第10章: 新しい日常【後編】
悠斗は、阿部との日々を過ごす中で、自分の心が少しずつ解放されていくのを感じていた。阿部と一緒にいることで、過去の自分を完全に否定せずに、今を大切にすることができるようになりつつあった。だが、まだ心のどこかにひっかかるものがあった。それは、モデルとしての過去だ。
悠斗がモデルとして活動していた頃の自分は、まるで他人のように感じられることがあった。完璧に見えたその自分に、どこか強迫的なものを感じていた。SNSでの注目を集め、周りの期待に応えようと必死になっていたあの頃。だが、今はもうその頃の自分を嫌悪しているわけではなく、ただその過去をどう受け入れるべきかがわからなかった。
そして、悠斗が気づいたことは、自分の過去を完全に消し去ることはできないということだ。それを受け入れ、今の自分とどう向き合わせるかが大事だということに、少しずつ気づき始めていた。
そのある日、悠斗はふとした瞬間に昔のフォロワーからメッセージを受け取った。内容は、悠斗のモデル活動を懐かしむもので、彼がどれほど多くの人に影響を与えたかを語っていた。そのメッセージに、悠斗は少し驚き、そして複雑な気持ちが入り混じった。
「阿部、このメッセージを見て、なんだか自分がまだあの頃の自分に引きずられている気がして…。」悠斗は歩きながら、少し考え込んでいた。
阿部は少し顔を曇らせながら、悠斗を見つめた。「メッセージ、どういう内容だったの?」
悠斗はスマホを取り出し、そのメッセージを阿部に見せた。内容は、悠斗がモデルとして活動していた頃のファンが、その姿を懐かしんでいるというものだった。
「君のモデル活動はすごく素敵だった。僕はあの頃からずっと応援してた。」というメッセージに、悠斗は少し戸惑った。「あの頃の僕を、みんな覚えているんだな…って、思うとなんだか、今の自分とのギャップに苦しんでしまって。」
阿部は悠斗の気持ちを理解し、静かに言った。「でも、悠斗。君が感じているそのギャップは、君が成長した証だよ。あの頃の自分があったから、今の君がいるんだ。過去と今をつなげることができれば、きっと自分をもっと素直に受け入れられるようになる。」
悠斗はその言葉を聞いて、少しだけ心が軽くなるのを感じた。阿部の言う通り、過去の自分を否定することなく、その自分も受け入れながら今を生きることが大事だと思えた。
その日、二人は学校帰りに少し立ち寄った公園で、静かな時間を過ごしていた。夕日が沈みかける空を見上げながら、悠斗は改めて自分の気持ちと向き合うことができた。
「阿部、ありがとう。君の言葉で、少し自分の気持ちが整理できたよ。」悠斗は深呼吸し、笑顔を見せた。「僕、過去の自分を受け入れて、これからは今を大切にして生きていくよ。」
阿部は悠斗を見て微笑んだ。「それが一番だよ。君がどう思うかが大事だから、君らしく生きていってほしい。」
その時、悠斗は改めて感じた。阿部が自分を支えてくれていることが、どれほど大きな力になっているのか。そして、自分もまた、阿部に対して同じように支え合っていける存在になりたいと思った。
その後、悠斗は少しずつモデルとしての自分を受け入れ、過去の自分と向き合わせることができるようになった。以前はその過去が重くのしかかっていたが、今ではその経験も一つの宝物だと思えるようになっていた。
そして、悠斗は新たな気持ちで自分の未来を見つめるようになった。過去を完全に消すことはできないけれど、それを受け入れ、今の自分に活かしていくことができる。未来に向けて一歩踏み出すことができた自分を、少しだけ誇らしく感じていた。
その日の夜、悠斗は再び阿部にメッセージを送った。
『ありがとう、阿部。君のおかげで、過去を受け入れる勇気が出てきたよ。これからも、よろしくね。』
すぐに返ってきたメッセージには、こう書かれていた。
『これからも一緒に歩んでいこうね。どんな君でも、僕は君を応援しているから。』
悠斗はその言葉に、胸が温かくなるのを感じながら、しばらく画面を見つめていた。
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