第5話 初めての借金

 「ここは……。」


 「お目覚めですか」


 「……えっ。」


 目を覚まし誰かの声がしたので起き上がってみるとそこには見たことの無い女性が椅子に座りながら俺のことを見ていた。

 それに俺ベッドで寝てるじゃん!!

 えっ。どういうこと?!


 ギルドに行った所までは覚えているけど、その時は文無しの上に高価なものも持っていない。そんな俺がなぜかベッドの上でぐっすり寝られていたのだ?

 今の状況が全く理解できず考えれば考えるよく分からなくなってくる。


 「起きたので説明を開始しますね。あっ。その前に温かいご飯でも食べますか? 食べるなら持ってきますけど?」


 「あっ。お願いします。」


 女性が扉から出ていって俺1人だけ部屋に残る形になった。

 そういえばさっきの女性ギルドに着いた受付嬢と同じ制服着てたな……。ということはここはギルドで俺みたいな人々を助けるようなシステム所?!

 ほんとあの女性が女神に見えてくるよ。

 本当の女神なんて、ほんと信用もないし感謝することするほぼない。ほんとに女神なのか? と疑うほどだ。

 召喚された時の言い方的に別の女神もいるみたいだし、そっちの女神の方が良かったな。


 ピロン!!

 15件目


 悪口はよくありません!! 私はいつでもあなたを見ていますからね!!


 ……。

 はぁ。

 とため息を漏らしながら今の状況を考えているとあたたかそうな食事を持って先程の女性がやってきた。


 「お待たせしました。こちらが野菜スープと固パンでございます。食べ終わりましたらお話致しますのでごゆっくりどうぞ。」


 「あっ。ありがとうございますっ」


 テンパって少し声が高くなったが、俺は湯気が出ているスープを1口飲むと自然と目から涙がこぼれる。


 「おい……。しい……。」


 「えっ。ええ!! だっ大丈夫ですか?!」


 「大丈夫です……。」


 こっちの世界に来てすごい苦労して期待していたものと全く違い地獄のような時間を過ごしていた俺に優しくしてもらえるなんて!!

 スープの温かさと心の暖かさで涙が止まらすま涙を流しながら食事を頂いた。


 食事を食べ、落ち着いたところで女性が話しかけてくれる。


 「もう大丈夫ですか?」


 「はい、すみません。」


 「あなたはギルド内で気絶してしまったので門番にあなたのことを聞きに行きましたが、身分証を作りにやってきたと伺いました。こちらでお間違いないですか。」


 「はい」


 「そうですか。ここはギルド内にある冒険者の休養所でございます。本来は私どもが一緒にいることはございませんが今回は身分証が無いということでいさせていただきました。」


 「ありがとう。」


 「では、ここから大切なお話に移りたいと思います。では、まずここでギルドカードを作りたいと思います。銅貨2枚になります。」


 「……。」


 「?」


 「? 銅貨2枚?!」


 「はい、銅貨2枚ですけど……。」


 ギルドカードって金とんのかよ!!

 俺1文無しだぞ。女神からもらったお金でどうにか街に入ることができたが、次回は街にも入ることができない上に魔物を倒せる勇気、強さがない。

 おいおい、また詰んでないか?


 「あの……。」


 女性がなにか申し訳なさそうに声を出している。


 「もしかして、お金もっていないのですか?」


 「はい……。」


 「そっそうですか。では、借金システムを活用するしかありませんね……。今回は強制となりますのでしっかりと忘れずにお聞きください!!」


 少し強めに言ってきた女性にただ「はい」と返事するしか無かった。


 「まず、冒険者ギルドではクエストを失敗しお金が払えない方々への救済システムとして借金システムが設けられております。今回は本来と違う目的で使用しますが、問題ありません。ギルドへのお金を返すタイミングは冒険者の方々が好きな時に返せるようにしておりますが、1ヶ月事に借金の1割が増額するシステムになっておりますので早めにお返しすることを推奨しております。返金ですが、換金、クエストのクリア時に受付嬢にお申しいただければそこで返金することができます。それと注意点ですけど、1ヶ月以上受付嬢に借金のことについてお話や返金がない場合は指名手配となり奴隷落ちになりますので気をつけてください。ここまでで分からないことはありますか?」


 「いっいえ……」


 「では、今回の金額ですが、カード金額の銅貨2枚、2日間寝ていた部屋代、布団の使用料、受付嬢の付き添い、ご飯1食分等全て合わせまして大銀貨1枚となります。銅貨1000枚分と行った方がよろしいでしょうか?」


 「……。えっ?」


 「はい。では、こちらがカードになりますので無くさずにお願い致します。無くした際は銅貨3枚となりますのでご注意を。」


 「……。」


 「では、ここを出ましょうか。」


 「……。」


 「もしここでゆっくりされるのであれば借金が追加されますがどう致しますか?」


 「出ていきます!!」


 俺は慌てて布団からで受付嬢と一緒にこの部屋を出て曲がり角を何度曲がり冒険者たちが多くいる広場に戻ることができた。


 「では、お返しいただけることを心よりお待ちしております。」


 そう告げると職員が入れる方に行ってしまった……。


 異世界に来て1週間も経っていないが借金が出来ました……。

 ちらっとクエストを見たが、最低でもゴブリン退治で俺のキャパを圧倒的に超えていた。

 しかも、クエストを失敗するとまた借金が増えるという最悪のスパイラル……。とりあえず、いつかは勝てないといけないし挑戦だけしてみるかな。

 ということでまた森に帰っていったのであった。

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