放課後、雨は弱くなったり強くなったりを繰り返していた。美咲は教室で雨斗を待っていたが、窓の外に見覚えのある影が動くのに気づいた。

「……あれ、優奈？」美咲は小さくつぶやく。笑顔の裏に何かが隠されているような気がして、胸がざわつく。

「美咲、雨の日に君といるのって、なんだか面白そうじゃない？」優奈は不敵に笑った。雨の中で傘もささず、ずぶ濡れになりながら近づいてくる。

美咲は思わず後ずさりする。「な、何の用？」

その瞬間、雨斗が静かに立ち上がる。「君の友達だね。でも、僕に構わなくていい」

優奈は笑いを含んだ視線を雨斗に向けた。「へえ、君……不思議な子ね。雨の中でも濡れないなんて」

美咲の心臓が早鐘のように打つ。雨斗は平然としているが、その瞳には鋭い光が宿っていた。

「雨の日は、君と僕だけの時間だ」雨斗の声が低く響く。雨の音がその言葉を包み、周囲のざわめきを消す。

優奈は一瞬ひるんだように見えたが、すぐに不敵な笑みを浮かべる。「ふーん……でも、私も少し関わってみたいな」

美咲は困惑する。いつも通りの友達関係ではない、雨斗との秘密の時間に割り込まれたことが心をかき乱す。

雨斗は優奈に向き直る。「ここは君の世界じゃない。君には理解できないだろう」

優奈は少し怒ったように顔をしかめる。「何よ、それ！　ちょっと面白そうだから来ただけじゃない！」

雨斗は静かに微笑む。「それなら、見守るだけにしてくれ。君が邪魔をすると、雨の日の約束が壊れる」

美咲は雨斗の手を握る。心臓がまだざわついているが、今は彼を信じたい気持ちが勝る。

優奈は一瞬考え込むように立ち止まった。その目は、嫉妬や不満、そしてどこか興味を含んでいる。

「……分かった。今日はここまでにする」優奈は少しつぶやき、傘もささずに雨の中へ戻っていく。

雨斗は美咲に微笑む。「大丈夫。君を守るから」

美咲は少しだけ肩の力を抜き、雨斗の存在に安心する。「うん……ありがとう、雨斗」

雨の中、二人の心は小さな試練を乗り越え、少しだけ強く結ばれた。雨音は絶え間なく続き、二人だけの世界を守るかのように、静かに空を叩き続けていた。

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