今はまだ主人公になれそうにはない彼は今日も目立つ
くすのきさくら
第1話 チビデブ
今年も構内の桜並木が満開を少し超えた頃。
彼は動き出す。
◆
キュッと自動で止まる水。
軽く手に付いた水を払い。
口にくわえていたハンカチで手を拭く。
襟元を正し――。
少し跳ねている髪を手櫛で直していく――綺麗にはまとまりそうでまとまらないが。少し苦戦のち完了。
さらにその場で一回転。背中側も確認をする――ちゃんと見えるのかは謎だが。
「――よし。よし――チラシもよし。俺の――見た目もよし。服装もおかしなところなし。ブヒッ!」
ここは大学内にあるトイレの鏡の前で、何やら不審な行動をしている男性が1人。
言わなくてもわかるかと思うが彼がこの物語の中心人物。名前を――。
「ブヒッ!」
という。
……うん?今男性の声を重なってわからなかった?いや、大丈夫だろう。
ちなみにこの男性身体が大きく。
目の前の洗面所備え付けの小さな鏡では全身が写っていない(そもそも洗面所の鏡では誰が前に立っても下半身は写らないないだろうが)。
さらにこの男性。彼の場合は上半身も一部写っていない。主に両サイドが。また身長は成人男性の平均以下なので鏡上部には余裕があったりするのだが――そんなこと彼は気にしていないだろう。
という事で今鏡の前で不審な行動をしている彼ははっきり言えばチビデブである。
丸々した身体は坂道で寝転べば綺麗に転がりそうである。
ちなみにデブ。ではなく。チビ。が付くからなのかはわからないが。
なんとなくかわいらしさもある姿である。
また今は小綺麗だからか。
彼を見るとちょっと近寄ってみたくなる雰囲気がある。
というか、柔らかそうなお腹を触りたくなってしまう雰囲気が何故かある。
っと、彼の見た目に関してはこのくらいにしておこう。
そんな不審な行動をするチビデブの両サイドには紙袋も置かれている。
1つの紙袋にはA4のチラシと思われるものが大量に入っている。
もう1つの紙袋には大きめのポスター。パネルのようなものが入っている。
「ふー、ふー。よし。今年こそ。部員確保。ブヒッ!」
するとチビデブの彼が何やら胸の前に片手を当ててつぶやき出した。
そして決意を声に出した男性は紙袋持ちトイレを後にするのだった。
「……なんだ今の?」
「ああいうのは見なかったことにするのが無難だ」
「だな」
「っか、ブヒッってなんだ?」
「俺に聞くな」
「だよなー」
ちなみに大学内のトイレ。
もちろん他の学生も利用しているので、先ほどの男性の謎な行動に首をかしげていた学生がいたが。男性にはそんな周りのことは今は見えていなかった。
なんせ今から戦いに行くのだから。そんな周りの些細なことは気にしている暇などなかった。
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