妄想少女は帰らない
詩羅リン
プロローグ『ひとりぼっち』
地面を蹴る。
ふわりとした浮遊感がやってきて、本能が私に、危険信号を送る。けれど、これはブランコだから、何も危なくはない。気にせず、私は地面を蹴り続け、空を蹴っている感覚になった。
「……楽しいね!」
それから、しばらくして、地面に靴を擦らせて、勢いを殺す。隣のブランコに顔を向け、私は元気よく声を掛けた。しかし、風の音だけが聞こえてきて、ブランコにはカラスが止まっている。私の求めている人は、どこにもいない。
そんなこと、とうに理解しているはずなのに。
「……また、いつもの癖が出ちゃった。ほんと、私ってば、バカだなぁ──」
風鈴のような季節外れの声が響き渡り、なのに、静寂が保たれる。カラスは飛び上がり、夜空を冒険したまま、公園で俯く私を、スルーした。けれど、無理もない。
なぜなら私は──妄想少女だから。
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