短編蝶喰小説 手向けの彼岸
蕐鱶 詞祢
手向けの彼岸
山の中にぽつんと置いてある少し大きめの石、その前に青年が立っていた
「手向けの花だってのに、彼岸とは皮肉だよな…」
少し不安そうな顔をした青年の手には白い彼岸花の花束が風で揺れている
「お前が好きな花だから持ってたけどな」
青年は石に向かって独り言を呟き続ける
「僕は花の知識は疎いから意味なんて分からないけど、こいつでいいんだろ?前に置いとくな」
石の前に彼岸花の花束を置く
「っと、いけね、この山風強いんだった、このままじゃ飛ばされるな…石を上に敷けば飛ばないだろ」
その後、青年は石に向かって手を合わせ祈り始める
「なぁ天岼、僕はあの時間違っていなかったんだよな」
青年の悲しげな声が風に流れる
「まだ整理がつかなくてさ、お前ならどうしてたのかな」
そう呟いた後、風がまた吹き、少しの沈黙が訪れる
「…答えてはくれないよな、僕の問題だから」
また1つ悲しげな言葉を呟くと共に後ろから声が聞こえる
「お兄ちゃん、ここに居たの?そろそろ帰らないと日が沈むよ」
「あぁ、わざわざ悪いな」
「ほら早く!帰り道案内してあげないよ!」
「分かった、すぐ行く!」
声の元へ向いていた体を石へ振り返らせる
「天岼、今度は長めに居れるように早めに来る、またな」
その言葉に呼応する様な優しい風が青年の身体を撫でる
「明日は病院へ行かなきゃだった、帰って寝ないと」
青年達は山を降りる為に歩き始める
「年下に介護されてたら世話ないし、僕も変わっていかないとだな」
ザッ、ザッと枯葉を踏む音が山に響く
「ん?蝶?この季節には珍しいな」
蝶は
その蝶は暗くなる空に抗うかのような綺麗な青色をしていた
(ここまで来たのか?)
と言わんばかりの
その微風に流されるように蝶は飛び、明日の方向へと行くのだった
短編蝶喰小説 手向けの彼岸 蕐鱶 詞祢 @kotone_kafuka
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