第8話「双つの光、反撃の狼煙」
セシリアの支配は、恐怖と偽りの奇跡によって大陸に暗い影を落としていた。しかし、その暗闇を切り裂く二つの光があった。一つは北から、もう一つは南から、反撃の狼煙となって大陸を駆け巡った。
私の旅は、困難を極めた。各国はセシリアを「聖女」と信じ込み、私を「魔女王」として固く扉を閉ざしていたからだ。
最初の訪問国、商業都市国家オルティスで私たちは門前払いを食らった。
「魔女王の言葉など聞く耳持たぬ!立ち去れ!」
「困りましたね、アリシア様。これでは埒が明きません」
カイが歯がゆそうに言う。
だが、ここで諦めるわけにはいかない。私はエリオットに視線を送った。彼はにやりと笑う。
「お任せを。こういう時のために、俺がいるんですから」
エリオットは商人ギルドのネットワークを駆使し、オルティスの有力者たちとの会談の席を設けた。
会談の場で、私はセシリアがいかにして民衆を騙しているかの証拠を突きつけた。彼女が奇跡と称して鎮めた魔物が、実は彼女の配下が特殊な薬で暴走させたものであること。彼女に反対する者が、次々と不審な死を遂げていること。エリオットのギルドが集めた情報はあまりに具体的で、無視できるものではなかった。
そして、私は彼らの目の前で古代魔法の一端を見せた。枯れた鉢植えの植物を、瞬時に生き生きとした花で満たしてみせる。
「これが、私の力。破壊ではなく、再生をもたらす力です。真の脅威が誰なのか、賢明な皆様ならお分かりのはず」
私の言葉とエリオットの根回し、そしてカイが示す騎士としての誠実さ。それらが、オルティスの人々の心を動かした。彼らは、大陸で最初にセシリアからの離反を表明し、私との同盟を結んでくれた。
これを皮切りに、私の訴えはドミノ倒しのように各国へと広がっていった。セシリアの嘘に気づき始めた国々が、次々と私たちの連合軍に参加を表明する。私の周りには、大陸の未来を憂う力強い仲間たちが集結しつつあった。
***
一方、クロードもまた鮮やかな手腕で反撃を進めていた。
彼は王都には近づかず、地方の都市を一つずつ解放していった。力で制圧するのではなく、密偵が掴んだセシリ派貴族の汚職の証拠を民衆の前で暴き、支持を失墜させてから捕らえるという、実にクレバーなやり方だった。
民衆は、自分たちを虐げていたのがセシリア派の貴族たちであったことを知り、真の皇帝であるクロードの帰還を熱狂的に歓迎した。
そして、ついにクロードは王都近郊まで軍を進めた。彼は、王都のセシリア派に対し最後通牒を突きつける。
「今すぐ城門を開け、セシリアを我らに引き渡せ。さすれば、首謀者以外の命は保証しよう」
この呼びかけに応じ、王都の内部でクーデターが勃発した。クロードに忠誠を誓う者たちがセシリア派の幹部たちを一斉に拘束し、城門を開け放ったのだ。
クロードは、民衆の歓声に迎えられついに王都へと帰還を果たした。セシリア派は、一滴の血も流すことなく完全に失脚した。
全ての準備は整った。
私は連合軍を率いて、クロードは皇国軍を率いて、セシリアが立てこもる王城へと向かう。
王城の前に広がる平原で、二つの軍勢は再び顔を合わせた。だが、かつてのような敵意はない。同じ目的を持つ、頼もしい友軍だ。
馬上から、私はクロードの姿を認める。彼もまた私に気づき、静かに頷いた。
私たちは、それぞれの軍の先頭に立ちゆっくりと馬を進めて中央で対峙する。
「よくぞ、ここまで」
クロードが、穏やかな声で言った。
「あなたも」
私も、素直な気持ちで応じた。
追放された悪役令嬢と、彼女を追放した冷酷な皇太子。
そんな二人が、今や世界を救うための最後の希望としてここに立っている。
見上げると、王城の最上階のバルコニーに黒いドレスをまとったセシリアの姿が見えた。彼女は、私たちをあざ笑うかのようにゆっくりと拍手をしていた。
いよいよ、最後の戦いが始まる。偽りの聖女との、最終決戦が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。