The Girl of No Sound【音のない少女】リンにしか聞こえない声

Lulu

雨音が響く神社の境内。濡れた玉砂利の上、１人の少女は静かに祈っていた。

〝音を―返してください〟

それは彼女が、初めて神に求めたものだった。

この神社に来て、どれだけの月日がたったか、もう分からない。

「音が欲しい」―何度も繰り返した願いは、まだ叶わない。

けれど、神は一度も、何も答えてはくれなかった。

代わりに届くのは、空気も震わせず、ただ心の奥に届く〝声なき囁き〟。

与えられたのは少女が望む、懐かしい人の声ではなく、過ぎた命の残響だった。

誰も聞き取れぬ〝死者のささやき〟

誰にも届かない声。忘れられた痛みの記憶。

誰かの痛みが、誰にも届かぬ強い想いが、彼女の中だけでこだまする。

雨と共に降り続ける、その声だけが、彼女に与えられた新しい音だった。

それが試練か、救いか―彼女はまだ、答えを出せない。

note　挿絵込公開中

https://note.com/girlofnosound/n/nde3e27c3da4c?magazine_key=m23d0ac45e074

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