第11章 雨に染まる午後

放課後、雨は小降りになり、灰色の空から柔らかな光が差し込む。美咲は教室の窓際に座り、雨斗の到着を待っていた。


雨斗は静かに隣に座り、美咲の手を握る。「君と一緒に見る景色は、何より特別だ」


美咲は小さく頷き、雨音に耳を澄ませる。「私も……同じ気持ちだよ、雨斗」


二人は言葉少なに、ただ雨のリズムを共有する。沈黙の中に、互いの心が確かに触れ合う感覚。雨の匂い、湿った風、揺れる木々――すべてが二人だけの時間を作り上げる。


「雨斗……」美咲が小声でつぶやく。「こうして、一緒にいられるだけで、私は幸せだよ」


雨斗は微笑み、優しく頷く。「僕もだよ、美咲。雨の日の約束は、君と僕だけのものだから」


雨の午後、池の水面に映る二人の影が揺れる。過去の孤独や試練を乗り越えた二人は、今、雨に染まる時間の中で確かな絆を感じていた。


外の雨音がやわらかく響き、二人だけの世界を包む。雨の日の特別な午後――それは、何ものにも代えがたい、二人の心の宝物となった。

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