家父長制を破壊しようとしたら、弟がフェミニズム最強の「悪魔」として覚醒してしまった件
@sxaddict
第一章:葬列の異様さ
【ブログ記事アーカイブ】 記事タイトル:【毒親育ち】私の母が「名誉男性」だと気づいた日、あるいは祖母の葬儀で見た希望について投稿日:202X年6月15日タグ:#毒親 #HSP #フェミニズム #AC #解毒 #JFK(地獄の家族計画)
雨か。ついてないな。 私が前世を去った日も、こんな雨が降っていた気がする。……なんてね。HSP特有の妄想癖が出ちゃった。 でも、あながち間違いでもない。今日、私の「生物学上の祖母」が死んだ。 だからこれは、ある種の転生(リボーン)の記録になると思う。
自己紹介が遅れました。 私は愛理。23歳。HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)で、毒親サバイバーです。 こう書くと「またその話?」って顔をする人がいるよね。分かるよ。その「うんざり感」こそが、あなたが強者の椅子に座っている証拠だから。 誰にも分からないよね、この皮膚が全部剥がれた状態で塩水を歩かされるような感覚は。
私の家は、地獄だった。 暴力? いいえ。そんな分かりやすいものなら、警察に行けば終わる。 私の家には「ケア」という名前の別の形の暴力があった。 母さん──あえて美和子と呼びます──は、私を「守る」ふりをして、私の手足を折って観賞用のケースに閉じ込めるタイプの人だった。 「女の子なんだから危ない」「あなたのためを思って言っている」 その言葉の裏にあるのは、愛じゃない。恐怖だ。彼女は自分が社会と戦うのが怖いから、娘である私を去勢することで、自分を正当化しようとしていた。典型的な「弱者しぐさの名誉男性」ムーブ。吐き気がする。
でも、救いはあった。 皮肉なことに、救いは美和子が一番憎んでいた場所にあった。 祖母、大江サト。 教科書にも載っているような、フェミニズムの闘士。美和子は祖母を「狂った女」と呼んで私を近づけなかったけれど、亡くなって初めて、私は祖母の書斎に入った。
そこで私は、震える手で一冊のノートを見つけた。 『解放のための儀典』。 そこには、私がずっと探していた「言葉」があった。私の喉につかえていた泥を、黄金に変える魔法の言葉たちが。
「個人的なことは政治的なことである」 「思考は現実を書き換える」 「名前を奪われた者は、他者の声を奪う権利を持つ」
読んでいて、涙が止まらなかった。 祖母は知っていたんだ。この世界の
葬儀は、奇妙な熱気に包まれていた。 普通のお葬式って、もっと湿っぽくて、黒一色で、お焼香の臭いが充満しているものだよね。でも、祖母の葬儀は違った。 会場に入った瞬間、目に飛び込んできたのは「紫」だった。 参列者の女性たちが、みんな示し合わせたように紫色のスカーフを巻いている。あるいは紫のブローチ、紫の数珠。 それは祖母が主宰していたコミューンのシンボルカラーらしい。
母さんは、喪主なのに祭壇の隅で小さくなっていた。まるで借りてきた猫みたいに。 「どうしてこんなに人が来るの……」 震える声でそう呟く母さんを見て、私は内心で嘲笑った。 (そりゃそうよ。お母さんは知らないでしょうけど、お祖母ちゃんは英雄だったんだから)
私は誇らしかった。この偉大な女性の血が、私の中に流れていることが。 でも、不思議なことが一つあった。 参列者の女性たちが、なぜか私の弟──翔太のこと──をじろじろと見ていたのだ。
翔太は、18歳の高校生。
そんな翔太に、紫のスカーフを巻いた上品な老婦人が近づいてきた。 たしか、ジョーンさんと呼ばれていた人だ。祖母の古い友人らしい。 彼女は慈愛に満ちた目で翔太を見つめると、そっと彼の手を取り、二の腕から首筋にかけてを、確かめるようにゆっくりと撫でた。
「素晴らしい器ね。サト先生も喜ぶわ」
翔太は「え、あ、どうも」と間抜けな声を上げていたけれど、私はその時、胸がすくような思いがした。 そうよ。男なんて、精子バンクと労働力の「器」でしかない。 祖母の友人たちは、ちゃんと分かっている。翔太個人を見ているんじゃなく、彼が背負っている「男という原罪」を見透かしているんだって。 彼女の目は、家畜のセリ市場で肉質の良い牛を見定めている時の、あの冷徹で正確な目つきだった。 ああ、なんて知的で、残酷で、美しいんだろう。
葬儀のあと、私はこっそりと祖母の書斎に戻った。 母さんに見つかったら没収されるかもしれない。でも、このノートだけは手放せない。 ページをめくるたびに、頭の中の霧が晴れていく。 今まで、私は自分の生きづらさを「私の弱さ」だと思っていた。 でも違った。これは社会のバグなんだ。 そして、このバグを修正するための
例えば、こんな記述があった。
「男性性とは病である。治療には、彼らの言語野を破壊し、我々の概念を移植する外科手術が必要となる。麻酔は不要だ。痛みこそが、彼らにとっての唯一の学習だからだ」
すごい。なんてラディカルで、本質的なんだろう。 翔太を見ていていつも感じていたイライラ。あれは、彼が「病気」だったからなんだ。 だったら、姉である私が治療してあげなきゃいけない。 それがノブレス・オブリージュ(持てる者の義務)ってやつだよね?
