こちら、東京ダンジョン専門相談事務所です。
🌸桜廻
1話
『どうですか、強火で焼いたレッドドラゴンのステーキの感想は!』
『うーん、すごくジューシーで美味しい!どんどん脂が溢れてきますね!がっつり食べたい方にオススメです!』
『この上に、ダンジョン産のマールのソースをかければ、ドラゴン特有のクセが消え、すっきり食べることができますね!』
青年は、テレビに映るグルメ番組、『ダンジョン料理をいただきます』をきらきらとした瞳で見ていた。
ふと、時計の針が1時を指していることに気づくと、リモコンで消し、ソファから立ちあがった。
「よし……。午後も頑張ろう」
◆◇◆
青年ーー雨井ヒカゲはここ、『東京ダンジョン専門相談事務所』を経営している。とはいっても、社員は今のところ0人。とても小規模な会社だ。
「面接……上手く話せるかなぁ。ダンジョンの話題で暴走しすぎたらどうしよう?ああ、怖い……」
ヒカゲはどきどきと胸を押さえて呟く。
そう、今日は入社希望の人が面接に来るのだ。だが、ヒカゲはコミュニケーション能力が低く、初対面の人と話すのに緊張するタイプ。
おまけに、ヒカゲはダンジョンが好きすぎるあまり、その話になると、少々……というか、かなり暴走してしまう癖がある。それは自分でも自覚しているが、中々、治せるものではない。
「うう、胃が痛くなってきた……」
と、その時だ。
ピンポーン、ピンポーン
玄関のインターホンが鳴り、思わずひえっと声を漏らしてしまう。胃の辺りを抑えつつ、ヒカゲは扉に向かった。
「は、はーい……」
「こんにちは。東京ダンジョン専門相談事務所に入社希望の御剣ホムラと申しますわ」
扉を開けると、そこには若い女性が立っていた。
赤髪を黒いリボンで三つ編みに結い上げた美少女で、口調から上品な印象が見て取れた。
「アッ、こ、こんにちは……、えと、雨井ヒカゲでしゅ、今日はよろしくお願いしましゅっ」
ヒカゲは顔を真っ赤にして脳内で叫んだ。
(めちゃくちゃ噛んだしめちゃくちゃどもったー!なんだよ"でしゅ"ってぇ!緊張してるのバレバレじゃん!)
軽く泣きそうになるヒカゲに、ホムラは気にした様子もなく上品に微笑む。
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ」
(お嬢様なのかな……、すごく上品だし、丁寧な口調だ。よかったぁ、まともそうな人で)
世の中には、面接に変な格好できたり、横柄な態度で接してくる輩もいるそうだ。だが、この女性は常識人そうに見える。
「えっと、どうぞ、あ、あがってください」
「ありがとうございますわ」
にっこりと笑みを浮かべ、ホムラは靴を揃えて事務所にあがる。ソファに二人は向き合って座ると、さっそく面接を始めた。ヒカゲは履歴書を見ながら、質問し、それにしっかりとホムラが答え、順調に面接は進んでいたのだがーー……。
「えーっと……自らが大事にしている信念やはありますか?」
「はい」
ホムラは、真っ直ぐな笑顔を浮かべ。
「根性です」
「………はい?」
思わず聞き返してしまうヒカゲ。
「人間、根性さえあれば、どんなことでも乗り越えられますわ。挫けそうな時、守るべきものを思い浮かべ、体に鞭を打って立ち上がる。一番肝心な時に、それができるよう、私は毎日剣を振り、技術だけでなく精神を鍛えております」
「な……なるほど。では、えー……、座右の銘などはありますか?」
「努力、友情、勝利です。ジャ○プ漫画の基本として、常に意識しております」
「そ、そうですか…………」
ヒカゲは汗をかきながら心の中で呟いた。
(なんか……すごく熱血な人が来ちゃった………)
こちら、東京ダンジョン専門相談事務所です。 🌸桜廻 @sousaku1022
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。こちら、東京ダンジョン専門相談事務所です。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます