そして読み始めてすぐに、「これは最後までテンポを信じていいやつだ」と確信します。
定番の展開を踏んだはずなのに、次の一行で予想を裏切られ、さらにその次で加速していく。その畳みかけ方がとにかく上手くて、考える暇を与えずに笑わせに来るのが強いです。勢い任せに見えて、ちゃんと狙って外してくる感じがあります。
言葉遊び、間の取り方、ツッコミどころの置き方が軽快で、短編としてのキレが抜群でした。深刻になりがちな要素を一切引きずらず、「そう来るか!」と思わせたまま最後まで走り切る潔さが気持ちいいです。
難しいことを考えずに読めて、読み終わったあとにしっかり楽しい。
「ブラーーーーーーーーック!!!!!」と読み終えた時に叫びたくなります。
婚約破棄モノ。濡れ衣を着せられて黒幕のせいで追放されてしまう令嬢。
そんな彼女がある時に迷い込んで「寿司屋アベンジャーズ」という何やらきわどい名前のお店。
その店で出てきたものとは一体……?
お寿司屋さんに出てくる言葉。たしかに、突き詰めると何やら物騒なものがいくつもあるなあ、と改めて思わされました。
あの「お寿司にかかわるごはんの名称」って、たしかに「アレ」だもんねえ、と。
どうして食べ物として美味しくいただくものなのに、そんな食欲をなくす連想にしちゃったの、と文化史的なものを紐解きたくもなります。
そんな「BLACK」なインパクトに満ちた作品。サクっと読めてザワっと来る、とってもとっても黒きお話です!