神よ、なぜ君は私の隣に座っているんだ?(幼馴染は裏切った神様)
@uekitoken
第1話 別れ
健一は言葉を失った。目の前には、見知らぬ男の腕に絡まる幼馴染の姿があった。
「……早紀?」
声がかすれる。彼女の言葉が頭の中で何度も繰り返された。「好きな人ができた」という言葉。それが早紀の唇から発せられたこと自体が信じられなかった。
「じゃあね」短く言い捨てると、早紀は背筋を伸ばしたまま歩き始めた。隣の男は満足そうな笑みを浮かべていた。
「ちょっと待って!」健一の叫びは空しく響いた。早紀の足が止まることはない。
彼女の長い黒髪が風に揺れ、その先端だけが健一の方を向いていた。それが最後の別れの挨拶だったのか。
一人残された健一は、呆然と立ち尽くしていた。指先が震える。今まで考えたこともなかった現実が、突然彼を襲っていた。
なぜ?どうして?疑問符ばかりが脳裏を駆け巡る。早紀との十数年の付き合いの中で、こんな急展開を予感させるものは何もなかった。
「嘘だろ……」嘆く
それからひたすら勉強に打ち込んだ健一はアメリカにわたりAIの研究で名を馳せた。
5年が経った、健一は異国の地に立っている。アメリカの大学院に飛び級で進学し、AI研究の最前線で研究を続けていたのだ。あの日の出来事は深く心に刻まれていたが、それを忘れようと努力してきた。しかし時折、ふとした瞬間に思い出してしまうことがある。
研究室で彼の才能はすぐに認められた。独特のアプローチと発想力で次々と論文を発表し、「日本から来た天才」などと呼ばれるようになった。
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