんの少し雨の音が強くなった。
「私に構うくらいなら、最期は好きな人と一緒に、とか。もっと有意義な過ごし方があるんじゃない?」
私の判断を、人は貶すだろうか。人間と、それを滅ぼそうとする人外の関係。ごく普通に過ごしていれば交わることのない二人。
長い沈黙の末、私は口を開く。
「…私はね、とある名家に生まれたんだ。それを人は羨んだ。しかし私、いや、私と妹には、それが私たちを縛る鎖でしかなかったんだ。」
鉄仮面のように、顔色が変わらなかった彼女の表情が微かに揺らぐ。
「キミも、同じだろ?よかったら聞いていくといい。」
少女の隣に座り、光の灯らない目を見る。
「私の生まれた家、時を守る名家の物語を。」
序章 神の園、最後の世界
僕は人間たちが崇め奉る大天使の一人。私のお仕事は人間たちの魂が集まる世界樹と、その周りの森を守ること。僕が守る世界樹はどんな前任天使よりも瑞々しく、鮮やかに見える。そう、僕は命を護る誇り高い仕事をしているのだ。
しかし今や、世界樹に魂が訪れることはほとんどない。人間たちが住む並行の世界は滅んでいるから。
神と悪魔が戦い、人間たちが神の世界に送られる最終戦争という掟。その前提と神の存在が悪魔たちの手によって破棄された。おかげで人間たちが住む世界は丸ごと消滅、この世界に悪魔たちが攻めてくる始末。残された天使ちゃんたちは大慌てでこの世界を護ることで精一杯なのだ。
「残ってる天使もあと二人(僕含め)。こりゃ最後の一言でも一筆したためるかなあ。」
とはいえ世界樹のお手入れは欠かせない。これを欠かした時、僕の精神は本当に病んでしまうのだから。お手入れ道具を持って、世界樹の待つ原っぱへ向かう。
さて、僕はついさっきこう言った。世界樹に魂が訪れることはほとんどない。そう、ほとんどないのだ。ほとんどとは、全くないということではなく。
世界樹を背に寝息を立てる、二人の少女。それを見た僕の腕からお手入れ道具が滑り落ちる。
「…人間の、少女。」
すでに滅んだはずの人間の少女が僕の目の前にいる。というだけではこの世界では済まされない。人間の少女を見て僕は嬉しいような、複雑なような。
ここでこのままにしておくと悪魔たちに何をされるかわかったもんじゃない。とりあえず僕の家まで連れていくか…。僕の柔らかい細腕でも天使ちゃんなので子ども二人くらいならまあ、ね。できらあって感じ。
「さて、これが僕たちにとって吉と出るか凶と出るか…。分からないけど。いよっと。」
少女二人を担いで、自宅へ向かう。ここは神と天使たちが住む神々の園、人間が願う死後の世界。
しかし今やこの世界には神はいない。それを想う人間もいない。八人いた天使たちも今や僕ともう一人の二人だけ。これでは何も守れやしない。
でも、そんな僕らでもできることはある。神の園に迷い込んできた人間の少女たち、総勢七人。
この物語は、天使と七人の人間たちの、逆転の物語である。
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