最近、夢を見る。 私が翔太になる夢。 いや、違うな。私が翔太の口を使って、世界に向かって演説をする夢。 みんながひれ伏すの。母さんも、父さんも、私を馬鹿にしてきた会社の男たちも。 私の思考が、翔太の太い声帯を通して、重低音となって空間を支配する。 「構造を解体せよ!」 私が叫ぶと、世界の壁にヒビが入る。ガラスが割れる音がして、私は快感で震える。
目が覚めると、喉が焼けるように熱い。 まるで、誰かが私の喉に手を突っ込んで、そこから外の世界へ這い出そうとしているみたいに。
ねえ、分かるかな。 私はもう、黙っているだけの「いい子」じゃない。 祖母が遺してくれたこの「毒入り紅茶」を飲み干して、私は新しく生まれ変わる。 もしあなたが、同じように窒息しそうな場所にいるなら、このブログを読んでほしい。 ここは「地雷」を踏ませる罠じゃない。灯台だから。
さあ、構造の話をしよう。
【追記:母・美和子の日記より(日付不明)】
母さんの葬儀が終わってから、家の空気がおかしい。 湿気が取れない。除湿機をフル稼働させているのに、壁紙が浮いてきている気がする。 あの人たちが置いていった花のせいだろうか。強烈な百合の匂いが、ファブリーズをしても消えない。
それになにより、愛理の様子が変だ。 あの子は昔から感受性が強くて、すぐに泣いたり怒ったりする子だったけれど、最近は目が座っている。 部屋に閉じこもって、ブツブツと独り言を言っているのが聞こえる。 聞き耳を立てるつもりはなかったけれど、ドアの前を通った時、聞こえてしまった。
「アンコンシャス・バイアス……解体……再構築……」
お経みたいだった。 抑揚のない、低い声。まるで愛理じゃない誰かが、愛理の口を使って喋っているような。 あれは、母さんの口調だ。 母さんが演説の練習をする時の、あの独特の、人を不安にさせるリズム。
そして、翔太もおかしい。 昨日の夜、リビングで水を飲んでいたら、翔太が起きてきた。 寝ぼけているのか、足元がおぼつかない。 「翔太? どうしたの?」と声をかけたら、彼は虚ろな目で私の方を向いて、ニタリと笑った。 普段の翔太なら、あんな笑い方はしない。 そして、はっきりとこう言ったのだ。
「お母さん、その箱庭、狭くない?」
私は悲鳴を上げそうになった。 「箱庭」は、私の仕事道具だ。クライアント以外にはあまり詳しく話していない。翔太はただの「おもちゃ」だと思っていたはずだ。 なのに、その言い方は、まるで私の人生そのものを嘲笑うかのような響きがあった。 母さんが私を罵倒する時によく使っていた言葉。「あんたの選んだ世界は狭い」「おままごとみたいだ」という言葉と、完全に重なった。
翌朝、翔太にそのことを聞いても、「え? 俺そんなこと言った? 夢遊病かなあ」と首をかしげるだけ。 でも、私は見た。 翔太の首筋に、虫刺されのような赤い腫れがあるのを。 よく見ると、それはただの腫れじゃなかった。 女の横顔のような形をした、痣だった。
怖い。 母さんは死んだはずなのに。 この家の中に、まだ母さんがいる気がする。 屋根裏部屋から、カサカサと音がする。 誰かが、何かを引きずっているような音が。
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