蓮の卵

胡蝶花流 道反

第1話

夢を見ている


うっすらと白く、靄が掛かっている風景


目の前に見えるのは

大きな池に浮かぶ、蓮の花


じっと眺めていると

ゆっくり、ゆっくりと花が開いていく


開いた花の中に、何故か卵が入っていた

私は蓮の花に近付き、卵をじっと見る


ウズラの卵くらいの大きさで

真っ白い綺麗な卵であった


「割っちゃいなよ」


え……誰?


「駄目だよ、割らなきゃ。後悔するよ」


誰かがそう、囁きかける


この卵を……割る?

それとも、割らない?


私は、暫く考えた後

その卵を手に取り


そして……




 いつだっただろうか、以前そのような夢を見たような気がする。


 ついさっきまで眠っていたが、その時は夢を見たのかどうかもあやふやである。

 が、何故か思い出してしまったのが、件の夢。


 目を開けると、見覚えのない天井がある。


 ああ……


「……さん、起きられましたか?」


 優しい女性の声がする。

 そうか、ここは病院なのか。


「同僚の方達がとても心配されてましたが、ご心配ない旨をお伝えすると、仕事に戻られましたよ」


 そうそう、職場で貧血か何かを起こして、ブッ倒れたのだ。

 まさか、病院にまで連れて来られているとは。


「ご主人さんにも、連絡が付いたそうで良かったですね。もうすぐ来られると思いますよ」


 え?

 なぜ、主人に!?


 さぞや、怪訝な顔をしていたのだろう。

 看護師さんが、そっと囁くようにこう告げた。


「おめでとうございます、3ヶ月ですね。今後はあまり無理なさらないように」


 笑顔で話す彼女の言っている事が、私には理解出来なかった。

 




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