本当に、やける……
蓮村 遼
愛しきあなたへ
どうして、あなたはいつも私を悩ませるのでしょうか?
あなたは完璧なのです。どこに行っても欠かせない存在だ。
どこでも、なんでもこなしてしまう。あなたにできない仕事はありません。
誰とでも仲良く場を取り持ち、プロジェクトを成功させてしまう。
昔はあなたとたくさんの仕事をすることは、私のためにならないという人もいました。
私は狂ってしまうかも思いました。あなたとの濃厚な関係を否定されたようで。
今はそんなことありませんよね?そんな
あなたの代わりなんてものは今後現れない。唯一無二の存在だ。
しかし、そんな完璧なあなたは、少々気難しい。
あなたは高貴で、とても繊細で、少しの衝突でも心が壊れてしまうことがありました。
あまりに熱烈な視線や期待を浴びると、あなたはすぐに身を固くし、縮こまってしまう。
あなたは周囲の空気に染まりやすい。ゆえに、質の悪いものの中に混じってしまった時のあなたは、耐えがたいほど醜いのです。
そして、あなたをあなたたらしめる若さを保つことは、私1人では成し得ることの出来ない、困難な道のりなのです。
たくさんのあなたが欲しい。でも、1日にあなたと共にいられる回数が決まっているのも、また事実なのです。際限というものは何事も大切だそうで……。
あなたを満足させられない、この事実も実に歯がゆい。私には、あなたを完璧に扱うなど、不可能なのでしょうか。
あぁ、あなたはどんな顔を見せてくれるでしょうか?
さぁ、こんな私に、その硬く閉ざされた殻を破り、素顔を見せてくださいますか?
今日も、私の不器用な戯れに付き合ってくださいますか?
パカッ
「あぁ!! また黄身潰れた!! 古かったか」
「だから言ったでしょ!? 卵は新しいうちに食べなさいって!目玉焼きも焼けないなんて不器用! へたくそ!! 何回目!?」
「もう1個! もう1個でできそうな気がする!!」
「食べ過ぎ!! コレステロール上がる!」
完璧なあなたは、こんな私を笑いますか?
愛しき完全栄養食よ。
本当に、やける…… 蓮村 遼 @hasutera
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