第2話 帰還、雷鳴の刻



暦は2021年8月31日、雨。


午後23時58分。


「ここはどこだ? いや……俺の力が、なんでここまで衰えてんだ?」


窓の外で雷鳴が轟き、それはまるで俺の心の乱れに呼応するかのようだ。


俺はパソコンを開いて時刻を確認する。


「2021年8月31日……」


「あれは俺が高校に入学する前日じゃないか。あの時、俺は雷に打たれてこの世界に来たんだ」


鏡の前に立つと、映っているのは四十路過ぎのおやじの姿ではなく、十五歳の少年だった。


こんなにも躍動感に満ちた体は、百六十歳を過ぎてからは味わっていなかった。


さすがに半神は三百年生きられるとはいえ、三百年間若さを保てるわけじゃないのだ。


まあ、神様にはまだ少し良心が残っていたのかもしれない。空間指輪は没収されていなかった。


俺は指輪を開こうと試み、中から使えそうな果実を取り出そうとする。


「精神力が足りない……開かない」


まあ、仕方ない。


精神力が足りないというのは、どうにもならない。


「カウントダウン:残り二十四時間」


さっきの神様のような機械的な声が、また頭の中に響いた。


「23:59:59」


鮮やかな赤色の数字が、脳裏に浮かび上がる。


機械的なカウントダウンの音が、頭の中でチクタクと響き渡り、不気味さを増していく。


「これはゲーム開始のカウントダウンなのか? それとも……」


疑問点だらけの状況に、実力の急落まで重なり、俺の心に少し焦りがよぎった。


「今の俺の魔力レベルは、せいぜいD級上位か……指輪を開くには、最低でもB級の魔力が必要なのに……」


(魔法使いのランクはD級からS級まで存在し、S級を超えたのが半神級だ)


指輪が開かなければ果実を取り出せず、果実が取り出せなければ実力を回復できず、実力が回復できなければ指輪は開かない。


「まさにジレンマだな……」


だが俺は諦めるつもりはない。このゲームに備えて、何かしなければならない。


「身に着けている替身宝玉にはあと二回の使用回数が残っている……あと、魂の契約書も一枚……それから……」


「ランダム召喚獣の巻物か……まあ、その時になって使おう」


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